噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

2015年 06月 10日 ( 1 )

毎日新聞の該当記事
上方落語協会:繁昌亭の料金、初の値上げへ…大阪
毎日新聞 2015年06月09日 19時42分

 上方落語協会(桂文枝会長)は9日、天満天神繁昌亭(大阪市北区)の昼席の一般料金について、9月16日から現行の2500円(前売り2000円)を3000円(同2500円)に値上げすると発表した。2006年の開業以来、値上げは初めて。

 協会によると、消費増税や物価の上昇で繁昌亭の維持費などがかさんだほか、協会会館(同区)の運営費も上昇。協会の14年度決算が赤字になったため、値上げを決断したという。65歳以上は2000円を2500円に、身体障害者と高校・大学生は1800円を2000円に値上げする。小中学生の1500円は据え置く。繁昌亭が主催する一部の夜席も対象となる。

 文枝会長は記者会見で、「何とか値上げしないですむよう、スタッフを減らしたりもしたが弊害も出てきたので決断した」と理解を求めた。桂春之輔副会長は「値上げした分、芸の力を増して、よりお客さんに喜んでもらう努力をしたい」と話した。【山田夢留】

 昨年4月、東京で池袋演芸場以外の定席が値上げした際、繁昌亭は木戸銭を据え置いていた。
 昨年の値上げについては、記事を書いた。
2014年4月28日のブログ

 昨年の木戸銭の値上げ・据え置きの状況を再確認。
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         現行料金(円)  4月の消費税率引き上げ後
浅草演芸ホール(5月21日より)
         大人  2500    2,800(300円アップ)
         学生  2000    2,300(300円アップ)
         小人  1100    1,500(400円アップ)

鈴本演芸場
         大人 2800     据え置き
         学生 2400     2,500(100円アップ)
         小人 1500     据え置き
         シニア割引廃止
末広亭
         大人  2800    3,000(200円アップ)
         シニア         2,700
     学生・友の会 2200    2,500(300円アップ)
         小人  1800    2,200(400円アップ)
       【夜の割引料金】 ※特別興行は除く
        18:00~  一般¥2,500 学生¥2,200 小学生¥1,500
        19:00~  一人¥1,500 

池袋演芸場    すべて据え置き     
         大人 2500 
         学生 2000
         小人 1500
(下席の昼の部は大人2,000円。特別興行は別)

国立演芸場の落語・演芸の定席
         大人  2000    2,100(100円アップ)
         学生  1400    1,500(100円アップ)
         シニア 1300     据え置き

横浜にぎわい座
             3000    3,080(80円アップ)

天満天神繁昌亭  すべて据え置き
         大人 2500
         学生 1800
         小人 1500

(主に当日の自由席。特別公演や独演会は除く。
年齢区分は各寄席によって異なる。税込み)
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 この状況について書いた次の日、江戸時代の木戸銭を試算する記事を書いた。
2014年4月29日のブログ

 重複するが、江戸時代の木戸銭の試算について、ふたたび

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興津要著『落語-笑いの年輪』(講談社学術文庫)

 興津要さんの『落語-笑いの年輪』(初版は昭和43年に角川から単行本、平成16年に講談社学術文庫で再版)から、江戸時代の木戸銭について書かれた部分を引用。(太字は管理人)
 文化元年(1804)ごろには、江戸に三十三軒ほどの定席ができ、文化十二年(1815)に七十五軒、文政八年(1825)に百三十軒になり出演者もふえるにつれて、前座・二つ目・三つ目・四つ目・中入り前・中入り後(くいつき)・膝がわり・真打の階級もでき、それが、前座・二つ目・中入り前・中入り後・膝がわり・真打となり、それがはるかのちの昭和になると、前座・二つ目・真打の三階級に簡略化されるのだが、とにかく隆盛の一途をたどった寄席演芸にとって、天保の改革はまことに大きな障害だった。しかし、水野忠邦罷免後の弘化元年(1844)に制限が撤廃されると六十六軒に回復し、安政(1854-59)年間三百九十二軒になり、明治(1868-1911)期には八十軒前後になったが、だいたい一町に一個所はあり、収容人員も百人ぐらいで、木戸銭もふつうは三十六文ぐらい(安政に四十八文にあがる)で、下足札が四文、中入りに十五、六文のくじを前座が売りにくるぐらいで値段のはらない寄席は、まさに大衆娯楽の殿堂であり、多くの優秀な芸人もうまれていた。

 さて、この木戸銭三十六文~四十八文が、現在の貨幣価値でいくらぐらいか、というと。

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中込重明著「落語で読み解く『お江戸』の事情」


 若くして亡くなったことが惜しまれる中込重明さんの本の「時そば」の章から引用。
 十六文の価値を知るために、江戸の庶民の収入をのぞいてみよう。文政年間(1818-1829)に当時の庶民の暮らしについて記した『文政年間漫録』という本を見ると、当時の大工の年間の家計がどうなっていたのかおほよそ判断できる。これをもとに月々の収入を割り出してみると、およそ次の通りになる。
 まず収入だが、一日の手間賃は飯料込みで銀五匁四分、仮に一月に二十五日働いたとすると、135匁(銭に換算すると約9,000文)になる。一方支出は、まず居住費の店賃(家賃)が、10匁。食費は夫婦に子供が一人として約30匁(約2,000文)、酒、味噌、醤油、薪炭代金が約58匁、道具・家具代、衣装代、交際費がそれぞれだいたい10匁ずつで、しめて128匁の支出となる。収入から支出を差し引くと、ほとんど残らなかった。付け加えておくと、大工は当時の職人の中で手間賃が高い職種である。
 以上をふまえて計算すると、この一家の食費では月に125杯のそばが食べられる勘定だ。十六文は、月収の約562の一。現代のお金に置き換えるとするなら、仮に月収を30万円とした場合、562分の一は約533円となる。なるほど、そんなものだったのかもしれない。この通り、そば一杯十六文というのはそれほど高い値段ではなく、その日暮らしの職人や小商いの者たちでも、手が出せる範囲内だった。
 この計算でいくと、一文は約33円、最初に登場した職人風の男は、たったこれだけの金額をごまかすために、あれだけの口上を述べたことになる。

 中込さんの本は、当時の大工の生活について貴重な情報を紹介してくれる。

 江戸時代の金-銀-銭の価値は、次のような構造になっている。

 金一両=銀六十匁(もんめ)=銭四貫

 銀五十匁で金一両の時期もあったようだが、六十匁で計算する。中込さんは、大工の月の稼ぎ135匁を9,000文としているが、135÷60x4,000で算出される数字だ。
 
 中込さんは、大工の月の稼ぎ銀135匁、銭9,000文を30万円に想定している。一両が4,000文なので、一両は、300,000÷9,000x4,000で、133,333円になる。以前の記事で一両を60,000円で計算したことはあるが、物価が上がっていた時期の一両は120,000~130,000に設定すべきだろう。

 端数が出ないように、一両を120,000円としよう。一文は30円になるので、蕎麦の十六文が480円。現在の立食い蕎麦屋さんの天玉蕎麦(好きなのだ^^)の値段に近付いたように思う。

 寄席の木戸銭は、安政以前の三十六文で1,080円、安政以降の四十八文で1,440円。それぞれに下足札四文、中入りに引くくじ代十六文の計二十文分の600円を足すことにして、安政以前1,680円、安政以降2,040円になる。
 安政時代の約2,000円というのは、結構納得できる価ではないだろうか。大工さんが月給約30万で、この木戸銭なら月に何度か寄席に行けるだろう。

 江戸時代の芝居小屋の木戸銭は時期や小屋によって違っているが、次のような数字が残っている。マイナビニュースの該当記事
 この記事では一両を80,000円、一文を20円として計算しているが、私は一両120,000円、一文30円で換算してみる。

 立ち見        16文 →     480円
 土間席(下席)  100文 →    3,000円
 土間席(上席)  132文 →    3,960円
 桟敷席      25匁 →   約50,000円

 立ち見があるから、『四段目』の丁稚定吉は芝居を見ることができたのだ。とても土間の席で見るわけにはいかなかった。『なめる』で八公が芝居小屋で会った桟敷にいたお嬢様がお金持ちなのは、この木戸銭を見ても分かる。

 時代も環境も違うので単純比較はできないが、東京の定席寄席の木戸銭の価値は、江戸時代の庶民のハレの日の楽しみである芝居の土間席(下席)の木戸銭にほぼ等しいと言えるだろう。ホール落語会の木戸銭は、同じ芝居の土間席でも上席。最近は5,000円、6,000円の木戸銭をとる落語会もある。そのうち万の大台に乗る落語会が登場するかもしれないなぁ。歌舞伎にどんどん近付いている。

 私は、安政時代の木戸銭に下足札と中入りのくじの合計約2,000円が希望だが、高くても約2,500円が寄席の上限のような感覚だ。繁昌亭、前売りなら2,500円で、なんとか許容範囲。
 
 3,000円は、落語会の木戸銭の感覚。しかし、「寄席でも3,000円」ということで、落語会の木戸銭も、それ以上の高値が当たり前になりつつあるなぁ。

 もちろん、寄席で働く人の処遇も大事だが、なんとか、これ以上高い木戸銭にならないことを願うばかりだ。


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by kogotokoubei | 2015-06-10 22:12 | 木戸銭 | Comments(2)

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by 小言幸兵衛