噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

2017年 01月 05日 ( 1 )

 昨夜、NHK総合の「超入門!落語THE MOVIE」を観た。

 この番組がレギュラー化されることを書いた記事は、驚くほどアクセスが多い。
2016年9月30日のブログ

 こんなことを書いていた。
 最近落語を楽しみ始めた若い方が知識を習得するためにも有効だろうし、今以上に落語愛好家のすそ野が広がることも期待できるので、レギュラー化は結構なことだと思う。

 できることなら、視聴率を追いかけず、人気者ではなくてもいいので、しっかりアテブリを含めた演技のできる芸人さんを起用してもらいたい。
 なぜなら、主役は「落語」のネタそのものであり、出演者ではないはずだから。

 また、ネタの中には、今の社会では使いにくい言葉や風俗もあるが、できるだけ忠実に再現して欲しい。

 学校じゃ教えない、実にためになる内容が落語には満載であることを、ぜひ伝えて欲しいものだ。

 当初よりも、いわゆるお笑い芸人さんばかりではなく、演技のできる(?)役者さんを起用する傾向が強くなったように思うし、演じる噺家も、まさに現役バリバリの実力者の名が並んでいる。
 
 そういう面では、私の期待は裏切られることはなかったとも言えるのだが・・・・・・。


 レギュラー放送が始まってから、今まで記事を書くことはなかった。

 せっかく案内をしていたのだから感想でも書くか、と思った時もあったが、どうしても小言になりそうで、気が進まなかった・・・・・・。

 しかし、小言幸兵衛なのだから、小言を書くのは当たり前か、と思い直し書こうと思う。

 たとえば、昨夜の『初天神』について、NHKサイトの番組のページには次のような説明がある。
NHKサイトの番組ページ

「初天神」…息子の金坊(鈴木福)を連れて初天神にお参りに行くことになった父親(松尾諭)。出店を見ても「あれ買ってこれ買って」と言わないと約束させたのに、金坊のアノ手コノ手のおねだりに根負けして…

 このネタについては、ずいぶん前になるが記事を書いている。
2009年1月24日のブログ

 その記事で紹介したように、原話は安永二年刊『聞上手』所収の「凧」なのだが、寄席で凧の場面まで演じられることは、稀有だ。

 だいたい、団子の部分まで。

 また、前座噺の範疇に入れられるが、決して生易しい噺ではない。

 浜美雪著『師匠噺』の「柳家さん喬・喬太郎」の章に、『初天神』修行中の喬太郎の回想がある。
浜美雪著『師匠噺』
「僕も中途半端な覚え方をしていたんですけど、『もうわかった。全然ダメだ』って途中で止められてこう言われたんです。
『お前の「初天神」には雑踏が出てない』って」
 劇画の名台詞を思わせる印象的な言葉だ。
「でもそんなことを前座の頃言われてもね(笑)。でも、あとの弟弟子はみんな『初天神』をどんどん上げてもらってるんですからね。
 ですから普段の生活については厳しいと思ったことはないですけど、落語の稽古に関しては確かに『何で俺だけが』っていうのはあったかもしれません(笑)」

 その厳しい師匠さん喬にしても、3日にNHK総合で放送された恒例の鈴本初席で、団子のアンコと蜜を言い間違えていたけどね^^

 いずれにしても、団子の蜜のように甘く見てはいけない噺であり、凧まで通しで演じられることは珍しいのは事実。
 昨夜の一之輔は、しっかり凧まで“通し”の高座で、その出来栄えも良く、なかなかの好高座だった。

 だから、見終えてから、「高座だけを楽しませてくれればいいのに」と強く思ったのである。

 部分的に一之輔の高座の映像に戻るのだが、ハナからサゲまで高座だけを楽しみたい、と私などは思う。

 もちろん、この番組があくまでアテブリを主体として成り立つことは百も承知ではあるが・・・・・・。

 NHKのサイトには、この番組の意図らしきものについて、次のように記されている。
ふだん、想像で楽しむ落語の演目を、落語家の語るはなしに合わせてあえて映像化。完璧なアテブリ芝居をかぶせてみたら…初心者でも楽しめる新たなエンタメが誕生しました!

 「想像で楽しむ」落語を、「あえて」映像化しているのだ。
 演ずるタレントさんや役者さんも、大変だろうなぁ。
 しかし、問題は、そのアテブリがどこまで「完璧」にできるかどうか。
 というか、「完璧」は難しいから、どこまで落語本来の楽しさを伝える映像化ができるか、が重要だろう。
 『初天神』の親子、一之輔のスピーディな語り口に合わせ、なかなか頑張っていたと思う。

 レギュラー放送化についてNHKのサイトでは次のように紹介していた。

とかく「長い」「単調」「難しい」と言われがちな落語に、完璧な「アテブリ芝居」をかぶせてみたら…初心者でも「面白くわかりやすい新たなエンタメ」が誕生!名付けて「超入門!落語THE MOVIE」。
 噺家の語りに合わせて再現役者の口が動く、いわゆる「リップシンク」に徹底的にこだわり、あたかも落語の登場人物たちが実際に話しているかのような臨場感を演出。見ている人をリアルな落語の世界へと導きます。


 「長い」「単調」「難しい」という感想は、たぶんにそのネタや演じる噺家さんに依存するが、たしかに、そういうイメージは初心者の方に強いかもしれない。
 というか、いまだに「笑点」の大喜利を「落語」と思っている方もいらっしゃる。

 だから、初心者の方に落語の楽しさを味わってもらう方法の一つとして、この番組は存在意義はあるのだろう。

 ちなみに、レギュラー化以降の出演者とネタは次の通り。

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第1回 10月19日
『かぼちゃ屋』 春風亭一之輔
『お見立て』  古今亭菊之丞

第2回 10月26日
『粗忽長屋』 桃月庵白酒
『目黒のさんま』 春風亭一朝

第3回 11月2日
『転失気』  柳家三三
『粗忽の釘』 林家たい平

第4回 11月9日
『時そば』 春風亭一之輔
『三年目』 三遊亭兼好

第5回 11月30日
『猫の皿』 柳家三三
『三方一両損』 春風亭一朝

第6回 12月7日
『長短』 柳亭市馬
『はてなの茶碗』 桂雀々

第7回 1月4日
『初天神』 春風亭一之輔
『饅頭怖い』 古今亭菊志ん
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 そして、来週11日は、三三の『釜泥』と兼好『二番煎じ』と案内されている。

 
 一之輔、三三をはじめ、第一回からの顔ぶれは、まさにバリバリの現役中堅の噺家さん達。

 くどいようだが、高座のみで、「想像」する楽しさを味わいたい演者とネタが並ぶ。


 そろそろ、せっかくの企画に水を差すような小言はここまでにして、私の提案。

 この番組で、初心者の方がアテブリを楽しんで落語への興味を抱いたのなら、「日本の話芸」でもいいし違う新番組でも結構、ぜひ、元となった高座の映像のみを放送してはどうだろうか。

 落語番組の素材を、主催する東京落語会以外に広げる好機ではなかろうか。

 「あのネタ、落語だけ見てみたいなぁ」という願望は、きっとあるはず。

 NHKとしても、高座はアテブリのためにも通しで収録しているのだから、コンテンツとして高座のみを放送することは、一度で二度美味しいわけで、悪い話ではないはず。

 ぜひ、高座->アテブリ->高座、という先祖帰りとも言える企画、NHKの担当の方にご検討いただきたいものだ。

 かつて放送されていた、この番組に出演しているような、現役中堅どころの噺家さんを中心とする民放の落語番組が、ことごとく終わっている。
 視聴率が低かったせいで、スポンサーが降りたのかと察する。
 そこはNHK。ぜひ、同時代で観て楽しく、十年後には貴重なライブラリーとなるであろう高座の放送、実現して欲しい。

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by kogotokoubei | 2017-01-05 21:45 | テレビの落語 | Comments(8)

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by 小言幸兵衛