噺の話

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初代談洲楼燕枝の『西海屋騒動』について。

 前回の記事で、三三の『嶋鵆沖白浪』に限らず、初代談洲楼燕枝の作品を現役の柳派の噺家さんに演ってもらいたい、と書いた。
 同記事にいただいたコメントで、柳家さん助が『西海屋騒動』の通しに挑戦しているとの情報をいただいた。

 先日の記事で、この噺のことに触れた。知ったきっかけは、六年前、紀尾井ホールで三三の嶋鵆に最初に出会った後で、初代燕枝のことに関心を抱き記事にした際に読んだ本だった。
2010年11月19日のブログ

 あらためて、暉峻康隆著『落語の年輪-江戸・明治篇-』から引用する。
暉峻康隆『落語の年輪-江戸・明治篇-』
 もともと彼は俳諧をたしなみ、仮名垣魯文に師事して戯号を“あら垣痴文”と称して狂文を作った。かつ芝居好きであったから、その交際の範囲も円朝と異なり、演劇関係が多く、また森田思軒、饗庭篁村、幸田露伴、久保田米僊、幸堂得知、須藤南翠、関根黙庵などという、いわゆる根岸派の文士と親交を結んでいた。
 したがって円朝にはおよばないにしても、演し物に工夫をこらし、佐原の喜三郎や海津長門の活躍する「島千鳥沖津白浪」(明治二十二年六月春木座上演)や、「水滸伝」の花和尚魯智深の件を翻案し、それに曲亭馬琴原作の「西海屋騒動」をとり合わせた「御所車花五郎」など、彼の苦心の作である。あるいはまた円朝の翻案物に対して、彼もまた『レ・ミゼラブル』を脚色した福地桜痴の「あはれ浮世」を人情咄として高座にかけたりしている。

 この書から、『御所車花五郎』の存在を知ったのだ。
 しかし、いただいたコメントでは、さん助の演目は『西海屋騒動』らしい。
 さて、馬琴の本を元にしたのか、それとも燕枝の創作に沿っているのか、疑問を抱いた。

 こういう時に頼りになるのが、円朝作品などでもお世話になる「はなしの名どころ」さんのサイトだ。

 期待通りに、関連した記事が見つかった。
「はなしの名どころ」さんサイトの該当ページ
 同サイトから引用する。
春風亭柳枝(3),唐土模様倭粋子,滑稽堂 (1883, 84)

 3代目春風亭柳枝[嘉永5~1900]は,初代柳亭(談洲楼)燕枝の弟子で,燕枝に代わり,柳派の頭取として一派を率いた.百花園の速記など20席あまりが復刻されており,没後,三芳屋から個人集『柳枝落語会』(1907)が出ている.「七面堂の詐偽」が他と重複しない噺.

 唐土模様倭粋子(からもようやまとすいこ) 速記本文 は,伊東専三編集.前後編の2冊.全34回,通しで73丁.登場人物の口絵1枚,挿絵32枚.伊東専三の序文.「怪談牡丹燈籠」出版よりも古く,速記ではない.談洲楼燕枝(1)の代表作で,『名人名演落語全集』 第1巻に,「西海屋騒動」の題で,導入部の速記とその後のあらすじが載っている.本作の出版よりも後,1897年に毎日新聞に連載したもの.「唐土模様倭粋子」は,その名の通り,「水滸伝」の登場人物名を取り入れている.花五郎改め魯心が花和尚魯智深,九紋龍新吉が九紋龍史進,黒船風理吉が黒旋風李逵,金髪挿のお蓮が潘金蓮,一丈背の小さんが一丈青扈三娘,林屋忠右衛門が林冲など.「西海屋騒動」では,この趣向はなくなっている.

 その『名人名演落語全集』にリンクすると、次のように説明されている。
62. 名人名演落語全集,10巻,立風書房 (1981~82)  ☆☆☆☆

 斎藤忠市郎・保田武宏・山本進・吉田章一編.時代ごとに明治から昭和末期までの範囲の速記を集成したもので,出典・解題が明記されており,表記法がしっかりしている.圓朝の全集未収録作品が載っている.戦後期の人選が,他の時期に比べて甘めではあるが,読者と同時代ということでやむないか.
 初代談洲楼燕枝の代表作「西海屋騒動」の速記は導入部までで,その後のあらすじが載っている.春風亭柳枝(3)が演じた「唐土模様倭粋子」で全部を読むことができる.「続噺柳糸筋」は,毎日与えられた三題噺を連作して新聞連載したもの.彰義隊の戦乱を背景に,御家人の近藤甚三郎が,堺の偽坊主,実は団五郎と組んで悪事を行う.庄屋の山田正作を殺し,息子の直次郎を色仕掛けでたぶらかした上,座敷牢に閉じ込めて殺そうとする.悪計を盗み聞きした忠僕清助が直次郎を救い出す.清助が捨てた子供が今の団五郎だとわかり,善にかえった団五郎と清助,直次郎は,近藤を討つ.

 なるほど、燕枝は『西海屋騒動』の名のままで演じていて、弟子の三代目柳枝が、先祖帰りし水滸伝の型で『唐土模様倭粋子』として演じた、ということか。

 暉峻さんの本にあるように、『御所車花五郎』という主人公の名を演題としたことがあるのかどうかは、もう少し調べてみる必要がある。

 水滸伝、そして馬琴を経由した噺、ますます興味が湧いてきた。
 さん助の高座、なんとか聴きたいものだ。


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Commented by りつこ at 2016-12-11 19:06 x
さん助さん「さん助ドッポ」というご自分の会で「西海屋騒動」を連続でかけてます。私のブログでも「さん助ドッポ」で検索していただくと今までの会でかけた内容を書いてますのでもしよろしければ。
毎回さん助さんの手書きで前回までのあらすじと人物相関図が配られます(笑)。
Commented by kogotokoubei at 2016-12-11 19:18
>りつこさんへ

お久しぶりです。
そうでしたか。
さっそく、りつこさんのブログ拝見します。

名の通った噺家さんばかり追っかけていると、さん助の貴重な挑戦などを見逃してしまいますね。
迂闊でした。

手書きのあらすじ、三三の真似かな^^
ぜひ、その高座も三三に迫ってもらいたいですね。
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by kogotokoubei | 2016-12-11 16:52 | 落語のネタ | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛