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市場原理主義と戦争への反対を貫いた、宇沢弘文さんのご冥福を祈る。

宇沢弘文さんが、亡くなられた。47NEWSの該当記事

経済学者の宇沢弘文氏死去 理論経済第一人者、環境でも活動

 日本の理論経済学の第一人者で東大名誉教授の宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)氏が18日午前4時49分、肺炎のため東京都内の自宅で死去した。86歳。鳥取県出身。葬儀・告別式は近親者で執り行った。喪主は妻浩子(ひろこ)さん。

 経済成長のメカニズムに関する理論を確立し、「宇沢モデル」として世界的に知られた。1983年文化功労者、97年に文化勲章。

 行動する経済学者として有名で、環境問題でも積極的に活動した。成長重視の日本社会を批判し、自動車公害の構造を分析した「自動車の社会的費用」(74年)はロングセラーになった。成田空港問題では対話路線に導く調停役を務めた。

2014/09/26 10:21 【共同通信】



 昨年から今年にかけて、『社会的共通資本』や『経済学は人びとを幸福にできるか』の引用を中心に何度か記事を書いてきた。ご興味のある方はご覧のほどを。

2013年4月17日のブログ
2013年4月23日のブログ
2013年12月13日のブログ
2014年1月6日のブログ
2014年1月10日のブログ

 「TPPを考える国民会議」の代表世話人の一人でもあった宇沢さん。
「TPPを考える国民会議」サイトのメンバーのページ
 一貫して市場原理主義に反対してきた硬骨の経済学者だからこそ、多くのメンバーを束ねることができたのだろう。

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宇沢弘文著『経済学は人びとを幸福にできるか』(東洋経済新報社)

 以前も紹介したが、『経済学は人びとを幸福にできるか』から引用したい。

第二章から、講演後の質疑の内容を引用。

質問  たいへん貴重なお話、ありがとうございました。近年、日本でも
    グローバル化の影響、具体的には失業の増加や賃金の低下が
    議論になっています。その辺についてコメントをお願いします。
宇沢  グローバリズムという考え方自体が、じつは市場原理主義のいち
   ばん重要な武器だったわけです。
    つまり、市場原理主義というのは、法律を変えてでも儲ける機会を
   つくるということなんですね。それを貫くという考え方をグローバ
   リズムと言うわけです。それぞれの国は、歴史的な、慣行的ないろ
   いろな制度を、雇用でも、あるいは経済取引でももっております。
   それをいっさい無視し、いっさい取り払って、そして設ける機会をできる
   だけ大きくしようということです。これが市場原理主義の考え方です。
    市場原理主義は、これはフリードマンに代表されるんですけれども、
   (自由主義を守るためには)水素爆弾を使ってもいいということを
   大きな声で主張していました。それが『ニューヨーク・タイムズ』に出て、
   (フリードマンと同じシカゴ大学にいた)私たちは非常に迷惑したことも
   あるんです。



 このフリードマンの“水素爆弾”のことは、第一章の講演の中からご紹介しよう。

 話は戻りますけれども、64年に私はシカゴに戻りました。ちょうど大統領選挙の最中で、ジョンソン(民主党)とゴールドウォーター(共和党)の二人が争っていました。

 私がシカゴに着いたころ、ゴールドウォーターがヴェトナム戦争に水素爆弾を使えと主張したのですが、ミルトン・フリードマンがゴールドウォーターを弁護してこう言ったのです。ヴェトナムに水素爆弾を落とせば何百万人死ぬかわからない。しかし、それは自由主義を守るために当然だと。そのときフリードマンの言った有名な言葉が残っています。
 “One communist is too many!”(共産主義者なんぞ一人でも多すぎる)
 ゴールドウォーターやフリードマンの言う自由主義というのは、もっぱら企業の自由です。それを守るために何百万人の生命も惜しくない。このゴールドウォーターの主張に対して、アメリカだけでなく、世界中からきびしい非難と批判が起こった。ゴールドウォーターは政治家ですから、その主張を取り下げました。
 あるときフリードマンがゴールドウォーターの選挙陣営に呼ばれて、アドバイスをしたことがあります。帰ってくるなり、“Goldwater is the man.Compared with him, Richard Nixon is a communist.”(ゴールドウォーターこそリーダーにふさわしい。彼に比べればリチャード・ニクソンなど共産主義者のようなものだ)と言って歩いていました。私たちは(シカゴ大学の同僚として)ほんとうに恥ずかしい思いをしたものです。



 宇沢弘文さんは、市場原理主義のみならず、戦争への強い嫌悪感もあった。言い替えれば市場原理主義の延長線上にある戦争肯定主義への抵抗だった。

 また、宇沢さんは、教育について次のように指摘している。
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宇沢弘文著『社会的共通資本』(岩波新書)
 宇沢弘文著『社会的共通資本』(岩波新書、2000年初版)の「第4章 学校教育を考える」から引用したい。
 

教育とは何か 
 教育とは、一人一人の子どもがもっている多様な先天的、後天的資質をできるだけ生かし、その能力をできるだけ伸ばし、発展させ、実り多い、幸福な人生をおくることができる一人の人間として成長することをたすけるものである。そのとき、ある特定の国家的、宗教的、人種的、階級的、ないしは経済的イデオロギーにもとづいて子どもを教育するようなことがあってはならない。教育の目的はあくまでも、一人一人の子どもが立派な一人の社会的人間として成長して、個人的に幸福な、そして実り多い人生をおくることができるように成長することをたすけるものだからである。


 今、教育再生実行会議とやらがやろうとしていることは、著者が「あってはならない」と指摘する中の、“経済的イデオロギー”にもとづいて教育しようとする試みと言ってよいだろう。宇沢さんの主張は、道徳や英語の授業を国が押し付けることに真っ向から反対するものだ。

 86歳で旅立った、日本が誇れる経済学者の遺志を、残された者は継がなければならないと思う。

 合掌。
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by kogotokoubei | 2014-09-28 06:45 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)

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