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モグサの老舗、亀佐、というお噺ー釈徹宗著『おてらくごー落語の中の浄土真宗ー』より(3)

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釈徹宗著『おてらくごー落語の中の浄土真宗ー』(本願寺出版社)

 釈さんのこの本からの三回目は、仏教が深く関連する落語のネタのこと。

 すでに『お文さん』のことは以前書いたので、その他のネタについて。
 この章で登場するのは、『お文さん』の他は、『宗論』『菊江仏壇』『後生うなぎ』などだが、それらは落語愛好家の方もご存じかと思うので、あまり馴染みのない噺をご紹介。
 『亀佐』という噺。本書の紹介、その全文を引用。
『亀佐』

 実はこの落語、私は、桂米朝師匠以外の方から聞いたことがありません。ですから、これもヘタすると消えていくかもしれないネタのひとつですね。
 このお噺は、噺家自身がお説教師の雰囲気で語らねばなりませんから、ごくごく短い噺ではありますが、誰にでもできるというわけではないでしょう。それに、あんまり笑うところがないし・・・・・・。
 「亀佐:というのは「亀屋佐京」の略で、今でも営業されている老舗モグサ屋さんです。かつて、モグサを売るときの売り口上の節回しが独特だったので有名なんだそうです。この「亀佐」の売り口上がこの噺の落としどころなので、ちょっとあらかじめ説明が必要です。この「仕込み」がないと、サゲがさっぱりわかりません。
 途中、「ご同行、南無阿弥陀仏を称えるということはな、これはもう、どなたでもおっしゃることじゃ。しかしただ称えりゃええというもんではないぞ。それはちょっと心得違いじゃ」と、高座でお説教せねばなりません。で、居眠りをするお同行のいびきがうるさくてお説教が続けられない。この男を起こそう、そういう噺です。「講中の皆さん、ちょっと起こしてやってくだされ」なんて、いい感じのセリフがあります。同じ仏道を歩む人を「同行」と呼んだり、同行の集まりを「講」と言うなど、真宗用語がポイントです。
 これが、全文。

 というわけで、上方落語の内容を調べる際に度々お世話になる「世紀末亭」さんのサイトで、『亀佐』を確認することにした。
世紀末亭さんのサイトの該当ページ

 釈さんが指摘していた、モグサ売りの口上を、まず引用。

この「亀屋佐京」が東海道を上り下りする人に宣伝をしはった。面白い節
でこの伊吹モグサを売って歩いたんですなぁ。

 ♪ ご~~しゅ~ いぶきやまのほとり

   ♪ かしわばらほんけ~~ かめや~~さきょ~

      ♪ く~すりもぐさよろ~~~し

 っちゅう、こぉいぅ節でずっと売って歩いた。わたしら、もちろん知りま
せんが南天さんなんて人はこの真似が得意で、よぉ真似したはりました。

 この後、ある老婆と閻魔大王に関する、お説教がある。
 そして。

●かなんなぁこれ、説教のあいだあいだへ鼾(いびき)が入るじゃないかいな。
講中(こぉじゅ~)の皆さん何をしてござる。鼾があっては邪魔になる、説法
の邪魔になるでな、気ぃ付けてもらわんと困るで講中の皆さん。

▲おっすぁんそれがねぇ。鼾かいてるのんあれ、講中の一人でんねや●えぇ、
だ、誰じゃいな?▲亀屋佐兵衛さんが鼾かいてまんねやがな●亀屋佐兵衛さ
んちゅうたら頭はげらかして、もぉえぇ歳やないかいな。そんな人が念仏の
邪魔をしてはいかん。お説教の邪魔になりますで、早よ止めなされ。

▲ちょっと、佐兵衛さん。亀屋佐兵衛さん。念仏の邪魔なる言ぅたはります
がな■グァォ~~ッ▲あんた、講中やろ。頭はげらかして、鼾が邪魔んなる
言ぅてはりまっせ■グァォ~ッ▲難儀やなぁ……

♪ こぉ~~じゅ~~ いびきじゃまのあたり
♪ かしらはげ、あんた本家じゃ、ほんけかめや~~さへぇさん、これッ!
♪ ゆ~すりおこすえ~~~ぇ

▲おっすぁん、まだ起きまへんがなぁ……

【さげ】
●今ので一つ、すえたげなはれ。

 う~ん、なるほど、消えるかもしれない噺、ではあるなぁ。

 でも、米朝一門、誰か継いでいてくれているのか、どうか。

 伊吹堂亀屋佐京商店のサイトには、広重が描いたお店の絵がある。
亀屋佐京商店のサイト
 『百川』は、残念ながらお店はもうないが、噺はしっかりと残っている。

 まだ、亀佐というお店はあることだし、ぜひ、この噺も残して欲しいものだ。
 

Commented by saheizi-inokori at 2018-01-20 21:33
佐兵衛さんやね?紛らわしいなあ。
Commented by kogotokoubei at 2018-01-21 19:10
>佐平次さんへ

モグサのお店は佐京、落語の登場人物は佐兵衛、ということです。
売り口上を含めて、地口がネタの中心となっている、きわめて短い噺です。
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by kogotokoubei | 2018-01-20 21:01 | 落語の本 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


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