噺の話

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新宿末広亭 9月下席 夜の部 三代目桂小南襲名披露興行 9月28日

 昨日は途中まで書いて、晩酌の酒がまわってきて断念。
 今日のテニスの後、クラブハウスで缶ビールを飲み、昼食に誘われたが、それ以上飲むと今日も書き終わらないと思い、心を鬼にして断った^^
 
 さて、夜の部。三代目桂小南襲名披露興行だ。

 客席は、椅子席が三割から四割。桟敷にはそれぞれ三~四人。
 仲入り後には、椅子席も桟敷ももう少しお客さんが増えたが、平日雨交じりの夜とはいえ、ちょっと寂しいねぇ。

 出演順に感想など。

開口一番 桂こう治『転失気』ー>『牛ほめ』 (13分 *16:48~)
 初めて聴く、小文治門下の前座さん。
 『転失気』を始めたので、「おいおい、可風とツクよ!」と思っていたら、案の定、楽屋の前座からダメ出し。ネタ帳を見せてもらって、「それでは、『牛ほめ』を演らせていただきます」と仕切り直し。客席から「がんばれ!」の声。優しいお客さんだ。
 しかし、本人はもうアップアップという感じで、噛むやら言いよどみやら、科白を忘れるやら・・・・・・。
 これも、経験。精進してもらいましょう。
 それにしても、秋葉様のお守りではなく、防火宣伝のビラ、というのはいかがなものだろう。師匠譲りなのかもしれないが、通じなくなった言葉を言い換えてばかりいると、落語そのものが壊れてしまうのではなかろうか。やはり、秋葉様だと思うなぁ。

山遊亭くま八『魚根問』 (8分)
 これまた初めて聴く人。
 繰り返されるネタの後に笑いを待つ間が、あまり好きではない。
 これは、後から出る歌春でも感じたことなのだが、笑いを半ば強制するような間が頻繁に続くのは、あえて言えば品のない行為であり、それは芸とは言えない。
 まだ、若く明るい高座には好感が持てるので、今後の成長を期待したい。

新山真理 漫談『巨人軍の納会』 (11分)
 このネタは初めて聴いたこともあり、結構笑った。
 詳しくは書かないが、三十数年前、横浜ファンと西武ファンの若手女性漫才師が、熱海後楽園ホテルの巨人の納会に呼ばれて漫才をした時の逸話。さて、どこまでがフィクションかは分からないが、ネタとしてはよく出来ている。この人の話芸、結構、レベル高いんだよね。

三笑亭夢丸『お菊の皿』 (12分)
 久し振りだが、少し太ったか^^
 この人の持ち味は、そのスピードであり、弱点もその速さかもしれない。
 立て板に水の勢いの良さを感じる時もあれば、次の科白が待てないかのような忙しさが聴く方を落ち着かせてくれないこともある。
 まだ、若いので今後次第に落ち着きが出て来るとは思う。
 この高座では、スピードの良い面が出ていたようだ。
 芸協の将来を担う一人であることは間違いがない。

三笑亭可龍『宗論』 (14分)
 見た目の若さに反して落ち着いた高座。夢丸はこういう先輩に見習うべき点が多いように思うなぁ。
 十八番と言えるだろう。このネタなら、春風亭正朝とこの人の二人が双璧ではなかろうか。小三治は、別格^^
 拙ブログを書き始める前、2008年2月9日のさがみはら若手落語家選手権の予選、一之輔が出場したのだが、この人がこのネタで一位通過。私が一票を投じたものの(?)一之輔(『鈴ケ森』)は僅差の二位だった。ちなみに、一之輔は、予選全体の二位でもっとも惜敗率が高いということで本選会に出ることはできたが、その年の本選会は三遊亭歌彦(現歌奴)が優勝。一之輔もきっと忘れられない予選ではなかったかな。
 短い噺とお祝いの踊りかな、と思っていたが、テッパンとも言えるネタを楽しく聴かせてくれた。寄席の逸品賞候補としたいので、色を付けておく。

松旭斎小天華 奇術 (10分)
 無言での紐とスカーフの奇術。なんとも言えない雰囲気は、この人ならでは。
 “職人”という言葉が当てはまるような、そんな人。嫌いではない。

三遊亭遊之介『真田小僧』 (15分)
 これまで聴いた高座の印象が良いので、少し残念。表情が硬いのだ。
 口上の司会という大役が待っているせいか、あるいは、打ち上げの酒が残っているのか^^

桂歌春 漫談 (15分)
 歌丸の総領弟子なので、私も歌丸の襲名披露をしたいが・・・といった内容を中心の漫談。笑いを待つ間が、気になった。この人も、打ち上げ疲れか。
 とはいえ、口上では、なかなかいいこと言ったなぁ。

桧山うめ吉 俗曲 (13分)
 小唄「水の深さ」から「三階節」、新内の「蘭蝶」、締めに躍りで「茄子と南瓜」。
 まさに、寄席の“彩(いろどり)”だなぁ。

桂南なん『辰巳の辻占』 (12分)
 見た目に騙されてはいけない噺家としては、病弱を装った頃の喜多八とこの人が双璧ではなかろうか。
 高座に上がった時の、なんとも言えない見た目と靜的な印象と、ダイナミックな所作と表情の豊富な高座との落差の大きさは、これまでの経験がなせる技なのだろう。 

三遊亭小遊三『蛙茶番』 (18分)
 仲入りは、この人。
 この噺は、たぶん十八番の一つではなかろうか。
 女性のお客さんも、あの場面(?)で笑うこと、笑うこと^^
 この人が、なぜ会長にならないのか・・・きっと、政治的なことより、自ら演じることが好きなのだろうなぁ。
 そんなことを思わせる高座だった。
 
 
 一息入れて、口上だ。

三代目桂小南真打昇進披露口上 (13分)
 後ろ幕は、落語芸術協会から、岩槻の須賀食品寄贈に替わった。
 下手から、遊之介、遊吉、金太郎、小南、南なん、歌春、小遊三の六人。
 印象に残る内容は、まず、兄弟子の金太郎。師匠は三代目三遊亭金馬を師匠に東京落語を百席以上覚えてからすべて捨て去って上方落語を学び直した人で、「東京でも大阪でもない、場所で言うなら、静岡落語」と称していたが、独自の小南落語と評された。三代目小南は春日部出身、東京との間、自分独自の北千住落語を目指して欲しい、と笑いも意図したネタだったのだろうが、客席はまともに聞いていたなぁ。トースターにまつわる逸話も紹介されたが、その犯人のためにも割愛。
 南なんは、披露目は金がかかり、春日部の畑を売って費用を捻出したが、落語という畑を耕し欲しい、と締めた。
 歌春が、自分の高座よりもずっと良かった^^
 小南治の真打昇進披露に、協会の違う父親の二代目林家正楽が出演したらしい。今回も、協会の枠を超えて、父の芸を継いだ弟の二楽が出るので、ぜひ兄弟の高座を楽しみにして欲しいと、知らない人もいたかもしれない補足情報が良かった。
 締めの小遊三は、先代の小南に聴いた逸話を披露。ある程度、自分の落語に自信を持ってきた頃、師匠の金馬が高座を聴いてから、「お前のは、金が欲しい欲しいという落語だ」と言われ、呆然とした、とのこと。いったいどうすればいいのか分からなかったと二代目小南は述懐していたらしい。
 今、金が欲しい欲しい落語、蔓延しているなぁ。
 お約束の三本締めで口上は、結構真面目な雰囲気のままお開き。
 兄弟子二人の優しさが伝わる、実に結構な口上だった。

ボンボンブラザース 曲芸 (8分)
 十八番の紙の芸、下手桟敷への出張サービスで、私のすぐ後ろまで来ての熱演。
 いいねぇ、いつ見ても、この人たち。

三遊亭遊吉『粗忽の釘』 (14分)
 何度か聴いているが、もっともスピード感のある高座。地味な印象だが、その飄々とした個性は、嫌いではない。

山遊亭金太郎『たらちね』 (13分)
 先に口上を聴いたが、高座は初。
 ロマンスグレーの頭髪。金じゃなくて銀太郎か^^
 無理に笑わせようとはしない、無駄のない高座。兄弟子南なんと弟弟子小南が、個性が強いのとは対照的。
 トリの時間を作るための短縮版だが、一番難しい膝前の役割をしっかり務めた。

林家二楽 紙切り (9分)
 元気に高座へ。挨拶代りの「桃太郎」の後、お客さんの注文で「文治の相合傘」「選挙」の三作で兄につないだ。協会を越えた出演、本人も楽しんでいるのが、伝わった。

桂小南『しじみ売り』 (26分 *~20:57)
 自分の羽織と着物をつくり、余った分で二楽の羽織ができた、とマクラで話す。彼らしい、弟への感謝の思いなのだろう。
 本編は、師匠の十八番の一つだった、この噺。もちろん、上方版。だから、しじみ売りの子から、しじみを買ってやるのは、鼠小僧次郎吉ではなく、ある親分。
 匿名で演じる場合もあるが、人によっては、遊びを入れる。五年余り前、テレビ朝日「落語者」で桂まん我のこの噺を聴いた際は、米朝の本名を使っていた。
2012年5月12日のブログ
 実は、いただいたコメントで親分の名前の由来に気が付いた次第。
 三代目小南は、師匠と同じ市村三五郎という名の侠客にしていたが、場所は江戸に替えていた。時期も師匠が十日戎で、三代目は初午。
 親分、しじみ売りの子、そして、子分の留公の三人が、主な登場人物。
 あの独特の声は、親分にはピッタリ^^
 しじみ売りの子どもの可愛さ、家族思いの健気さは、よく伝わった。
 欲を言うなら、バイプレーヤーの留公を、もう少し軽いお調子者に描いて欲しかったが、全体としては、師匠の得意ネタへの取り組みを嬉しく思いながら聴けた好高座。
 サゲは、師匠と同じ「あまり声が大きいので、しじみ(縮み)あがりました」。
 その独特の声、しぐさ、間など、三代目小南の落語の可能性を感じていた。


 中にいる間に降った雨も、嬉しいことに上がっていた。
 なんとか来ることのできた披露目だが、披露目が終わってしばらくしてから、また、小南の高座を聴いてみたいと思う。できれば、南なん、金太郎との三人会などがあれば、駆けつけたいなぁ。地下鉄の駅に向かいながら、そんなことを思っていた。

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Commented by ほめ・く at 2017-10-01 18:30 x
襲名披露興行にしては寂しい入りですね。顔づけも悪くないのに。
志ん朝が高座で『住吉踊り』を演っていた頃に、南なんがよく出演していました。あの時だけは芸協の人も出てたのです。南なんは志ん朝からのイジラレ役で、「お前さんの顔ってえのは、どうしてそう歪んじゃったの」なんてやられてました。
高座はしっかりとしています。
金太郎はいつ見ても真っ直ぐな高座で好感が持てます。髪の色は私といい勝負ですが、あちらの方がちょっと男前かな。
3代目の襲名披露、どこかで行く予定にしています。
Commented by kogotokoubei at 2017-10-01 19:57
>ほめ・くさんへ

おっしゃる通り、もう少し入って欲しいと思いました。
へぇ~、住吉踊りで、そんなことがあったんですか。志ん朝だからこそ、なのでしょうね。
南なん、金太郎という良い兄弟子に恵まれたことが、この襲名になったんでしょうね。
二代目小南一門会ってやってるんでしょうかね。
まだなら、どこかで企画して欲しいものです。
Commented by りつこ at 2017-10-01 22:55 x
わわ、いらしてたんですね。もしかしてとても近くに座っていたかもしれません。
私は南なん師匠が大好きなので、口上に並ぶ南なん師匠見たさにこの後も何回か見に行くつもりです。
Commented by kogotokoubei at 2017-10-02 12:25
>りつこさんへ

いらっしゃいましたか!
南なんの高座で大笑い・・・結構接近していたかと思いますよ^^
口上は、兄弟子二人の人柄が滲み出ていて、良かったですね。
私も、どこかでもう一度行きたいと思っています。
また、お会いできたら、ご挨拶しますね。
Commented by ぱたぱた at 2017-10-03 18:59 x
ご無沙汰しております。ブログ文章から中身の濃い芝居だったことが伝わりました。ほめ・9様もコメントされてましたが、顔付けもいいのに客の入りがよくないのはさびしいですね。
8月の歌丸がトリの国立演芸場で小南本人が11月中席で襲名披露興行をやるのでその芝居ではもっと長いネタをやると言っていました。取り敢えず国立演芸場の初日は取りましたので今から楽しみです。
Commented by kogotokoubei at 2017-10-03 21:41
>ぱたぱたさんへ

お久しぶりです。
入りはともかく、協会全体で襲名を喜んでいることが伝わってくる、良い披露目でした。
兄弟子に恵まれましたね、三代目小南は。
金太郎が、「今日も長いですよ」と言っていたので、九時を回ることも覚悟していたんですがね。
まぁ、打ち上げもあるのでしょうから^^
国立の内容、ぜひ、お知らせください。
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by kogotokoubei | 2017-10-01 16:46 | 落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛