噺の話

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NHK新人落語大賞の放送を見て。


 昨夜、録画を観た。
 ネットのニュースなどで優勝者が桂雀太であることはすでに知っていたが、小痴楽がどこまで迫ったのかなどに興味があった。

 出演順に感想や私なりの10点満点の採点を記す。

春風亭ぴっかり☆『湯屋番』 
 文珍も指摘していたが、若旦那という“男”の視線で描かれた噺に
 あえて挑戦した、ということか。
 しかし、どうしても無理がある。彼女が権太楼いわく「かわいい」
 からこそなのだろうが、女性であることを忘れさせる高座とは言い難く、
 妄想で芸者と会話する場面も、女同志の掛け合いに思えてしまうのだ。
 前回の『反対俥』よりは高座そのものは良かったとは思うが、ネタ選び
 は工夫する余地ありだろう。
 私の採点は、8。

桂 雀太『代書』 
 楽しみにしていた人。
 代書屋にやって来た男の名が松本留五郎である。大師匠枝雀から師匠の
 雀三郎を経た、一門のネタ、ということだ。
 受賞決定後のインタビューで、師匠から教わったまま、と話していたのが、
 印象に残る。
 結構、二枚目だったなぁ。
 悪くはない・・・しかし疑いなく優勝という高座でもなかった。
 だから、意外な相手との決戦投票になったのだろう。
 私の採点は、最高点には届かないものの、9。

桂 三度『虹』 
 前回同様、冒頭に「お邪魔します」と言うのだが、これはやめて欲しい。
 虹の七色を擬人化するというアイデアは悪くはない。
 サゲで阪神タイガースを持ち出すのも、上方らしさがあると言えるだろう。
 前回よりは、漫談から落語に発展しつつあるのも感じた。
 採点は、8。

柳亭小痴楽『浮世床』 
 このネタは小咄のオムニバスと言えるので、具体的な内容は『浮世床-夢の逢瀬-』
 とでも書くのが正しいのだろう。あるいは「夢」だけでも通じるかな。
 悪くはないのだが、少し力が入り過ぎたかな、という印象。
 権太楼が指摘したように「一本調子」の感がぬぐえず、もう少し緩急をつけていたら、
 と悔やまれる。
 また、NHK、ということを考えると、ネタ選びがやや艶っぽ過ぎた感もあるし、
 サゲも下がかっているのが、審査結果に悪影響を与えたかもしれない。
 とはいえ、江戸っ子の威勢のいい語り口は聴いていて心地よい。
 最高点はつけられないが、私の採点は、9。

春風亭昇々『最終試験』 
 会場には、若い落語愛好家も多かったようで、受けてはいた。
 しかし、私は、この新作を高く評価する審査員の気持ちが分からない。
 好み、相性の問題でもあるが、その会社の社長の息子の採用面接における身振り、
 表情、語り口などは、ウケを狙って基本を崩し過ぎた、漫談の芸にしか思えない。
 採点は、7。


 私の採点では、全体に最高点10をつけたい人はいなかった。
 雀太と小痴楽が9で同点。どちらが優勝しても良い、という印象。

 しかし、次の審査員は、私には意外な採点をしていた。

<審査員>
桂文珍
柳家権太楼
近藤正臣
松倉久幸(浅草演芸ホール会長)
恩田雅和(天満天神繁盛亭支配人)
神津友好
井上啓輔(NHK制作本部エンターテインメント番組部部長)

 この七名の審査結果は、こうだった。

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 雀太、昇々が、ともに64点で決選投票。
 雀太に、文珍、近藤、恩田、井上の4名が投票し、昇々に挙げた権太楼、松倉、神津の3名を上回った。

 東京開催で、東京の三人が地の利を生かすことはできなかった。

 しかし、そもそも“地の利”などはなさそうだ。
 どこで開催されていようが、審査員の採点には、結構明白なバイヤスがかかっているように思う。

 今回の各審査員の採点で思うことを記す。

 前回の三度の採点でもそうだったが、文珍は、どうしても一門への採点が甘くなるような気がしてしょうがない。あの雀太より三度が上、という評価は疑問だ。
 小痴楽の10は結構なのだが、相手は雀太だろう・・・・・・。

 権太楼は、昨年の佐ん吉にも8をつけていたが、相変わらず上方本格派に辛いなぁ。また、小痴楽のみならず三度と昇々を10とは驚いた。何か政治的な背景でもあったのか。

 近藤正臣は、雀太が優勝、という意思表示が明確。それはそれで良いのだろう。

 松倉久幸は、相変わらず落語芸術協会応援団、という印象。昨年も鯉八のみ10だった。

 恩田雅和は、上方応援団は明白。松倉会長とこの人は、旗色があまりにも鮮明^^

 神津友好の今回の採点には、首をかしげる。なぜ、小痴楽が最低点の7なのか・・・・・・。

 NHKの井上という人の採点も、なぜ小痴楽がぴっかり☆同様に最低点の8なのか、私にはまったく理解できない。
 NHKの審査員は、昨年も実に不思議な採点だったことを思い出す。


 ということで、昨年と一昨年の審査結果を再掲する。

 昨年の審査員は、こうだった。
<2015年の審査員>
桂文珍
柳家権太楼
恩田雅和(天満天神繁盛亭支配人)
松倉久幸(浅草演芸ホール会長)
片岡鶴太郎
やまだりよこ(演芸ジャーナリスト)
山元浩昭(NHK大阪放送局制作部部長)

         ベ瓶   佐ん吉   鯉八   小痴楽   昇々
桂文珍     9    10     9     10     9  
柳家権太楼   8     8     8     10     7
恩田雅和    9    10     8      9     8
松倉久幸    9     9    10      9     9
片岡鶴太郎   9    9      10      9     9
やまだよりこ  9    10     9     10     8
山元浩昭    8    10     9      8    10
合計     61    66     63     65     60  

 ちなみに、私の採点は、ベ瓶 7、佐ん吉 10、鯉八 7、小痴楽 10、昇々 7、だった。


 一昨年は、こうだった。
<2014年の審査員>
桂米丸
桂文珍
松倉久幸(浅草演芸ホール会長)
恩田雅和(天満天神繁昌亭支配人)
山本一力
神津友好。
三溝雅和(NHK制作局エンターティンメント番組部部長)


 先に私の採点結果。
           昇吉  ベ瓶  三度  歌太郎 朝也
小言幸兵衛    9    8    7    8    9


 そして、審査員の採点結果。

        昇吉    ベ瓶    三度    歌太郎    朝也
桂米丸           8     8     8     8
桂文珍      8     8     9     9     9
松倉久幸      9     9     9     9     10
恩田雅和      9     9    10      9      9
山本一力       9     9     7    10      9
神津友好      9     8     8     7     10
三溝敬志      9     8     8     8     9
合  計    62    59    59     60     64   



 これだけ、東京応援団とか、上方応援団、また芸協応援団などの“旗色”がはっきりした人たちによる審査って、どう考えたらよいのだろう。

 今回は、今一つ飛び抜けた高座は見当たらなく、審査結果にも納得がいかない、やや残念な思いで観終わった。


 落語と漫才を分けて現在のような形式で表彰し始めての結果は、次のようになった。
-------------------------------------------------------------
        西             東
1994年                桂平治(→桂文治)
1995年                柳家三太楼(→三遊亭遊雀)
1996年                古今亭志ん次(→志ん馬)
1997年  桂宗助
1998年                柳家喬太郎
1999年  桂都んぼ(→米紫)
2000年                林家彦いち
2001年  桂三若
2002年                古今亭菊之丞
2003年                古今亭菊朗(菊志ん)
2004年  桂かい枝
2005年                立川志ら乃
2006年  笑福亭風喬
2007年  桂よね吉
2008年                三遊亭王楽
2009年                古今亭菊六(→文菊)
2010年                春風亭一之輔
2011年  桂まん我
2012年                桂宮治
2013年                鈴々舎馬るこ
2014年                春風亭朝也
2015年  桂佐ん吉
2016年  桂雀太
-------------------------------------------------------------
 
 来年は、どんな顔ぶれが出場するか分からないが、審査員はそろそろ刷新すべきではないかと強く思う。

 背中に東や西や一門、協会の看板がはっきり見える審査員や、その落語審美眼に疑問のある人は、そろそろ交替すべきだろう。

 とはいえ、審査員の審査をできる人ってぇのは、審査員より少ないのだろうなぁ。

 最後は、グチャグチャになって、お開き^^

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Commented by 山茶花 at 2016-10-31 21:10 x
昨日が放送だったのに録画をするのを忘れていました。(^_^;)

出かける事は前から決まっていたのですが、何故か録画予約をせずに出てしまった上、スマホなら外からでも録画予約できるのにそれすら忘れていました。

雀太さんが優勝だったんですね。何度か見ている噺家さんですから、出演するという事で「優勝したらいいな」と思っていました。上方噺家の優勝者、7名と米朝一門が多いですね。やはり基礎がしっかりしているからでしょうね。

「代書」は、以前に「城北にぎわい亭」という地域寄席で拝見しています。枝雀さんを彷彿とさせる芸に大笑いでした。コンテストでは緊張されたかもしれませんが、持ち味をしっかりと出す事が出来たのでしょう。
Commented by at 2016-11-01 06:53 x
小痴楽、よかったですよね。研究熱心だということも紹介されていました。
現代っコが古典を確り演じているという落差のイメージもいい。

権太楼の審査評が面白かった。
かわいいは3人いて、小朝、ぴっかり、(ここまでヨイショ)そしてわたし、ってどんだけすごい落とし噺なのか(笑)
小痴楽に江戸前の口調に就いて助言したとき、一瞬きっと厳しい目つきになったのを覚えています。
「真剣にきけよ、お前の為に言ってる」と語ったような気がしました。
Commented by kogotokoubei at 2016-11-01 08:56
>山茶花さんへ

あら、録画お忘れでしたか。
雀太は、無理に笑いを取ろうとしない姿勢が見てとれ、好感を持ちました。
彼の高座の前に昨年の優勝者佐ん吉のコメントが挿入され、その実力を証言していましたが、きっと仲が良いのでしょうね。
たしかに、上方の優勝者は米朝一門が多いなぁ。
人数も多いですが、粒揃いということもある。

さて、来年はいったいどうなるやら。
出演者のみならず、審査員の顔ぶれが気になります。
Commented by kogotokoubei at 2016-11-01 08:59
>福さんへ

小痴楽本人のツィッターを読んでも、権太楼の一言が深く胸に染み込んでいるように思えます。
芸熱心なんですね、彼は。
あえて、権ちゃんのぴっかり☆へのコメント「かわいい」の件は省きました。
小朝は権ちゃんがNHKの大賞を競い合って敗れた相手ですが、今は良い関係なのかもしれません。

とにかく審査員に疑問です。
Commented by ほめ・く at 2016-11-01 09:04 x
この番組、TV放映は見ずにいつも幸兵衛さんの記事を楽しみにしています。
先ず決勝に残った5人ですが、どうゆう基準で選んだのでしょうか。東京と上方から古典と新作を各一人ずつに、+アイドル系で5人という、いかにもNHKらしい選定です。
春風亭昇々『最終試験』、箸にも棒にもかからぬ駄作です。加えて、受け狙いがミエミエの高座。これに満点をつけた権太楼も眼が狂ってるしか思えません。他の審査員の採点も似たり寄ったり。
これではこの賞の権威が疑われます。
Commented by りつこ at 2016-11-01 09:21 x
好みの問題も大きいのでしょうが、もっとうまくて面白いニツ目がたくさんいるのになぁと思いながら見ていました。
こちらの大会、落語のうまさよりキャラクター重視なのかな。
審査員ももう少し辛口でもいいのに…。権太郎師匠なんか楽屋だったら絶対あんな点数付けないですよね(笑)。
Commented by kogotokoubei at 2016-11-01 12:13
>ほめ・くさんへ

おっしゃる通りで、私も出場者の人選にNHKの恣意的な姿勢を感じます。
予選を公開しないのは、そういった事情もあるのかもしれません。
「密室」「伏魔殿」という言葉がよぎります。
権太楼は、浅草演芸ホールの松倉会長に貸しをつくったのかなぁ、と思わないでもないです。
そうでなければ、昇々に10点はありえないような気がしています。
このままでは、この賞の権威は失墜ですね。
Commented by kogotokoubei at 2016-11-01 12:21
>りつこさんへ

おっしゃる通りで、まだまだたくさん出て欲しい二ツ目さんがいますね。
審査員の甘い採点や旗色の鮮明さには閉口します。

権太楼は、枝雀落語への強い思い入れがあるので、あまり弾けない雀太の高座には辛く、とにかく爆笑させようとする昇々を高く評価したのかなぁ、などとも思いますが、それにしても何か裏を感じさせる採点でした。

小痴楽の優勝、来年こそと思いますが、審査員次第だろうなぁ。
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by kogotokoubei | 2016-10-31 12:54 | テレビの落語 | Comments(8)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛