噺の話

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2015年 11月 26日 ( 1 )

 雨の中、久しぶりの横浜にぎわい座、それも、地下秘密倶楽部(?)のげシャーレだ。

 にぎわい座は、1月9日の白酒ばなし以来。今年最初の落語会である連雀亭初席の後に行ってから、なぜか縁がなかったなぁ。
 のげシャーレとなると、もっとご無沙汰。
 2013年4月30日の、「ハマのすけえん」以来となる。
 二年半前、前の年に一人真打昇進の後でも、まだ一之輔はこの場で独演会を行っていたんだなぁ。

 一之輔に限らず、白酒、兼好、文菊などが、この地下の独演会を経て成長していったことを、つい数年前のことなのだが、なんとも懐かしく感じる。

 今回は、小痴楽の名があったことに加え、今年のNHKで優勝した佐ん吉が出演することが、久しぶりに行く大きな動機づけとなった。佐ん吉、生では初。

 最大141席という会場は、八分ほどの入りだったろうか。

 東西三人づつ六人も出演する会、次のような順番とネタだった。
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全員登場での挨拶
春風亭昇也 『看板のピン』 
桂二乗   『短命』
三遊亭橘也 『もぐら泥』
桂佐ん吉   『佐野山』
(仲入り)
笑福亭鉄瓶 『三年目』
柳亭小痴楽 『佐々木政談』
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挨拶 (6分 *18:59~)
 この会が昨年の博多天神落語まつりでの出会いから始まり、その後、天満天神繁昌亭で開催したことなどを、鉄瓶が主に説明。
 偶然、上のホールでは鶴瓶と銀瓶の親子会を開催しており、挨拶に行くと打上げの足しにと小遣いをもらったとのこと。鉄瓶いわく「これ、必ず話すんやで」と師匠から言われたらしい(^^)
 その金額は、佐ん吉がまくらでバラすのだが、内緒にしておこう。私個人としては、鶴瓶なら当然、と思われる金額だったが、少ないとは言えない額でもある。
 この6人の中から今年のNHK(新人落語大賞本選)に二人も出場し、今や優勝した佐ん吉はスター気取り、とみんなでいじる。
 最後には、出演順も紹介された。

春風亭昇也『看板のピン』 (15分)
 神田連雀初席で聴いて以来。あの時には好楽に稽古してもらったという『庭蟹』を楽しく聴かせてくれたことを思い出す。後で夏丸が漫才上がりと言っていたが、その下地が良い方に生かされていたと思っていたが、この高座は、やや流れが悪かった。よく笑ってくれるお客さんに助けられていたが、途中での言いよどみでリズムが途切れ、この人の持ち味の軽妙なノリの良さが十分に発揮されたとは言えない。
 笑いのツボを押さえるセンスがあると思うので、今後も気にかけたい人ではある。

桂二乗『短命』 (21分)
 昨年5月、深川における師匠米二の会以来。ネタは同じ。きっと、十八番にしたいのだろう。
 まくらで大阪と東京のお客さんの違いを説明していたが、大阪の客の八割は、自分の方が高座の噺家よりおもしろいと思っている、というのが可笑しい。。
 昨年と同じ演目なので比較しやすいのだが、以前は上方の若手にしては大人しいと感じていたが、良い方に変わっていたように思う。
 “お前さん”に、十一屋の若旦那が続けて亡くなる原因を苦労しながら説明する甚兵衛さんが良かった。上方では、別嬪の十一屋の娘と結婚して半年して具合が悪くなり、夫婦揃って須磨に出養生に行く、という設定だが、甚兵衛さんが「出養生、毒も一緒に連れて行き」という川柳を口にする際の、なんとも言えない表情が楽しい。

三遊亭橘也『もぐら泥』 (18分)
 初である。円橘の弟子。挨拶では、鉄瓶から「しゃべるゴリラ」といじられていた。なかなか、しっかりした体格で、いかつい見栄え。兄弟子の萬橘(前名、きつつき)とは好対照。
 鶴瓶と銀瓶の楽屋に挨拶に行ったら、銀瓶に「あぁ、下の人たち」と言われた、とのこと。たしかに、上のホールからは下には違いない(^^)
 昼間は師匠について大月の落語会に行っていたとのことで、当地の出身者である小遊三にちなみ、泥棒ネタにしたとのこと。
 泥棒が腕をねじこんだところで、「お客さんが近いなぁ」と口走ったために、せっかく噺が始まったのに、気がそがれた。ああいう一言は、集中できていない証拠、と私は思う。
 泥棒に気付いた夫を泥棒の仲間と勘違いした女房が、「私を縛る気かい?」と聞く筋書きは初めてのように思うが、師匠譲りなのだろうか。
 泥棒に相棒がいて、それが野良犬のシロ、というのも聞いたことがないなぁ。
 この噺は、何と言っても喜多八が群を抜いているが、それは、腕が抜けなくなってからの泥棒の科白や仕草に、彼の心身の苦悩が滲み出されるからだろう。
 比較しては可愛そうだが、そういった点では、上滑りしていた印象。
 筋書きを進めることだけではなく、やはり、登場人物になりきっているかどうかが大事なのだ。

桂佐ん吉『佐野山』 (26分)
 円橘がまくらで、佐ん吉には「スター」と声をかけてくれと言っていたので、半数位の人の「スター」の声に迎えられて登場。
 NHKのことにふれ、本来落語は採点することなど出来ないもので、たとえば米朝と談志のどちらが名人かと聞いても人それぞれでしょう、と語る。彼の思いは、よく分かる。
 阪神の新監督の話題を、大阪ほど受けない中でも頑張って語った後、相撲のことへ。
 逸ノ城の目つきが誰かに似ていると思っていたら、ようやく分かった、かみさんだった、には笑った。
 上方の噺家さんでこのネタは初めて聴く。
 設定が東京とは違っており、佐野山に情けをかけ負けてやるのは、谷風ではなく、横綱小野川。小野川が近江出身ということからだろう。
 横綱小野川が千秋楽で十両の佐野山と対戦すると聞いた堂島衆が、これは女をめぐる遺恨試合だろう、などと言うやりとりも楽しかったし、相撲の場面でも熱演。流石、NHKで優勝するだけはあるという貫禄の高座だった。
 東京でこの噺は、『谷風の情け相撲』あるいは『谷風の人情相撲』の別名があり、講談にもなっている噺。だから、小野川という設定には、私がそうだったのだが、関東の落語愛好家は、やや納得しずらい面もあるかもしれない。
 本音としては、NHKで見事に縮めた『愛宕山』の長講版を聴きたかったのだが、そうはいかなかった。

笑福亭鉄瓶『三年目』 (29分)
 初である。佐ん吉とは、同期(平成13年入門)だが、年齢は鉄瓶が四つ上とのこと。後で調べたら、昭和53年生まれと昭和58年生まれなので、五つ違いだなぁ。
 佐ん吉は「まっすぐな男」で、と持ち上げておいて、鶴瓶が打上げ用にとくれた小遣いの額をバラしたことをいじったりした後、蕎麦屋の落語会での逸話。浪曲好きの主人から『竹の水仙』をリクエストされたのはいいが、その主人が・・・というまくらが可笑しくはあったが、10分を超えるまくらは長すぎた。
 本編は、これが師匠の型のようなのだが、前半は東京版『三年目』と同様に、亡くなる寸前の妻と夫の会話をしんみりと聴かせ、後半は上方の『茶漬幽霊』に則り、没後三年たって、昼間茶漬けを食べている時に、女房の幽霊が出てくる、という筋書き。
 見た目とは違う繊細さを感じた前半部分に、この人の持ち味があるのかもしれないが、後半とのメリハリに欠けたように思う。
 そのうち、上方爆笑落語も聴きたいと思わせた。印象は、悪くない。

柳亭小痴楽『佐々木政談』 (32分 *~21:35)
 繁昌亭での会の時の逸話などを短くふって本編へ。
 以前の記事で、さがみはら若手落語家選手権にこのネタで挑んだらしいが、『大工調べ』なら優勝できたのではないか、と書いたことがある。
 前言を訂正し、お詫びしなければならない。それだけ、実に素晴らしい高座だった。
 この噺で春風亭正太郎に負けたのなら、それは、その日は正太郎の日だった、としか言えないだろう。もちろん、高座を聴いていないので、どんな出来栄えだったかは分からないが、この高座に近かったのなら、この人の持ち味は十分に発揮できていたはず。
 前半の子供たちのお奉行ごっこや、お白洲から呼び出しがあってからの町役や四郎吉の父綱五郎たちの会話も、楽しく聴かせる。
 佐々木信濃守家中の三蔵が綱五郎の家にやって来た際、綱五郎が戸を開けて名を聴いてから、また戸を閉めようとする場面なども可笑しく、こういった細かな仕草などに、この人の技量の高さを感じさせる。
 そして、この噺の聴かせどころは、何と言っても、お白洲での佐々木信濃護守と四郎吉とのやりとり。
 信濃守が繰り出す難問に、頓智頓才で答える四郎吉が、なんとも結構。

 信濃守「夜空の星の数はいくつあるか?」
 四郎吉「お奉行様は、お白洲の砂利の数はいくつあるか分かりますか?
     手に取れるものでさえ数が分からないのに、手が届かない星の
     数など分かるわけがありません」
 
  これだから、落語は油断して聴いていてはいけない、という名言(^^)

 衝立の仙人の件は割愛したが、十分にこの噺の楽しさを味わわせてくれた。
 四郎吉は、可愛さと小憎らしさとが程よくないまぜになっている。これは、本人の個性でもあるかもしれないが、登場人物になりきっている、という印象だ。

 ちなみに、興津要さんの『古典落語』(続々)によると元ネタの上方落語『佐々木裁き』のサゲは次のようになっている。

 「これ、四郎吉、そちは、きょうより、余の家来じぞ」
 「いやあ、きょうからさむらいやなあ・・・・・・それで、名大将の名前ができました」
 「名大将の名前とは?」
 「あんたが佐々木さんで、おとっちゃんが高田屋綱五郎、
  わたしが四郎吉でしゃろ?あわせて佐々木四郎高綱や」
 「ふーん、佐々木四郎高綱・・・・・・とは、余が先祖じゃぞ・・・・・・
  四郎吉、そのほうも源家(げんけ)か?」
 「いいえ、わたしは、平家(平気)でおます」

 このサゲは今では通じにくいので、サゲなしで演じられることの多い噺だが、小痴楽は、「小児は白き糸のごとし」の地口で、綱五郎が「勝利は、四郎吉、意図のごとし」と頭を指してサゲた。このサゲは初めて。
 もしかすると、最近は、父親五代目柳亭痴楽の十八番を意識して演じているようなので、父親が演じていたサゲなのかもしれないが、不勉強で分からない。
 サゲはあってもなくても良いネタだと思う。

 二ツ目の域をはるかに超える見事な高座、今年のマイベスト十席候補とまではいかないが、何らかの表彰に値する高座だったので、目印として赤い色を付けておこう。


 終演後、雨の中、外の喫煙場所で一服。時計を見ると、もう十時近いのだ。
 生きのいい東西の若手の会は、なかなか充実していた。ぜひ続けてほしいと思う。
 アンケートにも書いたが、終演予定が21:00となっていたが、19:00開演で、六人である。それは無理とは思っていたが、せめて、十五分でも早めて始めてはどうかと思う。
 
 仲間から佐ん吉というチャンピオン(スターか?!)が誕生した。
 そして、小痴楽は、着実に成長しているし、他のメンバーも、将来性を感じる。

 連雀亭もご無沙汰だし、若手の落語会にもっと行かなきゃなぁと思いながら、帰路についた。

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by kogotokoubei | 2015-11-26 12:59 | 落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛