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今年の出来事で連想する落語のネタ、など。

今年ももうじき暮れる。
 いろいろあった一年、世の中を騒がしたいくつかの出来事で、連想する落語のネタがある。

 今年の出来事と言えば、年明けから年末までの長い間、巷の話題であった「STAP細胞」騒動は、外せない。
 浮かんだネタは『文違い』
 オボちゃんを新宿遊郭のお杉にたとえるのは可愛そうとも思うが、結局は事実とは違う‘文’(論文)を書いたことには違いない。
 個人的には、検証実験の結果「STAP細胞、できました!」と発表するオボちゃんの笑顔を見たかったのだが。
 『文違い』では、お杉が金欲しさに、客の二人を騙し、間夫(まぶ)と慕う芳次郎のために、その金を貢ぐ。その芳次郎は眼病を治すのに金がいるとお杉に頼んだのだが、これが、芳次郎が惚れた花魁小筆の計略。最後には、小筆の手紙を見て、お杉も芳次郎の嘘に気付くのだが・・・・・・。
 オボちゃんを、お杉とするなら、お杉を騙す芳次郎は誰か。これが必ずしも簡単ではない。亡くなったあの教授が芳次郎とは、一概に言えないように思う。あの教授も、被害者の一人と言ってよいだろう。
 芳次郎は理研の責任者たちではないのか。理研という組織そのものが、特定法人の認定による補助金の獲得のために、オボちゃんを利用した、と言えなくもない。なぜなら、論文の偽装問題が発覚してから、理研の別の研究者が、論文の問題について詳細に指摘しているので、時間さえかければ、内部で検証できたわけだ。内部検証も行わず、拙速に発表して、割烹着やらリケジョやら、オボちゃんの話題性を含めてメディアも利用した理研の責任者たちは、罪をオボちゃん一人になすりつけて、自分たちは居座りをしている。問題発覚後の理研のオボちゃんへの態度には『突き落とし』に似た乱暴さを感じた。
 発表を焦らず、内部検証を重ねていれば、一人の若手研究者と、その指導者でノーベル賞受賞も噂されていた優秀な研究者を失うこともなかったのではあるまいか。
 もちろん、手のひら返しのマスコミにも、私は非があると思う。割烹着美女やらリケジョやらと囃し立てていたテレビや新聞や週刊誌が、その後は、彼女や周辺の人々を罪人扱いで取り上げた時、私は『品川心中』で、金の用立てができたと聞いてからの白木屋のお染を思い浮かべたものだ。あっさりと海に沈む貸本屋の金蔵を見捨てた豹変ぶりと似たものを、あの頃のメディアに感じたぞ。
 もちろん、オボちゃんにも非はあるが、その管理責任は理研にある。理研は大きな犠牲を払った騒動を十分に反省して、組織として再生しなければならないと思う。
 お杉がなじみの半七や田舎大尽の角蔵を騙すより、そのお杉が間夫(まぶ)と思っていたのに騙した芳次郎とその背後にいる花魁小筆の方が、ずっと悪党ではなかろうか。では、芳次郎を操った小筆は誰か・・・・・・。結構永田町や霞が関あたりに、いるような気がしてしょうがない^^

 次に、佐村河内のゴーストライター騒動。これは『干物箱』だなぁ。
 佐村河内が若旦那、新垣が貸本屋の善公。しかし、大きな違いは、事件後の二人の関係。若旦那と善公は、あの身代わり作戦がばれた後でも、一緒に吉原に繰り出す関係は続けるだろう。いや、前にもまして、結束(?)は強くなるかもしれない。佐村河内と新垣は、ヨリを戻すことは当面ありそうにない。

 さて、お次は、ファストフードの中国期限切れおよび危険食材の事件。
 中国の委託先工場で期限切れ鶏肉が使用されていたり、食材から大量の抗生物質が発見された事件だが、私はあの騒動で『てれすこ』を連想した。

 この噺のあらすじは、次のようなもの。
 
(1)ある漁村で、珍しい魚がとれた。漁師も名前が分からない。奉行所の役人も分からず、ついに、この魚の名が分かる者に百両の賞金が出ることになった
(2)多度屋茂兵衛という商人が、賞金に目がくらみ、「これは、てれすこ、という魚です」と申し出た。誰もその真偽を証明できないので、茂兵衛は賞金百両をせしめることに成功。
(3)どうも茂平兵衛は怪しいと思った役人、この魚を干物にして、ふたたび名前を知っている者に賞金百両、と高札を出した。計略とは知らない茂兵衛が奉行所に出向き、今度は、「これはステレンキョウと申します」と言ったので、役人は、不届者と茂兵衛を捕らえた。
(4)てれすこと言った魚を、次にはステレンキョウと言い賞金をだまし取ろうとした、として茂兵衛は打ち首を言い渡された。「妻子に一目合わせて欲しい」という茂兵衛の願いを聞き入れ、女房がやせ衰えた姿で乳飲み子を抱えて出頭。
(5)茂兵衛が女房に聞くと、亭主の救われるよう断食していたが、赤ん坊のお乳のために、そば粉を水で溶いたものをすすっていたとのこと。茂兵衛、「それほどわしの身を案じてくれていたか。もう思い残すことはない。子供が大きくなっても、決してイカの干したものをスルメと言わせてくれるな」と言った。
(6)それを聞いた役人、膝を打って、「多度屋茂平兵衛、言い訳相立った。無罪を申し渡す」と言った。首が飛ぶはずだった茂兵衛、スルメ一枚で命が助かった。助かるはずで、女房が火物(=干物)だちをしていたから。

 このように、頓智が命を救った、という話なのだが、なぜ中国鶏肉問題で、この噺を思い浮かべたか。
 まず、ファストフードで食べているものは、これまで自然界に存在した食材とは違う、謎の食べ物と言ってよいのである。 そして、その原料となる鶏肉などの仕入れ先を、今後中国の工場からタイなど別な国に替えたところで、それは、てれすこがステレンキョウになるだけではないか、と思ったのだ。
 もちろん、安全管理などの面で日本や海外のファストフードは今後は審査などを強化するのだろうけど、その食材が保存料や着色料などによる、自然界には存在しない‘謎’の食べ物であることには変わらないだろう。
 もし、コストダウンのための海外への委託を続けるならば、そのうち中国以外の国の工場でも、同様の問題は繰り返されるのではなかろうか。
 噺の本筋とは違うが、あの騒動でこのネタを思い浮かべた私は、元々、ファストフードのハンバーガーなどには、わけのわからないものが入っているから食べようとは思わない。いまだに、子供を連れてあのお店に行く若い主婦の気持ちが分からない。彼女たちには、「あなたたちは、てれすこ、あるいはステレンキョウを食べているんだよ」、と言っても、分かんねぇだろうなぁ^^

 さて、忘れられないのが、あの‘号泣議員’だ。うそ泣き、ということで『お茶汲み』というネタがあるが、松つぁんを騙す紫花魁は、泣いたふりをしてお茶の水を目につけるだけで、号泣ではない^^
 しかし、あの号泣には驚いた。あの人のブログは、県会議員を辞職する際の7月14日付けのお詫びの内容以降、更新されていない。その最後の記事の締めの言葉を引用。しかし、いまだにブログを閉鎖していないとは・・・・・・。
野々村竜太郎公式ブログ

最後に、子どものように号泣しましたのに加えて、政務活動費が議員活動全体に比較すれば小さいことと発言したことを含め、政務活動費収支報告も議員活動全体も同様に重要だと改めて表明すると共に、本当に誠に心からお詫び申し上げます。


 ‘本当に誠に心から’のお詫びの涙の端に、お茶がらがついているのを、世間は見逃さない^^
 また、全国の議員という議員が、彼に詫びてもらいたがっているのではなかろうか。彼があんなに大胆に嘘の費用を申告していたことが暴露されたために、大なり小なり政務調査費や活動費の‘やりくり’をしていた議員さん達への目が厳しくなったはずだ。「程度があるだろう。お前は馬鹿か!」と、多くの議員さん達は思っているに違いない。
 実は、号泣議員で私が真っ先に思い浮かべた落語は、三遊亭遊雀の『初天神』の金坊だった。号泣度合いは、金坊も某議員も、甲乙(?)つけがたいが、金坊は泣いた後で、その脅し(?)の効果よろしく団子などを獲得する。しかし、議員さんのお茶っ葉付きの涙では、何ら得るものはない。

 さて、そのお後は、アベノミクス。迷うことなく『花見酒』だ。
 消費税増税分は、法人税の減税を補うだけではないのか。介護報酬は減額されるし、消費税増税が本来の福祉の充実には使われていない。昭和62年に発行され話題を呼んだ笠信太郎の「"花見酒"の経済」は、今の日本の実態をも予言しているような気がしてならない。先日の衆院選では600億円余りの費用がかかったようだが、まったくの無駄遣いではなかったか。
 そして、今の世の中、落語のネタを題材にして経済を語るほどの洒落た人がいないのが、いちばん残念なことかもしれない。

 締め(?)は、現在進行形だが、サッカー日本代表のアギーレ監督八百長疑惑
 そもそも、この監督に決める前に、ワールドカップの惨敗について、日本サッカー協会の誰も責任をとっていない。反省の弁もなく、退任するザッケローニに罪をなすりつけようとしていたと思う。ワールドカップ開催中から、アギーレの名前がスペインから漏れてきていた。スペインでの八百長疑惑があることは、十分承知だったはずなのに、なぜ、あんなに拙速に、かつ、自分たちの責任は棚に上げて、日本サッカー協会の上の人たちはアギーレに決めたのか。
 日本サッカー協会と、理研には、次のような共通点がある。
 ・スケープゴートをつくり、罪をなすりつける
 ・上にたつ者が、失敗の責任をとらない
 日本サッカー協会は公益財団法人だから、税金が投入されている、ということとしっかり認識しているのか。
 会長や副会長、専務理事といった人たちは、まだ居座ろうとしているのだろうか。彼らはこの半年、どんな仕事で日本のサッカー界に貢献してきたのか。責任も取らず、反省もせず、新たな日本のサッカーが進むべき指針を示すこともせず、ただ混乱を招いただけではないか。
 『居残り佐平次』だって、追い出されるまでは、幇間のような芸を披露して客を楽しませたり、花魁たちの雑用係として役に立っていたのである。
 日本サッカー協会は、21日に行われた評議員会の後で、アギーレの釈明会見を行うと説明したようだが、真偽はともかく、彼が「八百長しました」と言うはずもない。日刊スポーツの該当記事
 今の日本サッカー協会幹部の心境は、もしかすると佐平次を追い出す際の廓の主人に似ているかもしれない。私は、報酬の残りやら違約金などを払ってでも、アギーレに辞めてもらうことになると読んでいる。疑惑の人に長くいてもらうわけにはいかないだろう。

 そして、こんな会話が交わされるのではないか。

 原専務理事「アギーレは、問題ない、八百長はしていない、と言ってましたが、やはり、
         おこわにかけられました」
 大仁会長  「なに、おこわにかけた!?」
 原専務理事「えぇ、会長の頭が、ごま塩ですから」(*日刊スポーツの記事をご参照)
 大仁会長  「何を言う、アギーレの八百長の方が、もっと灰色じゃないか!」


  なんとも締まらない‘アギーレかえる’サゲにて、失礼。
Commented by ほめ・く at 2014-12-22 19:18 x
まことに結構な「お見立て」です。
年末のマイベスト十席、楽しみにしています。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-12-22 21:22 x
いえいえ「見立て」などではなく、なんともみっともない地口のサゲで失礼しました。
現実の方が、落語のネタ以上に落語的なので、かないません^^

ほめ・くさんの今年の総括を楽しみにしています。
しかし、ついこの前、マッカーサーが来たと思ったのに、月日が流れるのが早いですね。

Commented by at 2014-12-26 18:47 x
いやあ、お見事ですね。
私も「鰻の幇間」で模索したんですが・・・
「長屋の花見」ならできそうかな。
お酒はおちゃけ、玉子焼きは沢庵、蒲鉾は大根、いや、これまた難しい。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-12-26 19:21 x
いえいえ、思いつきですので。
アギーレ問題、いつまで引っ張るつもりなのでしょうねぇ。
彼のギャラは、サッカーだけに週給にしてはどうかなぁ^^
またまた、失礼。

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by kogotokoubei | 2014-12-22 06:28 | 幸兵衛の独り言 | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛