噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

柳家さん喬の国際交流基金賞受賞で思う、国際化と英語や落語のこと。

落語協会のサイトでは、すでに案内されていたことだが、柳家さん喬が国際交流基金賞を受賞し、14日に授賞式があったことが、朝日新聞で紹介されていた。
落語協会サイトの該当ニュース

朝日新聞の該当記事

柳家さん喬さんに国際交流基金賞 落語家の受賞は初
山根由起子 2014年10月14日23時05分

 落語家の柳家さん喬さん(66)が、落語を通して国内外の日本語教育に継続的に取り組んだとして、2014年度国際交流基金賞を受けた。14日に東京都港区のホテルオークラ東京で授賞式があった。落語家の受賞は初めて。

 国際交流基金賞は1973年から始まり、日本と海外の相互理解の促進に長年にわたって貢献した個人や団体に贈られる。

 さん喬さんは2001年から筑波大の留学生に、落語会で日本語表現法や文化を教えてきた。06年からは毎年、米国のミドルベリー大学夏期日本語学校で落語公演や小噺(ばなし)指導をしている。米国、韓国、シンガポール、フランスなど7カ国で活動を広めている。

 式典で、さん喬さんは「落語や小噺から日本の文化、生活、美意識を分かって頂けるのではと考えるようになった。日本語を学ぶ人には落語は実践的な教材」と話した。人情噺を演じると日本語の学習者が涙を流して聞いてくれたことがあったとエピソードを披露した。

 「命のあらん限り、落語を通して日本語教育のお手伝いや日本文化の紹介が出来るよう努力させて頂くつもりです」とあいさつ、「副賞の300万円は日本語教育に生かしたい」と述べた。(山根由起子)


 ちなみに、この記事を書かれた山根記者は、先日紹介した、「神田連雀亭」に関する記事も書いた方。
2014年10月9日のブログ

 非常に嬉しい受賞だと思う。

 私は江戸時代至上主義者ではないが、江戸の文化は好きだ。農業など生活と密着した旧暦、太陰太陽暦も好きだ。
 
 そして、江戸時代を中心とする落語の世界は、日本人のみならず、海外で日本に興味のある方にとっても、重要な情報を含んでいると思う。

 日本の伝統文化や庶民の生活などを落語を通じて海外の方に伝えることは、日本の理解者、そして日本ファンを多くすることにつながる。
 日本の政府は、「グローバル」という言葉を連発しながら、アジアの隣人から嫌われることばかりやっているように思う。
 「グローバル化」のために小学校から英語教育をするなどいう間違った政策ではなく、小学校から落語を教育すべきではないかと思う。

 さん喬は、海外の方に日本語で落語を通じて日本と日本の文化を伝えることで評価されたが、日本語以外の言語で落語を伝える努力を続ける噺家さんもいる。

 かつては、桂枝雀の英語落語が有名。

 現役の噺家さんで英語落語の達人は、桂かい枝。「えいごらくご」サイトに紹介されているように、中学の英語の教科書に採用された。
「えいごらくご」サイト

 露の新治は中国語で演じる。2011年に上海の日本総領事館で演じたニュースが、INSIGHT CHINAに掲載されている。
INSIGHT CHINAサイトの該当記事

 多言語で落語をすることのできる噺家さんとして、五代目円楽門下の三遊亭竜楽がいる。六か国語を操るというのだから、凄い。
三遊亭竜楽HPのプロフィールのページ

 最近では、三遊亭兼好や春風亭一之輔が、ドイツを中心にヨーロッパ公演をしている。仲立ちをしているクララさんの存在が大きいと思う。素晴らしい文化交流である。

 日本語を勉強する人に日本語学習、日本文化の学習のために落語を教材にする活動も、海外の地で現地の方の言葉を使って落語を演じ、日本の落語という伝統芸能を紹介することも、どちらも大事な「国際的」な活動だと思う。

 重要なのことは、言語は、落語という内容(コンテンツ)を伝えるための、手段であるということだ。
 内容がなければ、伝える手段も意味がない。

 現在の政権は、この手段と目的をはき違えている。英語を学ぶことが目的化している。
 
 たしかに、英語は便利な道具かもしれない。アジアの隣人とも、英語で会話することができ易い状況ではある。

 しかし、その道具で何を伝えるのかが重要なのだ。

 もし、初対面の海外の方から、「日本の文化について教えてください」と聞かれたら、どう答えるのか。

 稲作文化、農作業と深く結びついている日本人の相互扶助の精神や、江戸幕府が開かれた後に上方からの人口大移動があったことや、火事が頻発したことなどを背景にした‘江戸っ子’気質など、語るべき「内容」を持たずして、道具である英語が使えても、会話は5分ともたないであろう。

 また、国際交流基金賞の表彰理由に、‘日本と海外の相互理解の促進’とあるように、一方的に自分のことを伝えるのが国際交流ではない。お互いを知る、そして認め合うことが、‘グローバル’な交流の基本だろう。

 日本の伝統芸能である落語を、そしてそこに描かれる伝統的な日本と日本人をうまく伝えることができたら、会話の相手から、ぜひ彼の地の文化についても学びたいものだ。

 まずは、日本を理解してもらえるための知識習得が、道具である英語の習得より重要である。

 だから、日本の政府が「国際化」を叫ぶのであれば、まず、小学校から英語ではなく、落語を教えてはどうか。

 そうでもしないと、「グローバル」化したはずの英語が上手な日本の若者が、近い将来、海外の方に日本のことを教わるようになるだろう。
 
 外国語という伝達手段の習得のためには目的が優先する、ということの良い例がある。
 NHKの朝ドラ「マッサン」で亀山エリーを演じるアメリカ人のシャーロット・ケイト・フォックスさんは、同番組のオーディションに挑戦し、合格してから日本語を学んだそうだ。それまで、日本に来たことも日本語を習ったこともないらしい。エリー役を務める、という目的のために、英語などよりもっと難しい言語の日本語を、あれほど上手に話すようになっている。それも、関西弁だよ。
 彼女の努力は、実際にマッサンの妻となったエリーの努力と重ね合って映る。彼女の存在によって、非常に説得力のあるドラマになっているように、私は思う。

 手段である英語は、自分の経験から、意欲、あるいは、差し迫った事情、そして集中特訓でなんとか伝わるレベルにはなる。問題は、その目的であり、言語に乗せる中身のはずだ。

 落語による国際交流、非常に結構なことだと思う。

 学校寄席は、あくまで課外授業的に行われているわけだが、落語を聴くことだけでもいいので、小学校の必須科目にすべきではないか。
 しかし、『寿限無』ばかりではなく、別な噺も演目にしてもらおう。廓噺も、高学年ならいいんじゃないの。『唐茄子屋政談』や『船徳』などは、道楽息子の行く末に関する戒めとなり、結構良い教材になるんじゃないかなぁ^^
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Commented by 佐平次 at 2014-10-17 10:40 x
学生時代、旅行ガイドをアルバイトにしようと思ってわざわざ英会話講座に入りました。
神道と仏教の説明のところで先生と議論になって退会してしまったのは惜しかった。
いい加減なガイドをしてほしくなかったのですねえ、愛国者としては^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-10-17 23:59 x
去年か二年前でしょうか、電車の広告で、「この国に足らないのは英語です」などというのを見ると、腹が立ってしょうがなかったですねぇ。
この国に足らないのは、そういう馬鹿なことを言わない知性だろう、と思ったものです。
きっと、思いは佐平次さんと相通じるものがあると思います。
英語産業は、手段だろうが目的だろうが構わないのでしょう。しかし、手段と目的の認識は、とても重要な問題だと思います。

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by kogotokoubei | 2014-10-15 07:41 | 幸兵衛の独り言 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛