噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

新宿末広亭 六月上席 昼の部 6月7日

 休みをとっての末広亭居続けを敢行。

 途中で昼食をとりコンビニで助六などを買い込んで、12時15分頃に入場。
 一風・千風という、聴いたことのない漫才の途中だった。
 客席は椅子席で六割位、桟敷はパラパラと四割位。漫才が終わってからいつもの下手桟敷に場所を確保。二階席に修学旅行の団体の生徒さん達がいた。どこの学校か知らないが、先生は偉い。
 トリの時点で椅子席は九割近く埋まり、桟敷も七割方はお客さんが入っていたように思う。

 まず、昼の部について、出演順に感想などを記す。

三遊亭歌実 漫談 (12分 *12:20~)
 初。五月に二ツ目になったばかりの、歌之介の二番弟子とのこと。警察官から落語界入りとは珍しい。明るい芸風は好感が持てる。名前の由来は鹿児島の出身高校。警察官時代の逸話や外人のネタなどで客席から笑いをとる。師匠は一度は入門を断るものだが、歌之介は初対面で即入門となったとのこと。薩摩ということでのことかな^^

柳家三語楼『転失気』 (13分)
 いかつい風貌のこの人は、前座名のバンビ、二ツ目の風車から、三年前の真打昇進を機にこの懐かしい名の四代目を襲名したのだが、風車の時に感じた、いわゆるフラがこの高座からは感じなかった。誰でも通る芸の曲がり角かもしれない。今後に期待しよう。

ひびきわたる 漫談 (14分)
 煙管ではなくフルートを持って登場。実家の両親をネタにして、
 「母は、味噌汁薄いが化粧は厚い、父は耳は遠いがトイレは近い」などで笑わせるが、この人自身が昭和17年生まれで、今年75歳。そう考えると、実に若々しい芸と言えるだろう。

古今亭志ん弥『無精床』 (14分)
 愛犬家の私としては、この噺はサゲ近くで犬の話がやや残酷で好きになれないのだが、そういう点を差っ引いても、楽しい高座と言える。
 床屋の主の「おい、小僧、生きた頭につかまりな」などの科白がなんとも言えず良い。焙烙(ほうろく)のケツで小僧(奴)が稽古、なんて言葉も、焙烙という道具、言葉が失われつつあるだけに、歴史や文化を残すためにも落語が大事であると思わせる。
 寄席で重要な役割を担う噺家さんの一人と言えるだろう。円菊一門は、人材が豊富だ。

五街道雲助『粗忽の釘』 (14分)
 久しぶりの雲助。間違ってお向かいに行った後、「落ち着いて」隣を訪ね、女房とのなれ初めを独演する場面が、やはり頗る可笑しい。八五郎が彼女の八ツ口から手を入れてくすぐる場面は、何度聴いても笑えるし、最後に「そこは脇の下じゃないわよ・・・てな具合で一緒になりました」が、いいんだよ。
 二階席の修学旅行生には、少し刺激が強すぎたかな^^

のだゆき 音楽パフォーマンス (13分)
 三年ぶりだが、自分のスタイルを確立しつつあるようだ。
 コンビニのチャイムや救急車のサイレンの真似などの後で頭で演奏するピアニカ(本人いわく、神-髪-業)、二本同時に吹くリコーダーなどの芸の技量も高いし、なんとも言えないゆる~い語りも、板についてきた、という感じ。
 メールで届く案内で、結構、いろんな噺家さんの落語会の助演として名前を目にすることが増えてきたような気がする。認められてきた、ということだろう。
 夫婦楽団ジキジキも好きだが、ピンのこの人も貴重な」存在になりそうだ。
 
吉原朝馬『源平盛衰記』 (14分)
 地噺でいろいろと自分なりのクスグリを入れることができる噺だが、今一つ遊びの少ない大人しい高座だった。
 途中で「いいくにつくろう鎌倉幕府」や「ふじさんろっくにおーむなく」、元素記号の覚え方などを挟み、「こんなもん覚えても、なんの役に立たない」が、この日二階の修学旅行の団体さんに一番受けていたかもしれない。

松旭斎美智・美登 奇術 (14分)
 この日は、和の衣装。
 キャンディのマジックで二個もいただいた。おもちゃのバドミントンのラケットでは二階は難しいか。

柳家小満ん『金魚の芸者』 (16分)
 仲入りはこの人。昼の部から駆けつけた理由の一つでもある。
 冒頭で「水中に牡丹崩るる金魚かな」(筏井竹の門作)をふってくれるあたりが、小満ん落語の楽しさ。
 初代円遊作の噺を小満んが復活したことは知っていたが、ようやく聴くことができた。
 狸の恩返しの金魚版、とでも言おうか。
 狸は札になったりサイコロになって恩返しするが、金魚は柳橋の芸者になる。
 置屋の面接では、小唄「並木駒形」を聴かせてくれる。
 ♪並木駒形花川戸 山谷堀からチョイトあがる~
 いいなぁ、こういう噺。

 -仲入り-
 
 一服し、席に戻ると、私が来る前から隣にお一人で座っていらっしゃった高齢(私より)の女性から、話しかけられた。よく寄席にいらっしゃる方で、昨日は鈴本だったらしい。「夜もお聴きになるのですか?」と訊ねたら、お帰りになるとのこと。なかなか、居続けする人(馬鹿?)はいないよねぇ^^
 鈴本でもらったプログラムを見せてくれたが、小ゑんが主任の昼の部だったようだ。川柳の名があったので「出てましたか?」と聞くと「えっ、お元気でした」との答えに安心。会場が暗くなり始まりそうなので、それ以上の会話はなかったが、またどこかでお会いしたものだ。

 さて、仲入り後。

桂文雀『虎の子』 (10分)
 クイツキのこの人は、随分久しぶりだ。ほぼ八年前、同じ末広亭で、真打ち昇進を翌年に控えた笑生時代に『八問答』という珍しい噺を聴いた。
2009年6月6日のブログ
 この日も、また珍しいネタを披露。
 後で調べると、上方の『真田山』を元にした噺らしい。
 毎夜お婆さんの幽霊が出て、上野すり鉢山の祠の下に、「虎の子の金」があるから掘り出して欲しい、と言う。気味が悪くなり仲間に話すと、「彰義隊の埋蔵金が埋まっていて、息子の代りに母親が頼みに来てるに違いない」と、上野へ。
 しかし、その場所を掘り返して出てきたのは、何かの骨。
 そこに幽霊登場。それは幽霊の寅さんの子の兼(かね)の骨、「虎の子の金」ではなく、「寅の子の兼」だった、という次第。
 『真田山』は、真田幸村が埋めた軍用金と間違うという筋。
 ネタ選びを含め、実に不思議な魅力のある人だ。

ペペ桜井 ギター漫談 (12分)
 声は若干かすれているが、十八番ネタをしっかり。
 昭和10年10月生まれ、今年82歳の得難い色物の芸人さんだ。まだまだ、高座で見て聴きたい人。

三遊亭歌る多『金明竹』 (15分)
 円歌一門は、とにかく皆、冗舌だ。この高座では、不思議な関西弁を話す人物が、道具屋の女将さんに、あの言い立てをもう一回と言われ、「わてはいいんですが、会場のお客さんが可哀想」とか「本当は四回やるんですが」などと挟む。
 自分なりの工夫とも言えるが、これは好みが分かれるだろう。
 私は、せっかく気持ち良く噺の世界に入っている流れが途切れるような気がして、いきなり素になってのクスグリは、あまり好きではない。

柳家はん治『妻の旅行』 (12分)
 後でメモを読んで、「えっ、あれ12分!?」と驚いた。
 三月の中席で初めて聴いたが、また笑った。
 大変なんだよ、妻と良好な関係をつくるのは^^

翁家社中 太神楽 (12分)
 小楽と和助。和助の土瓶の芸は、仙三郎に迫りつつあるのではなかろうか。
 だから、「寄席のxxxxxです」の役者の名を考えることだ^^

三遊亭歌奴『子は鎹』 (28分 *~16:32)
 四月にもこの場で『初天神』を聴いている。
 この人の清潔感は、ある意味で落語家として不似合かもしれないが、爽やかな高座は好感が持てる。
 いろんな型や工夫などもあって、筋書きは一門や人によって微妙に違うが、歌奴は、こうだった。
 ・八五郎が亀に出会うのは、番頭の仕掛け
 ・地主の倅に駒をぶつけられたと八に話した後、亀は泣く
 ・二人の側で聴いている八百屋は、出てこない
 ・亀と別れた後、八は番頭に礼を言う。こんな感じの会話
  八五郎 もう木場には行かなくていいんですね
  番 頭 さっしがいいなぁ、ばれちまったかい
  八五郎 おかげさまで、いい木口を見せていただきました
 ・かと言って、鰻屋の場面に、番頭は登場しない

 やはり、円歌一門は、冗舌だなぁ、とも思ったが、人物の演じ分け、丁寧な仕草、目と顔だけでの表情の巧みさ、など、歌彦時代からもずいぶん上手くなったと思う見事な高座だった。母親が玄能を持ったまま振り上げないのも結構。
 今年のマイベスト十席候補、とまではいかないが、今後もこの人の高座を聴きたくさせる好高座。


 さて、ようやく昼の部がはねた。

 志ん弥、雲助、小満ん、はん治など、芸達者の寄席ならではの高座が印象に残る。
 歌奴は、もう少し色気のようなものを醸し出せるようになると、凄い噺家になる潜在力があるように思う。

 夜の部は、次の記事までお待ちのほどを。

 やはり、いいね寄席は。


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Commented by saheizi-inokori at 2017-06-08 21:45
心地よい興奮が伝わってきます。
Commented by kogotokoubei at 2017-06-09 00:50
>佐平次さん

まさに、心地よい興奮でしたね。
夜の部も良かったですよ。
Commented by ほめ・く at 2017-06-09 11:53 x
昼の部の記事を読んだだけで満腹です。これから夜の部ってスゴイですね。
私は国立でノンビリ、ボンヤリと過ぎしました。入りはパラパラで、やはりお客は正直です。
Commented by tatehan at 2017-06-09 12:52
初めてお邪魔致します。
末廣亭のレポートを楽しく拝見しました。
十数年前には、毎年「寄席の日」になると末廣亭に昼夜通しで見物に行きましたが、最近では末廣亭へは年に数回だけ(八月中席には大抵、観に行きますが…)。
「寄席の日」になると、他の演芸場に行くことが多くなりました。
家族を介護する関係で、新宿からとなると帰りが遅くなるためで、人気のある若手の「深夜寄席」には、一度も行ったことはありません。
後半のレポートも楽しみに読ませていただきます。失礼!?
Commented by kogotokoubei at 2017-06-09 13:43
>tatehanさんへ

コメントありがとうございます。
まったく失礼なことはありません^^
私も、深夜寄席は行ったことがありません。

介護は大変ですね。
私の周辺にもご苦労させている方がいらっしゃいますが、とても落語など自分の時間が作れない状況の人も多いでしょう。
そういう中でも、年に数回とはいえ寄席で笑うのは、気分転換になることでしょうし、雲助のマクラではないですが、健康にも良いはず。
落語に限らず、いろんなことを書きなぐっていますが、今後も気軽にお立ち寄りください。
Commented by kogotokoubei at 2017-06-09 17:36
>ほめ・くさんへ

まだ、なんとか居続けする体力と気力は残っているようでした^^

国立の小里んは良かったようですね。
末廣亭も、もっと入るかなと思っていましたが、やはり平日ですからね。
小三治の下席は、平日でも二階が開き、週末には立ち見ができるでしょうけど。
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by kogotokoubei | 2017-06-08 15:18 | 落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛