噺の話

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2010年 11月 16日 ( 1 )

 この会場での三三は、一昨年12月17日の「三三冬噺三夜」の第三夜目に来て以来である。その日の『夢金』と『富久』は、よく覚えている。
2008年12月17日のブログ

 今回は同じ連続三夜とはいえ、同じ噺の通し口演。しかも柳家のルーツである談洲楼燕枝の大作へのチャレンジである。円朝の怪談噺だけでなく“柳にもこういう噺があるのだ”という気概を感じて参上した。とは言え、残念ながら三夜通しでは来れない。せめて初日だけでもと四谷に駆けつけた。
 こんな構成と所要時間だった。
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(開口一番 桂三木男 『新聞記事』 19:00-19:23)
柳家三三 嶋鵆沖白浪 一    19:24-20:05
(仲入り)
柳家三三 嶋鵆沖白浪 二    20:18-20:58
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 三木男が「三三兄ィが、楽屋でまだおさらいしていて時間をかせげと言われて」、という能書きでムダなマクラとネタを披露したが、これも余興と我慢しよう。その後が凄かったから。
 ちなみに、燕枝作のこの噺は「しまちどり おきつしらなみ」と読む。今風に書くならば『嶋千鳥沖津白波』になるだろうが、今日のプログラムで上記の書き方をしている。

 燕枝とこの噺については、岡本綺堂が『綺堂芝居ばなし』(旺文社文庫)の“寄席と芝居と”の章で、こう書いている。*この本、すごく面白いので、ぜひ河出文庫あたりで復刊を期待したい。

 燕枝の人情話の中で、彼が最も得意とするのは「嶋千鳥沖津白浪」であった。大坂屋花鳥に佐原の喜三郎を配したもので、吉原の放火や、伝馬町の女牢や、嶋破りや、人殺しや、その人物も趣向も彼に適当したものである。これは明治二十二年六月、大坂屋花鳥(坂東家橘)梅津長門(市川猿之助)佐原の喜三郎(中村駒之助)等の役割で、通し狂言として春木座に上演された。


 このネタ全体を私も知らない。推測はつくが三三も、東京新聞に掲載された次の記事のように、筋の進み方についてはミステリアスなニュアンスだったので、なおさら楽しみである。
東京新聞Web版の11月7日の記事

 円朝ものに再三挑戦してきた三三。「『嶋鵆~』はせっかく柳家のご先祖さまが残してくださったんだから」と決意した。談洲楼が読み物として書いた文語体の本と、三代目春風亭柳枝が口演した速記本、講談の資料を基に台本を練っている。
 「以前は頭で考えた通りに物事を運ぶのが一番大事なことだったが、ここ数年、登場人物が思いもよらぬ行動を取るのが面白い。お客さんの反応に引っ張られて、その日その場で変わったりする。だから、この五人も誰がどんなふうに光ってくるか自分でも楽しみ」と表情を和ませる。


 ともかく登場人物が多いのだが、主役の一人は間違いなく佐原の侠客である喜三郎。今夜はこの喜三郎が際立っていた。分かりやすく言うと“カッコいい”のだ。喜三郎は彼を慕う美女“おとら”とその母親を助けようとして、敵対する相手の菊蔵の攻撃を受け拉致された。しかし、おとらと喜三郎の兄弟分の手助けを得て監禁先から脱出し、復讐に転じる。菊蔵を擁護する柴山の仁吉を仕留めることはできたのだが、肝腎の菊蔵には江戸に逃げられてしまった。さぁ、これから菊蔵を江戸に追いかけるぞ、というところで今夜の切れ場。
 終演後に、その噺の行く末にこれだけワクワクしたことは今までにない。今後の大活劇を予感させるし、筋を知らないだけに純粋に物語の顛末が気になる。これぞ通し口演の魅力、と思わせる初日の出来だ。
 と言いながら、実は明日も明後日も来れないのである。三三が仲入り後に、アンケートに「あらすじ希望」と書けば、ワープロやパソコンを使えないので“手書き”で時間がかかっても送る(つもり)と言ってくれたので、期待してアンケートに書いた。待ってるぜ!

 残る二夜がどう進むかは分からないが、順調なスタートだった。柳家に残る大事な噺を三三が復活させることに成功した歴史的な高座だったと確信する。二日目や最終日、あるいは三夜通しでお聞きいただけた方のブログにもぜひ期待したい。
 正直なところ、四谷の駅に向かいながら、悪魔が「明日も明後日も会社休んでしまえ!」と囁いた・・・・・・。しかし、そうもいかない、しがないサラリーマン稼業。ぐっと堪えて初日だけでも僥倖と我慢。
 
 三三の噺家人生のターニングポイントとなった夜に出会えた、そんな思いで帰路を急いだ。この噺は、確実に彼をより一層飛躍させることになるだろう。
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by kogotokoubei | 2010-11-16 10:13 | 落語会 | Comments(2)

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