噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

「大人」って、なんだろう・・・・・・。


 1月15日ではなく、“ハッピーマンデー”とやらの悪法(?)で、今日が成人の日。

 ここ数年、成人式が荒れる、というニュースが目立つ。
 一日早く昨日式典を実施した会場でも、ひと騒動あったようだ。

 還暦を過ぎ、ずいぶん前になった自分の二十歳の成人の日を思い起こす。

 大学で運動部に所属していて、いわゆるオフは遠征費稼ぎにアルバイトに明け暮れた。
 京都という土地柄、修学旅行生や観光客のお客さんで忙しかった、三条のある旅館でのアルバイトが長かった。

 あの成人の日にも、その旅館でアルバイトをしていた。
 
 そういえば、先輩アルバイトでその後は社員になった方には、卒業後その旅館に来ないかと誘われたなぁ。

 数年前、その旅館は廃業したということを知り、なんとも寂しい思いがしたものだ。

 二十歳のころ、自分なりに「大人とは何か?」を模索し、山口瞳の本を読んで、ジッポーのライターを持ったりしたものだ。

 形から入る、というやつ^^

 社会人になり、いわば地方の勤務地で長く務めたが、良い先輩に恵まれたこともあり、大人、あるいは“男”のあり方を学ぶことができたように思う。

 その当時、先輩の薦めで読んだ本がある。
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池波正太郎著『男の作法』

 池波正太郎の『男の作法』だ。
 昭和59年、新潮文庫の初版発行。
 二十代最後の年で、ちょうど転職を考えていた頃だった。

 池波正太郎が編集者たちとの旅行で語り合ったことが元になっている本。
 外で何かを食べる時のことなどを中心に、本来、大人の男がとるべき“作法”が、並んでいる。
 初めて読んだ時、「これこそ、大人の男のバイブル!」と感動しながら読んだものだ。

 今思うと、その当時の私は、実に生意気な男で、酒の席でも、この本から得た“作法”を会社の同僚などに無理やり“伝授”したものだ。

 例えば、次のようなこと。

ちゃんとした鮨屋は“通”ぶる客を軽蔑する

  (よく鮨屋で、飯におことをシャリと言ったり、生姜のことをガリ
   と言ったりする客がいますが、やっぱりああいうほうが、「通」
   なんでしょうか・・・・・・)

 いや、客がそういうことばを使って通ぶるのを喜ぶような鮨屋だったら駄目だね。ちゃんとした鮨屋だったら、客がそんなことを言ったらかえって軽蔑されちゃう。
 だからね、鮨屋へ行ったときはシャリだなんて言わないで普通に「ゴハン」と言えばいいんですよ。トロぐらいは、いま、どこでもそう言うんでしょうから「中トロください」と言えばいいけれども、ぼくらの時分はトロのところなんかでも、
「少し脂のところを・・・・・・」
 と、こういうふうに言ったものだよ。
 飯のことをシャリとか、箸のことをオテモトとか、醤油のことをムラサキとか、あるいはお茶のことをアガリとか、そういうことを言われたら、昔の本当の鮨屋だったらいやな顔をしたものです。それは鮨屋仲間の隠語なんだからね。お客が使うことはない。
 普通に、
「お茶をください」
 と言えば、鮨屋のほうでちゃんとしてくれる。だけど、いま、みんなそういうことを言うね。鮨屋に限らず、万事にそういう知ったかぶりが多い。


 今思うと、良き先輩の教えや、こういう本に巡り会う前の二十代、鮨屋で平気で「アガリください」なんて言っていた自分が、なんとも恥ずかしい^^

 あらためて「大人ってなに?」と問うなら、そういう恥や失敗の数々を積み重ねた“子供”時代の体験を、少しでもその後の人生に生かすことができるのが大人、なのかなぁ。

 あとは、“常識”と“非常識”の区別ができる、ということも大人の条件かもしれない。

 成人の日の残念なニュースに接して思うのは、「大人とは」「男とは」ということを、行動や言葉で示してくれる“大人”が周囲に少なくなった、ということだ。

 子供の頃、親以外にも、近所には親身になってくれる大人や、悪さをすると叱ってくれる怖いおじさんやおばさんがいたものだ。

 では、自分はあの頃出会ったような“大人”になれているのだろうか。

 まだまだ子供から大人になる途中のままでいるように思う。

 知ったかぶりから始まって、それがしっかりと身につけば良いのだろうが、まだまだ“形”だけのような気がする。

 たぶん、それは一生変わらないのだろう。

 大人になる、男になる、というのは、永遠に続く課題かもしれない。

 どうも、しっくりこない、1月15日ではない成人の日、こんなことを考えていた。


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Commented by ほめ・く at 2017-01-09 18:40 x
なぜ成人の日を毎年変えるんですかね。1月15日だから意味があるのに。
私の頃は成人式なんてものは無かったんですが、それでもこんな立派な(?)大人になりました。今では18歳から選挙権が得られ、20歳の成人式というのはますます意味が薄れています。
私の大人のマナーの先生は山口瞳でした。酒の飲み方など随分と勉強になりましたが、未だに出来の悪い生徒だと自覚しています。
Commented by saheizi-inokori at 2017-01-09 22:55
同感です。いつまでもこんな子供で困ったものだと思いつつ今日まできました。
ヘンに大人になるよりいいかと開き直ったりすることもありました。
Commented by 山茶花 at 2017-01-10 08:18 x
私は引っ越したので、成人式には行っていません。

ハッピーマンデー大きなお世話です。和歌山選出二階氏肝いりで始まった制度で、同じ自民党の中でも「廃止せよ」という議員もいますが、二階氏が道路族で旅行業協会の会長ですから。
http://www.anta.or.jp/anta/yakuin.html
http://www.nikai.jp/news/happy_monday.htm

15日は、小正月でもあるので意味があったのですがハッピーマンデーの所為でその意味も薄らぎました。でも小豆がゆは15日に炊いています。
Commented by kogotokoubei at 2017-01-10 08:54
>ほめ・くさんへ

新暦とはいえ、1月15日という日は替えるべきではなかったですね。

やはり、お手本は山口瞳でしたか。
お洒落でカッコ良かったなぁ。

酒の飲み方、外での食事の仕方、そういったことについて、今はあまりに無頓着ですね。

Commented by kogotokoubei at 2017-01-10 08:56
>佐平次さんへ

子どもの心を失わないことが、佐平次さんの大きな魅力!
ぜひ、今後もご指南のほどを願います。
Commented by kogotokoubei at 2017-01-10 08:58
>山茶花さんへ

替えていい祝日もあるかもしれませんが、1月15日はダメですよね。
果たしてハッピーマンデーでハッピーな人は誰なのか・・・・・・。

小豆がゆか・・・連れ合いにお願いしようかな^^
Commented by at 2017-01-11 06:54 x
大人になる、難しいですね。
見かけでは、俗に足元を見られるというので、靴はよいものを履くべし、と読んだことがあります。
山口瞳は、誰かがカゼ気味だと言ったら、「お大事に」というべきで、「私もだよ」というのは駄目だ、とどこかで書いていて虚をつかれました。
Commented by kogotokoubei at 2017-01-11 08:54
>福さんへ

山口瞳の本が社会人のバイブル的だった時代がありましたね。
飲食店やバーなどで、初めての客を品定めする材料が靴だ、と指摘されていたと思います。

池波の『男の作法』には、蕎麦屋での作法などもあり参考になります。
着物の着方なども裏技的なことを含め書かれているのですが、残念ながら着ませんからねぇ^^

いずれにしても、“大人”になるのは、難しいものです。
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by kogotokoubei | 2017-01-09 11:33 | 幸兵衛の独り言 | Comments(8)

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by 小言幸兵衛