噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

新宿末広亭 9月下席 昼の部(仲入り後) 9月28日

 午後から休みをとって、久し振りの寄席へ。

 夜の部は、三代目桂小南襲名披露だ。

 午前中の雨は上がっていたが、いつ降ってもおかしくない空模様。
 中で高座を楽しんでいる間は、実際に舗道を濡らしていたようだ。

 コンビニでおにぎりやお茶を仕入れてから末広亭到着は、ちょうど昼の部の仲入り。

 客席は、椅子席が七割ほど、桟敷はそれぞれ四~五人ということろ。
 迷うことなく、好みの下手の桟敷を確保。

 後ろ幕は、落語芸術協会。
 客席後方にもいくつか花輪があったが、高座上手の花は京王プラザホテル、下手は東京かわら版。

 クイツキ以降について、感想などを記す。

三笑風可風『転失気』 (12分)
 出囃子「ハイサイおじさん」で登場した昨年真打昇進の人だが、私はまだ可女次の名の印象が強い。
 協会ホームページのプロフィールにあるように、最初は八代目古今亭志ん馬(「意地悪バアサン」の志ん馬)に入門したが、師匠没後、小笠原の父島でウミガメの調査をした後、三笑亭可楽に入門し直したという異色の経歴の持ち主。
落語芸術協会HPの該当ページ
 以前にも聞いているが、マクラが可笑しかった。
 師匠可楽が、「落語家は、売れるか、ゴミになるか、どっちかだ」と言うので、「師匠はどちらですか」と尋ねると、しばらくの沈黙の後、「おれは、これから売れるんだ」と答えた、とのこと。可楽は昭和11年生まれなので、可風が入門した昭和14年時点でも、66歳。師匠の言葉の後に、可風が「ゴミなんかじゃないですよ、私は師匠を、誇りに思っています」でサゲ。
 本編は、クイツキとしては疑問に思わないでもない、前座噺。
 「ロシアの揚げパン」というギャグを途中に挟んで楽しく聴かせてくれたのだが、このネタ選びが、夜の部開口一番の前座に、多大な被害をもたらすことになる^^

東京太・ゆめ子 漫才 (14分)
 高齢化問題をテーマの、十八番ネタ。
 ゆめ子が「100歳以上が六万七千八百二十四人、90歳以上が二百六万人」と数字を挙げた。共通の趣味を持つことで、夫婦の会話ができるというネタが続くが、途中、どうも本当に、ゆめ子がネタを忘れたことを京太がやる込める場面が、一番可笑しかった。
 もし、あれもネタだったとしたら、それは、凄い技術と言えるだろう。でも、きっと、忘れんだろうなぁ。ゆみ子曰く「ボケは、うつる」。
 色物が充実している芸協において、欠かせない存在。

桂伸治『あくび指南』 (16分)
 登場しただけで、客席を明るくさせる噺家さんは、そう多くないが、その一人だ。
 あくびの種類の説明を丁寧に挟んだ。春のあくびは、のどかな春の陽ざしを浴びて、菜の花が一面に咲く中で出るあくび。秋は、長夜、人を待っていて待ちくたびれて出るあくび。冬は炬燵に入っていて、猫のあくびに思わず誘われて出るあくび。加えて、寄席のあくび、そして、究極が臨終のあくび。
 文治という大名跡は弟弟子に譲ったが、結果、その方が良かったのかもしれない。伸治という名前が寄席にあるのも、嬉しいではないか。
 ほっとさせる高座、とでも言えようか。その笑顔で寄席に潤いを与える大事な噺家さんだ。

柳家蝠丸『弥次郎』 (13分)
 なんとも楽しい高座だった。
 北海道の寒さを表す小便がすぐ凍るというネタや、イノシイの大事なところを摑む、というネタも決して下品にはならず、女性のお客さんも大笑い。
 この人は、結構最近になって知ったのだが、芸協では貴重な存在だと思う。
 噺家さんの個性の多様さは、圧倒的に芸協が落語協会より上だろう。夜の部の南なんなども含め、実に「落語家らしい」人材が豊富。
 
翁家喜楽・喜乃 太神楽 (8分)
 膝替わりは、この親娘。
 五階茶碗から組みとり。
 茶碗などを手渡ししながら、娘の芸を見つめる父親の姿が、なんともなくいいのだ。
 最後の組みとりで、輪を落しそうになった後の喜乃ちゃんの照れ笑いが、可愛かった。
 いいねぇ、伝統芸能を父と娘でつないでいく姿。

春風亭柳之助『井戸の茶碗』 (30分 *~16:36)
 夜の部が目当てではあったが、ぜひ、この人の昼のトリも聴きたかった。
 柳昇に入門し、今は小柳枝門下。なかなかの二枚目で古典本格派は、芸協では少数派ではなかろうか。
 千代田卜斎や高木佐久左衛門が、屑屋に「いくつになられる」と聴くクスグリで笑いをとったが、全体的には、真っ正直な高座、と言えるだろう。
 清兵衛が千代田と高木をいったりきたりする場面の短縮の芸も違和感はないし、若々しく実直な高木の役はニンと言える。
 好演、なのだが、やはりもう少し“遊び”というか、余裕が欲しい。
 それは、年齢のせいもあるかもしれないが、昭和41年生まれだ、無理な注文ではないと思う。
 千代田卜斎親娘の住まいが、芝新堀裏という設定は、初めて聞いた。清正公様脇を入った裏長屋ではない型もあるんだ。小柳枝譲りかな。
 協会HPのプロフィールを見て、鹿児島出身に気づく。
落語芸術協会HPの該当ページ
 てっきり関東の出身かと思っていた。年齢は五十路を越えたばかり。現在の師匠の後継者となりうる潜在的な力は感じるので、今後も期待したい。


 さて、これにて昼の部お開き。

 喫煙所から外を見たら、多くのお客さんが柳之助を取り囲んでいる。
 彼の主任の席に、多くの後援者が駆けつけたようだ。笑顔で応対し、一緒にカメラに収まる柳之助の姿に、この人の実直さが見てとれる。
 平日の、やや雨まじりの天候でも、襲名披露という特別興行の夜の部より客の入りは多かった。来てくれたお客さん達の思いを大事に、今後も柳之助には精進してもらいたい。
 昼夜のお客さん入替えで、ずいぶん、客席は寂しくなった。
 平日夜、雨交じりとはいえ、ちょっと残念。

 昼の部の仲入り以降は、実に充実していた。
 可風は、マクラで楽しませてくれた。
 伸治、蝠丸というベテランの高座は、期待通り。
 喜楽・喜乃の父娘は、太神楽という芸能が継承される現場を見た思いで嬉しかった。
 柳之助は、基礎は十分できている。今後は伸治や蝠丸などの高座に見られる、懐の深い芸を盗んでもらいた。

 夜の部は、別途書くことにしよう。

[PR]
Commented by ほめ・く at 2017-09-29 16:44 x
柳家蝠丸、ちょっと風貌が三代目三木助に似ていて、独特のホンワカとした雰囲気を感じさせる好きな噺家です。
以前に圓朝作で演じ手が少ない『江島屋』を聴いたことがありますが、素晴らしい高座でした。上方の『夢八』を東京に移したのもこの人だと言われています。
一般的な人気は高い方ではありませんが、堀井憲一郎が「東都落語家ランキング」BEST50にこの人を入れていたのは、さすがだと思いました。
夜の部、楽しみにしています。
Commented by kogotokoubei at 2017-09-30 08:37
>ほめ・くさんへ

『江島屋』は、たしかに聴いたことがないですね。
へぇ、『夢八』を移したのがこの人でしたか。
蝠丸や南なん、少し若くなって可龍や夢丸などが芸協の寄席で顔づけされていると、行きたくなります。
夜の部、今しばらくお待ちください。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2017-09-29 12:45 | 落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛