噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

2011年 07月 07日 ( 1 )

 昨年11月の紀尾井ホールでの三夜連続口演の初日に行って、この噺に三三の可能性を感じたネタ。
2010年11月16日のブログ
 
 今年は横浜にぎわい座で六ヶ月連続だが、その三夜になんとか行くことができた。補助席、二階席も使って、ほぼ満席。私がこの会場に来て以来の最多入場者数。

 昨年の会でのアンケートに「あらすじ希望」と書いて、三三直筆のあらすじを送付してもらっていたので、全体の筋書きを知っていたことと、一夜、二夜に関する他の方のブログから、今日が『大坂屋花鳥』と察していたので、楽しみにしていた。
 入場の際に渡されるチラシの中に第一夜と第二夜の要約が含まれていた。非常に気配りの利いたサービス。

構成と時間は次の通り。
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柳亭市楽 『兵庫舟』 (19:00-19:17)
柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の壱 (19:18-20:10)
(仲入り)
柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の弐 (20:22-20:51)
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市楽『兵庫舟』
どう言えばいいのか、悩ましい。会場は受けていた。特に船上での小三治や米朝を題材にした“なぞかけ”や、いわゆる「五目講釈」の場面。しかし、私は前座時代の市朗には、もっと違う方向での可能性を感じていた。この噺は自分なりのクスグリを入れることができるし、言わばギャグを挟めるネタではある。三三が講釈好きなので選んだのかもしれないが。表現が難しいのだが、個人的好みの問題として、市楽には、こういった“変化球”的なネタではなく、もっと“直球”を三三目当てにやって来た満員の会場でぶつけて欲しかった。

柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の壱
マクラで喫煙の話になり、「煙草→火→火事」と連想したのは、私だけかなぁ。缶ピース、私も若い時に飲み屋にキープしていたことがある。師匠の「すれ違い様の“フン”の違いで教わる」という深~いネタも良かった。そういった約10分のマクラから、なんとも余裕の高座。第一夜、第二夜のダイジェストを地口と語りを適度に交えて今本編へ。この部分は音源の残されている先代の馬生や、私は聞いたことがないのだが馬生一門のむかし家今松が手がけているので、いわば習うべきテキストのある噺。そういったこともあるのだろうが、この日演じる部分を自分のものにして全体を再構成している、そんな印象のある見事な出来栄えの高座だった。とにかく主役の“大坂屋花鳥”がいい。時に目を三角に吊り上げて脅し、はたまた艶っぽい仕草で誘い、そういった一瞬の仕草で梅津長門を翻弄する様子が分かる。そして、その挙句・・・という筋書きは書かない。

柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の弐
マクラで「誰が言ったか忘れましたが・・・・・・」と、思い出した名言として、「予想を裏切り、期待に応える」ということを言っていたが、さて、一回目、二回目に来れていない身としては、「予想通り、期待に応える」と心の中で呟いていた。この“弐”では、梅津長門のために放火した花鳥は、花鳥から“お虎”として牢に入る。ここではお虎の脇役としてお鉄婆が効いている。命を賭けて追っ手から逃した長門と、その後に長門と夫婦もどきの暮らしをしている私娼お嬢お兼。三宅島に流される前の牢屋での酒盛りで嫉妬のあまりお兼を亡き者にしてから、三宅島にお虎が流される。その後、島の権力者である壬生大助をたぶらかして家を一軒もらうところで、切れ場。


 なんとも古くて新しい落語の可能性が開けてきた、と思う。円朝の怪談ものとも違うサスペンスの妙を掘り起こした三三が、すでに存在していた『大坂屋花鳥』にも、全体から部分という見方、森を見て木に息吹きを与えたような気がする。

 ちなみに、大坂屋花鳥という花魁と火事は事実を踏まえている。いつもお世話になっている「落語の舞台を歩く」から、馬生の「大坂屋花鳥」の章の一部を引用したい。
落語の舞台を歩く「大坂屋花鳥」

吉原の女郎大坂屋花鳥は実在の人物です。彼女は自分の部屋へ火をつけ、—旦は廓を抜け出しますがやがて召捕られて伊豆八丈島へ流されます。そこにいた男と島抜けをして江戸へ逃げ帰って来たのです。江戸で隠れているところを捕えられ、ついには処刑されます。

 この落語の噺は花鳥の逸話を下敷きに脚色されたものです。現実と噺とは違って当然。噺はフィクションですから、遊女屋の名前も違えば、梅津長門も登場しません。八百屋お七も、ネズミ小僧も、忠臣蔵も舞台用に改変されています。事実と噺は違うのです。



 中入りで、なんとか次回の席もギリギリ確保できた。この会に来れたことが僥倖、そんな高座だった。
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by kogotokoubei | 2011-07-07 23:00 | 落語会 | Comments(6)

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by 小言幸兵衛