噺の話

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2008年 12月 20日 ( 1 )

地下鉄銀座線の虎ノ門駅から地図を見ながらニッショーホールへ。初めて来る会場だが、座席のゆとりもあり、ステージも見やすく、なかなか良い会場だ。
 かつて三田で毎月のように開催されていたビクター冠の落語会が、今後ホールで回数を減らして開催されるその第一回である。三田の仏教伝道センターでは「三田落語会」として再出発。
さて、今日の贅沢な顔ぶれとネタ。
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(開口一番 柳家小ぞう 金明竹)
古今亭菊之丞   元犬
柳亭市馬      松曳き
春風亭正朝    はてなの茶碗
(仲入り)
柳家喜多八    盃の殿様
柳家さん喬     芝浜
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小ぞう(13:00-13:15)
開口一番について普段多くを語らないのだが、今後に期待する人だからこそあえて。
私が出会うここ最近の小ぞうはさんは、なかなか良かったが、今日は少し緊張もあったのだろう、どうも今ひとつ。限られた時間のことも頭にあったせいだと思うが、この噺の肝腎な部分が出来ていなかったように思う。それは、必ずしも早口で言わなくても効果を出すこと。言い立ての最後の部分(「わての旦那の檀那寺が兵庫に・・・・・・)は、たしかに前半から次第に口調の速度を上げていくので早口になるのだが、お客さんに聞き取れないようでは困る。スピードだけで誤魔化す噺ではない。他の落語会ではもっとはっきり話していたはず。すでに勉強しているとは思うが、三代目三遊亭金馬のCDなどを聴いて、あらためてこの噺を磨いて欲しい。この人は特有の「フラ」を感じるだけに、あえて小言でした。

菊之丞(13:16-13:38)
マクラで、二代目木久蔵襲名披露の引き出物のハチミツのネタが笑えた。なぜ菊之丞でこのネタになったのかは分からないが、まぁ全体のバランスを考えたのだろう。人間になったシロが道端で蓄音機を見て「これを見るとどうしても首をかしげたくなる」というヨイショは笑えた。私は久しぶりの菊之丞なのだが、この人の醸し出す江戸と江戸っ子の世界は得がたい。このネタでこれだけこの会場を沸かすことができるのは、実力の証である。あえて言えば、主催者のなんらかの意図でこのネタに落着いたのだろうが、ネタのバリエーションを考慮したら「四段目(蔵丁稚)」「七段目」など歌舞伎ネタがベターであったのではと思う。約20分という持ち時間が影響しているのなら、出演者の人数を含むプログラム編成を再検討すべきである。寄席の持ち時間と大きく変わらないではないか。菊之丞目当てのお客さんだって結構いるはず。

市馬(13:39-14:07)
「粗忽大名」の別名のある噺。師匠小さんが昭和天皇の園遊会に出た時の話のマクラは、あまりにもこの噺にピッタリだった。市馬は、野球で言えば毎年確実に3割を打てる中核バッター。それが現在の落語界のおけるこの人ではないだろうか。いつも変わらぬ綺麗な高座姿、安心して江戸の懐かしさの漂う本寸法を味わえる噺家さんである。最近の寄席でこの噺がそれ程かけられるとは思わないので、この噺も、主催者の意図を感じるが、これは結構でした。あえて欲を言えば、仕込みとしては、殿様をもっと前半から粗忽っぽく演じるべきかもしれない。これも落語ファンの我侭とお聞き流しを。

正朝(14:09-14:50)
ご本人がマクラで暴露する通り、風邪の影響は確かにあり、残念ながら万全な内容とは言えなかった。しかし、茶金、鴻池など登場人物の関西訛りの出来栄えや、帝をはじめとする公家言葉で笑いをとる場面などはこの人ならではである。しかし、正朝さん、本来は江戸っ子の粋が似合う噺家さんである。ご本人が選んで挑戦したのかもしれないが、初めてのお客様のほうが多そうな会場。もっとニンなネタはいくらでもあったのでは、と思うのだ。

喜多八(15:04-15:33)
このネタは、米朝師匠なども指摘する数少ない「スケールの大きな噺」の一つ。まず、この噺を選んだ人に感謝。テレビでは円生版を見たことがあるがライブでは初めてだったのでうれしい限り。
九州から江戸吉原への「道中言い立て」を息をつぎながらも見事にこなしたところが、ヤマ場の一つ。前半は、やや噛む部分が少なくなかったが、殿様のお茶目ぶりが楽しい。埋もれかかった大ネタへの挑戦をとにかく評価したい。今後も多くの噺家さんに演じてもらいたい。

さん喬(15:35-16:15)
「女」を描かせたら、やはりこの人だ、ということを再認識させてくれた。私にとっては今年の落語のトリを、さん喬師匠の「芝浜」で迎えられたことを幸せに思うばかり。私にとってさん喬師匠のこの噺は初ライブなので、なおさら印象が強かった。本当に丁寧な噺家さんだ。それは語り口だけではなく、構成の面でも言える。まず冒頭で、芝には朝と夕に河岸で市がある、と説明していること。そして、おみつさんが最初と二度目に勝五郎を送り出す時の「喧嘩しないでね」の言葉。伏線をさりげなく張っているので、演出の効果も際立つ。ヤマは何と言っても、落とし主が見つからずお上から下がってきた財布のことを、いつ勝五郎に打ち明けようか逡巡していた葛藤の日々を、おみつさんが打ち明けるところだろう。ここは、素直に泣ける。終演後、ウルウルした目でアンケートを書いていた。

 なかなか良い雰囲気の会場、そしてこの顔ぶれ、文句を言える内容ではないのだが、ご覧のように一人当たりの持ち時間は、決して適切とは言えない。あえて言うなら、次回以降は、演者を一人減らしてでも持ち時間を増やして欲しいものだ。ビクターさんのバランスシートと合うのか否かはわからないが、菊之丞が20分、市馬が30分ということはないだろう。開口一番も時間を意識しなかったはずがない。
 
 朝日名人会や落語研究会などをライバル視して、なんとか差別化を図ろうという心意気は伝わる。しかし、こういう会は、観客にとって「晴れ」の日なのだ。せっかくネタ選定を含めて苦心しているのだから、もっと一席づつの重みを考えて欲しい。さん喬師匠のトリなら一時間の長講を客は喜ぶはず。DVDにするための時間制限?だったら2枚組で発売してください。今後に期待するからこその小言である。
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by kogotokoubei | 2008-12-20 19:23 | 寄席・落語会 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛