噺の話

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2012年 06月 23日 ( 1 )

今月は平日はなかなか都合がつかないので、落語会のネタが少ない。加えて土曜は昼席のみ、日曜は落語会や寄席には行かないことにしているので、生の落語会はようやく三回目。
 先週から土曜の昼の会が続く。この会は一昨年の第一回、そして昨年の第六回、第七回に続く四回目になる。今回は昼が柳家、夜が古今亭、という昼夜公演だが、昼のみ参加。

次のような構成だった。
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柳家さん弥 『かぼちゃ屋』
柳家小せん 『崇徳院』
柳家花緑  『不動坊』
(仲入り)
柳家三三  『雛鍔』
柳家権太楼 『らくだ』
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柳家さん弥『かぼちゃ屋』 (14:01-14:16)
 あとで花緑がいじるが、やかん頭と表情からは今年で37歳とは見えない。2000年さん喬に入門の13年目。菊六に抜かれた先輩二ツ目の一人だ。しかし、私はこの人の成長を実感した。「ザ・柳家」ということで、上方の『みかん屋』を四代目小さんが東京に「みかん」から「かぼちゃ」に品を替えて移植した伝統のネタ、結構でした。
 一つだけ気になったのが、会話の“間”の取り方。いわばジャズのアフタービート、一拍遅れでの“間”が多過ぎたので、ちょっとリズムに乗り切れなかった気がする。スピーディーな会話の切り返しとアフタービートの適度な組み合わせで噺にリズムができる。そのへんがもっと上手くなれば、次の真打昇進候補の一人であって不思議はない。

柳家小せん『崇徳院』 (14:17-14:44)
 昨年は真打昇進がなかったので、一之輔、朝太、菊六のすぐ上の先輩が2010年昇進のこの人達ということになる。しかし、小せんも、花緑がいじるように今年で38歳の年齢よりは上に見られるのだろうか。私は結構相応のような気がするが。
 久しぶりに聴いたが、なかなか落ち着いた高座。とにかく“声”が良い。低いトーンの声が聴いていて心地よい。扇辰、文左衛門との音楽活動でも美声を披露しているようだが、この持ち味を、今後はいかに使いこなしていくか、楽しみである。もちろん、柳家にとって懐かしい名跡に相応しいネタへの挑戦も期待したい。

柳家花緑『不動坊』 (14:45-15:16)
 マクラでは、自分より若いさん弥、小せんの頭髪と見た目のこと。「私より二人とも若いんですよ」で会場が沸いた。私は、花緑が41歳という年より若く見られることでギャップが広がっていると思う。頭髪に不自由している身としては、正直なところ、花緑の豊富な髪の毛には嫉妬する^^
 三代目小さんが上方から持ち帰った本編は、短縮版。吉公(吉兵衛)に不動坊の美人の後家お滝さんを奪われる長屋の負け組(?)三人の相談から始まった。鍛治屋の鉄つぁん、チンドン屋の万さん、そして仕返し作戦のリーダー格の漉返し(すきがえし)屋の徳さんの会話、大いに結構だった。さん弥が楽屋で聴いていたら、花緑の三人の会話のスピード感とリズムが大いに参考になったのではないだろうか。
 吉兵衛に大家が縁談を持ち込む通常版の導入部や湯屋で吉公が妄想する場面がなくても、十分に噺は成り立っていたし、味わいがあった。
 会場に噺の筋そのもので笑ってくれるお客さんが多かったこともあるが、爆笑が続いた。短縮版にしてこの高座、花緑の持ち味はこういう世界ではないかと思った。師匠である祖父直伝の『笠碁』や、米朝直伝の『天狗裁き』などは、あと十年後でもいいのではないか。そんな気にさせる高座。悩ましいが、短縮版なので、マイベスト十席候補からははずす。しかし、久しぶりの花緑、大変結構だった。

柳家三三『雛鍔』 (15:32-15:48)
 後の権太楼の長講への配慮なのだろうか、寄席並の時間。しかし、肝腎なツボは押さえている高座。三三を目当てにしていた客(私も含めて)には、正直物足りなかったが、しょうがないか。
 余談だが、独演会は“分殺”状態でチケットを入手するのは難しく、いわゆるコラボレーション企画には興味がわかず、しばらく聴いていなかったので、この高座では“三三禁断症状”は直らなかった。近いうちにどこかで聴かねば。

柳家権太楼『らくだ』(通し) (15:49-16:42)
 酔っ払いの短いマクラから、私自身は予想もしないこのネタだった。たしかに、この噺も三代目小さんが東京に移したものではある。しかし、権太楼は、二年前の手術からまだ完全に復調しているとは思えないので、たとえば、『一人酒盛り』とか、『猫の災難』あたりかと思っていたが、マクラ三分で、「おい、らくだいるかい」ときた時は、一瞬身震いした。
 前半は、権太楼の熱い思いが高座で少し空回りしていたような気がするが、次第に権太楼ワールドが盛り上がっていく。中盤からは、会場全体が一体化した不思議な空間が生まれたように感じた。
 何と言っても、らくだの兄貴分(丁の目の半次?)と屑屋が酒を飲みながらの会話がヤマなのだが、権太楼節が炸裂した。たとえば、屑屋が二杯目の酒を飲むのを逡巡していると、「らくだと一緒に土の中に・・・」と半次は脅す。屑屋が三杯目の酒を、じっくり味わいながら飲み干してから、ついに主客逆転。屑屋は、生前のらくだの悪行を暴露。その後の焼き場への行脚は、完全に屑屋が兄貴で半次が弟。願人坊主も現れてサゲまでしっかり。
 気になる言い間違いも少しあった。しかし、本人も分かったのだろう、途中で同じ科白(「嵩にかかって」)を言う場面で修正。そんな小さなことはどうでもいいような、熱演。これをマイベスト十席候補にしないわけにはいかない。


 権太楼『らくだ』の余韻に浸りながら地下鉄の駅へ向かっていた。しかし、あらためて思ったのは、「一時から始めて4時半までやれば、花緑もフルバージョン、三三も別なネタかフルバージョンで出来たのではないか?」ということ。もっと言えば、ネタ出しをしていないのはミステリアスで結構なのだが、人によってお目当ては違うわけで、権太楼の『らくだ』を中心にした時間配分だったとするなら、噺家間のバランスとしては問題だろう。このあたりは難しいが、いずれにしても三三の寄席並の所要時間が残念。9月のチケットを売っていたが、土曜の夜席なので、断念した。残念。

 小言をいったん棚に上げるなら、権ちゃんの元気な高座、そして花緑のスピード感、小せんの落ち着き、そして三三の技術、それぞれ結構でした。
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by kogotokoubei | 2012-06-23 19:34 | 寄席・落語会 | Comments(10)

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