噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

2017年 03月 03日 ( 1 )


 今日は、五節句の一つ「上巳の節句」。

 五節句は、次の通り。

 ■人日(じんじつ):正月七日(七草粥の日)
 ■上巳(じょうみ/じょうし):三月三日(ひな祭り)
 ■端午(たんご):五月五日
 ■七夕(しちせき/たなばた):七月七日
 ■重陽(ちょうよう):九月九日

e0337777_10413541.jpg

荒井修著『江戸・東京 下町の歳時記』

 2010年12月に集英社新書から発行された『江戸・東京 下町の歳時記』の著者荒井修さんは、私より少し年長の“団塊の世代”で、浅草にある舞扇の老舗、荒井文扇堂の四代目社長さん。
 
 「はじめに」から、少し引用。
 この本は、あたしの生まれ育った下町と、江戸時代からの歳時記を加えて綴ったものです。もちろん下町とは、江戸城から江戸湾に向かった日本橋あたりから人形町方面をさした言葉で、江戸時代でいうところの浅草は下町エリアではありません。けれども庶民の町で江戸一番の盛り場ですから、下町文化という点では、この地のあれやこれを下町の歳時記とすることには間違いはないと思います。
 それから、歳時記を語る上で難しのは旧暦と新暦。つまり、今と季節が違うときがある。年賀状に「初春」と書くように、昔の暦では一月、二月、三月が「春」で、四月、五月、六月が「夏」、七月、八月、九月が「秋」で、十月、十一月、十二月が「冬」となる。たとえば八月は秋の真ん中ですから、八月の月は中秋の名月となり、いわれてみればごもっとも、となるわけですが、突然「七月は秋」なんて言われたら、面食らったりするでしょう。

 「七夕」は俳句で秋の季語、と書いた拙ブログの記事には、その時期に結構アクセスがある。
2010年7月7日のブログ

 さて、「上巳の節句」について、この本から引用する。

 三月三日は「上巳の節句」。通称「桃の節句」といいます。実は中国の方では、この日に人の形に切った紙、「形代(かたしろ)」っていうんだけど、これで身体を拭うんです。それを川に流して、けがれを祓う。流し雛の原点でもあります。それが日本に伝わって「雛遊び」と結びつき、女の子の節句になるんですね。
 だけど、女の子の節句といっても、室町時代までは普通の町場の人間はやっていないんだね。公家と武家だけ。江戸に入って幕府が推奨して、一般の人もやるようになるんです。
 この日にいちばん繁盛するのは、人形屋に貝屋に、蕎麦屋と酒屋。今でも神田猿楽町に、豊島屋っていう酒屋がありますよ。江戸時代にそこの白酒がいちばんうまいっていわれて、たいへん人気があったんだ。大田蜀山人の『千とせの門』によれば、二月の十八から十九日の朝までに、千四百樽売ったっていうんだね。千四百樽ということは、一升瓶で五万六千本だ。
 これはね、豊島屋の初代十右衛門の夢枕にお雛様が立ったというんです。そのお雛様が、「こうやってつくるとおいしい白酒ができる」って言ったんだって。それでその通りにつくって雛祭り用に販売したら、江戸中の評判になった。江戸中の人がそこに行列して、その日は鳶がガードマンとして手伝っている絵もありますよ。鳶をガードマンとして雇わなきゃならないって、そりゃすごいよね。

 「桃の節句」も、江戸時代に、今につながる文化や風習が醸成された一つの例ということか。
 しかし、新暦三月三日では、まだ桃には早い。
 荒井さんが指摘するように、歳時記は旧暦を元に考えないと、時期のズレがどうしても生じてしまうなぁ。

 ちなみに旧暦三月三日は、今月の三十日。

 白酒で有名な豊島屋は、今も営業している。

 豊島屋本店ブログで、今年も伝統の白酒が出来たことが案内されている。
豊島屋本店ブログの該当記事

 この店、落語『業平文治』にも登場する。
 あの噺について書いた記事に、豊島屋についても少し紹介しているので、ご興味のある方はご覧のほどを。
2015年7月9日のブログ


 引用した文で疑問に思われるかもしれないのが、なぜ貝屋が繁盛するのか、ということだろう。
 実は、こういうこと。
 そのころはちょうど潮干狩りが始まる時季でもありますから、新鮮なハマグリが手に入る。だから、お雛様のところに、ハマグリのお吸い物をあげたりしました。

 これまた、旧暦でなければ、実感できないねぇ。

 なぜ、蕎麦屋が繁盛するか、も疑問だねぇ。
 その答えになる部分も引用しよう。

 それから、お雛様はなるべく早く片づけないといけない。そうじゃないと、縁遠くなるといわれている。片づける前にはお蕎麦をあげて、それから箱におさめて片づけないとだめなんですよ。「お蕎麦をあげてから片づけなきゃ嫁入りが遅くなりますよ」って親が言う。験かつぎみたいなもんだろうね。とにかく、最後はお蕎麦なの。

 昨今、女性が結婚年齢が高くなってきたのは、もしかすると、雛人形を片づけるのが遅かったからか、あるいは、片づける前にお蕎麦をあげなかったからか・・・なんてことはないだろうね。

 この問題を突き詰めていくと、政治がかってくるので、今回はこれ位で。


[PR]
by kogotokoubei | 2017-03-03 12:36 | 年中行事 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛