噺の話

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2011年 07月 12日 ( 1 )

本日、多くのメディアが取り上げているので落語愛好家の方はすでにご存知かと思うが、桂三枝が来年、六代桂文枝を襲名するらしい。aqsahi.comの該当記事

桂三枝さん「文枝」襲名へ 来年7月「一層精進」
2011年7月12日
 
 人気タレントで、上方落語協会会長の桂三枝さん(67)が、桂文枝の六代目を、69歳の誕生日にあたる来年7月16日に襲名する。今週末に記者会見して正式に発表する。文枝は上方落語の大名跡で、幕末に活躍した初代は「近代上方落語の中興の祖」と評され、上方で「桂」を名乗るすべての噺(はなし)家のルーツにあたる。

 三枝さんは堺市出身で、1966年に桂小文枝(後の五代目文枝)に弟子入り。間もなく、ラジオ・テレビ番組で一躍人気タレントとなり、長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」の司会など、第一線で活躍を続ける。高座では80年代から創作落語に精力的に取り組み、息子の塾の問題に悩まされる父を描く「宿題」、いけすの魚たちの物語「鯛(たい)」など、他の一門に受け継がれている噺も少なくない。2003年には上方落語協会会長に就任、定席「天満天神繁昌亭」(大阪市)の開設にこぎつけるなど、リーダーシップを発揮してきた。

 初代文枝は幕末から明治初めにかけての大看板で、話芸の実力のみならず、人望も厚く、明治の落語全盛期を担った優れた門人を残した。05年3月に亡くなった五代目は桂米朝さん(85)、桂春団治さん(81)、故・笑福亭松鶴とともに「四天王」と呼ばれ、戦後滅亡の危機にさらされた上方落語界を支えた。


 
 桂三枝は、吉本興業(持株会社に移行してからは正式には、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属)の看板芸人の一人。五代目桂文枝に入門してから、テレビで一躍人気者になったことと、上方落語特有の語り口が出来ないため、師匠の数ある古典を継承することはなく、本人曰く「創作落語」という「新作落語」の噺家。
 彼の創った落語は、なかには楽しいものもあるが、私は本人よりも柳家はん治など他の噺家が演じる高座のほうが好きである。

 桂文枝という名前は小さくない。そして、先代は紹介した記事のように上方落語の歴史に残る人で、戦後の危機的状況を支えた一人である。
 上方落語が不振だったのは、かつて初代桂春団治や三代目三遊亭円馬などを擁し上方落語界を盛り上げた吉本興業が、戦後は落語から漫才に、経営の論理で重点を変更したことも一因である。

 漫才ブームを演出する一方で上方落語の衰退に拍車をかけた吉本所属の、創作落語の三枝が、上方落語の大名席を継ぐ・・・・・・。

 どうしても、襲名のニュースが報道された同じ日に共同通信が配信した次のニュースとの関係を考えてしまう。47NEWSの該当記事

吉本、「京橋花月」の閉館検討 「品川シアター」も 
 吉本興業が、同社運営の「京橋花月」(大阪市都島区)と「品川よしもとプリンスシアター」(東京都港区)の2劇場の閉館を検討していることが12日、分かった。観客数の減少が理由。ともに11月末に賃貸契約期限を迎えるが、更新しない可能性が高いという。

 京橋花月の座席数は500席。年間30万人の来場を目指して08年11月にオープンしたが、立地が悪く、観客数が伸び悩んでいた。

 一方、09年4月に品川プリンスホテル内に開場した品川よしもとプリンスシアター(433席)は東日本大震災後、ホテルの宿泊客が激減した影響で、劇場への入場者も大幅に減った。2011/07/12 15:32 【共同通信】



 吉本は昨年から持株会社に移行し現在は未上場企業。その財務内容の詳細は分からないのだが、決して順調ではないのだろう。漫才ブームの後に、吉本が制作にも関与して大勢の芸人をひな壇に並べて毒にも薬にもならない他愛ない楽屋噺で構成する「バラエティ」とやらで稼げたが、そのバラエティ人気も衰退してきた。

 今回の三枝の文枝襲名は、あくまで商売の論理が優先したように思える。好みの問題としてまったく相応しいと私は思えないし、同じ一門なら十年後位に桂かい枝に襲名して欲しいと思っていた。かい枝は新作も秀逸だが、師匠文枝の十八番に果敢に挑戦していて、今後に大いに期待できる人だ。

 しかし、吉本である。商売なのだ。落語から漫才、そしてバラエティ、それも不振になってきたから、単に算盤を弾いての襲名としか、私には思えない。そして、そろそろ古希に近づいてきた本人も、上方落語協会会長という肩書きや、吉本芸人のトップランナーという存在だけでは飽き足らず、大名席を継ぎたくなったのだろう。吉本と三枝の「Win-Win」なのだ。そこには、上方落語界を長期的に展望する視点や、同じ文枝一門の後輩への配慮などがあるようには、私は思えない。どうでもいいけど、三枝の弟子には「三」の字がつくが果たしてどう改名するのやら。

 この大名跡の復活で、吉本は商売になるかもしれない。しかし、上方落語界全体があらためて勢いをつけることになるようなことは、期待できないだろう。例えば、Sky-Aの「らくごくら」などの落語会が開催されていた「ワッハホール」は、大阪府橋下知事とのいざこざがあったとは言え、結果として「5upよしもと」と名を替えて、落語ではなく若手芸人のためのホールとなった。吉本は落語をする場所を減らしたのだ。

 東京の桂平治による文治襲名に刺激されたのかもしれないが、大賛成の文治襲名とは対照的に、文枝襲名は喜べないし、その背後に算盤が見えてしょうがない。
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by kogotokoubei | 2011-07-12 17:38 | 襲名 | Comments(15)

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