噺の話

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2013年 06月 29日 ( 1 )

なんとか行けないか、と思っていた小三治が主任の末広亭の下席夜の部は行けなかった。まだ二日あるが本来は行かない土曜の夜の落語会を二週続けて行くほどの強い思いはないし、日曜は落語会や寄席に行かない。

 しかし、末広亭か池袋の昼の部に行こうかと思って落語協会の代演情報を見て、目を疑った。
 
 歌武蔵が主任の池袋の昼の部、仲入り前のさん喬の代演に「柳家小のぶ」の名・・・・・・。

 「えっ、まさか?」と思いながら堀井憲一郎の『青い空、白い雲、しゅーっという落語』を確認したら、同書で“幻の落語家”として、その独演会の逸話などを紹介している、寄席に出ないはずの噺家さんの名ではないか!
堀井憲一郎著『青い空、白い雲、しゅーっという落語』

 少しググってみたら、今月上席の池袋にも出演していたようだ。“幻”の落語家に何か心境の変化があったのか・・・・・・。
 
 一度聞いてみたかった人。

 他の代演は白酒に菊之丞。最近聴いていない菊之丞の名がうれしい。正蔵の代演がしん平、加えて、今秋真打昇進の天どんの名も。ひな太郎の名もある。これは行かねばなるまい。

 犬の散歩の後、一路池袋へ向かった。ちょうど開場の一時半頃に到着。入りは七分位だったが、最終的には八分程度になっていた。

 演者とネタ、寸評と所要時間を備忘録として書く。印象に残った高座にを付けた。

三遊亭歌(うた)りん『子ほめ』 (15分、*13:45~)
 開口一番は、歌之介の三番目の弟子。初である。今年の入門とは思えないなかなかしっかりした高座。落語家らしい見た目(?)も徳していると思うし、その後の高座返しの仕種なども含め、一時代前の前座さんかと思わせる人。今後に期待したい。

三遊亭天どん『釜泥』 (14分)
 久し振りだ。九月に真打に昇進する、と言うと会場から私も含め拍手。天どんの名のままらしいが、「昇進時に別な名を襲名するのは、一門に組織力があるか、師匠に政治力がないと無理。うちの師匠円丈はどちらもない」と言っていたが、そんなことはなかろう^^
 この人は古典落語でも、独自の工夫をしている。石川五右衛門の一門(?)の泥棒が、五右衛門が最後を迎えた“釜”を世の中からなくせば供養になるとばかりに、“釜”盗みの犯行を続けている。豆腐屋の主が、「盗まれちゃあ、仕事ができねぇ」と、釜の中で一晩過ごすことになるのだが、妄想で芸者を釜に呼び込むという楽しい筋書きがあった。私は、結構こういう創作、好きだ。「お釜だけに痔に悪い」のクスグリは、まだお客さんに小学三年生の女の子が来る前だったはず。

三遊亭歌も女『平林』 (15分)
初である。“かもめ”と読む。前座名は、多ぼう。二ツ目になったばかりの円歌門下の女流噺家さん。客の時代、そして前座時代の“しくじり”の逸話のマクラから本編へ。
 マクラでの何とも言えないゆったり感のある語りが、ネタになると結構しっかりしてきた。この人、意外に今後は化けるかもしれない。

古今亭菊之丞『幇間腹』 (17分)
 結論から書くと、この噺はこの人、という高座。何度か聴いているが、幇間ネタは、現役では相当秀でていると思う。若旦那が酔狂で針を始めた。思い立って本を読んだのが二日前。一日前に壁で練習し、その後、ネコで練習しようとしたが逃げられ、人間の試験台に選ばれたのが、幇間の一八。
 「壁、ネコ、私!?」と言う一八が楽しい。このキーワードは後でまた出てくるが、そこでも客席は爆笑。一八が針の試験台になるのを覚悟したところで、「道理で夢見が悪かった。親鸞聖人が、○○新聞配ってた」というネタでも笑いが増す。置屋の女将も定評のある女役で、程よい艶があって良い。
 この噺をよくかける喬太郎は、正直なところ、あの腹が目立って、主役(?)になってしまう。菊之丞はあくまで一八という幇間が主役で、見事な高座。

すず風 にゃん子・金魚 漫才 (11分)
 金魚の頭に、富士山、お茶と茶摘み娘の人形、ぶどう、と世界遺産記念の装飾(?)が凄かった。この二人の漫才、結構パワーをもらえる。

林家しん平『粗忽長屋』 (25分)
 「おや、髭?」と思った疑問は、すぐに本人が解消してくれた。「金属アレルギー」で髭剃りで血が出て、顔が腫れるらしい。医者に行き治療と薬で治っているらしいが、髭が女の子にもてる(これはジョークか?!)のと、意識としてまだ怖くて髭を当れないようだ。潜伏期間の長いアレルギーで、注意したほうがいいとのアドバイス。
 たしかに、白髪まじりの口髭、似合わないでもない。会場に小学生の女の子がいるのに気づき、「こういう場合は、ネタ選びに影響する」と笑いながら、この噺へ。寄席では漫談の多い人なのに、初めて聴くネタ、驚くほど結構な古典落語だった。もちろん独自のクスグリは入るし、客席をネタに巻き込んだりするが、目一杯受けていた。
 私はしん平の実力を再認識した。願わくは客席に、熊五郎が行き倒れになった原因をつくった居酒屋S水産の関係者の方がいなかったことを祈りたい^^

柳家小のぶ『長短』 (15分)
 “幻”の噺家さんが、黒紋付で登場。落語協会のサイトで、プロフィールは次のようになっている。
「落語協会」サイトの該当ページ

出身地 東京都・港区芝
出囃子 元禄花見踊
紋 花菱
芸歴 
1956(昭和31)年05月 五代目柳家小さんに入門 前座名「小延」
1958(昭和33)年09月 二ッ目昇進 「小のぶ」と改名
1973(昭和48)年03月 真打昇進
初高座日時 1956年
場所 鈴本演芸場
演目 道灌


 この後に、発売されているCDのリストが並んでいる。

 『古今東西落語家事典』を確認すると、生年月日は昭和12年10月3日、とある。談志の一年後輩、志ん朝の一年先輩、小三治の二年年上、入門は三年早い。木久扇と同じ年で今年、七十六歳。
 声は、少し枯れている。しかし、語り口はしっかりしていて丁寧だ。マクラで釈迦や老師などの例をひいて、気の長い人、短い人のことにふれて、本編へ。 
 長さんの悠長さ、短七さんのせっかちな様子が、見事に表現された高座。これが師匠五代目小さん譲りの『長短』か、と思わせた。長さんが決して与太郎にはならず、二人の対照的な性格が描写されていた。
 客席に、この人のことを知っているお客さんどれだけいたかは分からない。しかし、会場は、滅多に寄席に出ない“幻”の噺家さんの芸に程よく沸いていた。
 とにかく、この人に会えて良かった。

橘家蔵之助『蛇含草』 (15分)
 初である。円蔵門下。東京なら『そば清』の上方ネタを、楽しく聴かせ、見せてくれた。室伏の“ハンマー投げ”で食べる餅、などこの噺の見せ場をわきまえた芸、なかなか楽しかった。

桂ひな太郎『強情灸』 (12分)
 ずいぶん久し振りだ。私にとっては、いまだに志ん朝門下の志ん上。
 高座姿を見て、「枯れてきたなぁ」という印象。今後も見たい、聴きたいが、もう一つ聴きたいのは、あの頃のこと、でもある。懐かしい人の高座に、さまざまな思いが去来した。

アサダ二世 奇術 (16分)
 いつもながらの話芸で、客席を騙す。初めてのお客さんも多かったようで、最後のトランプのマジックが、受けに受けた。小学三年生の女の子も、しっかり貢献。

三遊亭歌武蔵 相撲漫談&『宗論』 (30分、*~17:04)
 お約束なのかもしれないが、「只今の勝負」で始まる。マクラは、相撲界や落語界のトンデモない人達の逸話。これが14分ほど。そして、本編。オリジナル(だと思う)のクスグリで会場は爆笑だが、私は長講ネタを期待していた。このネタだから、それなりにマクラを引っ張る必要もあるのだろうが、トリで半分がマクラは、小三治くらいにして欲しい^^


 とにかく、小のぶを聴けたこと、そして、そのネタ『長短』が結構だったことで、池袋まで来た甲斐があった。

 上方のみならず、まだまだ聴いていない芸達者な噺家さんがいる、ということを教えられた日でもあった。

 帰宅し、思い出しながら飲む酒の、これまた旨いこと。落語は、奥が深い。
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by kogotokoubei | 2013-06-29 18:33 | 落語会 | Comments(10)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛