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産経の『米朝らくごの舞台裏』の書評について。

産経の『米朝らくごの舞台裏』の書評について。_e0337777_16000002.png

小佐田定雄著『米朝らくごの舞台裏』(ちくま新書)

 何度か取り上げている小佐田定雄さんの『米朝らくごの舞台裏』だが、ネットで産経に載った書評を発見した。

 まずは、引用する。
産経新聞の該当記事

2015.5.17 09:55更新
【書評】
『米朝らくごの舞台裏』小佐田定雄

若いころから桂米朝さんの落語研究会に参加していた落語作家が「精選40席」の演題を解説しながら、長年の間に見聞きしてきたエピソードを記す。芸に対する姿勢や人間性がわかる面白い話が満載だ。たとえば「たちぎれ線香」。この演目が大好きだった桂枝雀さんが聞いて感動のあまり〈泣きながら楽屋に入って来ると、衣装を脱ぎ捨てた米朝師が大きな声で、「わしの親子丼、どこにあんねん!」と叫んでいる現場に出会(でく)わしてしまい、「さっきの涙を返してほしいわ」〉。作品それぞれにツボを押さえた説明がついているから落語通でなくても楽しめる。(ちくま新書・860円+税)

 この逸話は、私も印象深いので覚えている。

 しかし、短い書評の中で、この部分にだけ焦点を当てることには疑問を抱く。

 もし、この部分を引用するなら、この後に書かれている次の部分も紹介して欲しい。

噺の中に入り込んでしまう枝雀さんと、一定の距離を置いて演じる米朝師の違いである。

 この書評の文字数が短いのなら、中途半端に「親子丼」の部分を引用しない書き方もあっただろうと思う。


 大阪の‘サンケイホール’は、かつて米朝や一門の落語会の会場として、歴史的な名演を音源や映像として数多く残してくれている。

 産経新聞が、自民党の機関紙に近い存在になっていることには感心しないが、落語や大衆芸能に関しては、良い意味での伝統があるはずと思っていた。

 だから、この‘一発ギャグ’のような「親子丼」引用の言葉足らずの書評が、実に残念。

 実際に本を読まない方の、この引用部分のみを読むことによる誤解が、ちょっと心配だ。

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by kogotokoubei | 2015-05-17 17:08 | 落語の本 | Trackback | Comments(0)

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