噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

談笑の、「(日本は)胴乱の幸助になろう!」に、座布団三枚!

立川談笑が、日経に「知性派落語家、立川談笑のつぶやき」というコラムを掲載しているのだが、8月27日の内容は、なかなか結構だった。
(しかし、このタイトルは、いただけない。「立川談笑のつぶやき」だけでいいではないか)
日本経済新聞の該当コラム

 先日、露の新治で聴いた『胴乱の幸助』という上方落語を素材として、昨日紹介したばかりの日本国憲法の前文の一部が登場する。
 何かの縁(?)を感じ、紹介したい。

国際社会のニッポン 上方落語で考えたら…  立川談笑
2014/8/27 6:30
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 上方(大阪)落語の中で好きな演目が『胴乱の幸助』です。主人公は
脇目も振らず仕事一筋で財をなした幸助さん。町内の顔役ぶりを発揮
すべく、街をパトロールして喧嘩を見つけては仲裁をして回ります。
幸助さんの行動と、今の日本の姿とをつい見比べてしまうんですよ
ねぇ……。
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 「待て待て、待てーい!わしを誰やと思てんのじゃい」

 若い者を叱りつけ、料理屋で飲食させてやって仲直りさせる。

 話としては、このおじさんのただ酒を目当てに喧嘩を装った若者二人を交えたひと悶着(もんちゃく)があって、さらなるトラブルを解決するべく幸助さんは旅立つという内容です。

 ここに、なにがしかのヒントがあるような気がするんです。我々にとっての。「仲裁する能力」を私たちはもっと積極的に研究して身に付けるべきじゃないかと。そこで今回の話題はなんと、国際関係です。無茶かな?? 無茶だなあ。


 いやいや、無茶やないよ^^

 なかなか鋭い視点だと思う。続けよう。

 普通はまず、国家が当事者として一方的に身を守るために備えるのが「防衛」です。これに関しては古今東西あらゆる国が用心を怠りません。そこでの「防衛」行為の多くは隣国の軍事的脅威に対しての自衛でしょうし、あるいは自国内の反乱分子から国を守ることだったり。

 でも、これはとかく行き過ぎることがあるし、大義名分にされやすい。ほんの一歩違うと、「自衛の名を借りた侵略」になったり「国家維持をうたった少数民族虐待」になったりするところです。

 ええと念のためですが。このあたり、一般論として話をしています。具体的な国家を指しての、反省でも非難でもありません。微妙なところですが、関係者の方々にご迷惑はかけたくないので。なまじっかな軽口はたたかないつもりで言えるところまで言ってみる所存です。(↑うあー、っと。ここまでチェック。…うん、大丈夫。かもww)


 大丈夫だよ。関係者というのが、いわば権力者を指すのなら、それも結構。
 落語は江戸時代に侍社会を笑い飛ばすところにも庶民の支持があったわけで、現代の落語家だって、お上に向って言いたいこと言いましょう!

 「二本差しが怖くて焼き豆腐が食えるか、気のきいた鰻を見ろい!、五本も六本も刺してらあ。お前、そんな鰻を食ったことがあるかってんだ・・・・・・俺も久しく食ってねぇが」の精神だよ^^
 
 それでは、残り最後までをご紹介。

 改めて話を戻します。

 敵対する国家同士の横あいから、部外者として日本が割って入って仲裁する技術を備えたいとは思いませんか。

 たとえば。

 「おうおう、おう。待ちな待ちな。ここに仲裁に入ったこの俺が誰だと思ってやがる。よそさまの揉め事にしゃしゃり出るのもおこがましいが、国際渡世の義理だ。名乗ってやらあ。白地に赤く日の丸おっ立てて出張ってきたのは、ニッポンでいっ!」

 「くっそー。ニッポンが出しゃばってきやがった。面倒くせえ。あと少しだったのに」

 「ああ、ニッポンだ!ニッポンが来てくれた。助かったあ」

 「さあさあ、俺が来たからには争い事は許さねえぞ。ここまでの揉め事のあらかたは、すっかり飲み込み済みだ。どっちが正しいもないし、どっちが間違ってるもない。いや、同じように、どっちも正しいしどっちも間違ってる。おまえたちにゃ分からないだろうがな。まあ、そんなことはどうでもいい。そっちもこっちも砲撃やめろ。飛行機とばすな。車両も兵隊どもも下げろ。下げられないか。それなら現状のまま動くな。とにもかくにも、まずは落ち着いて話をしようじゃねえか」

 なんて。もちろんこれはただ私が言っているだけ。こんな仲裁ができるようになるには、具体的にどんなことをすればいいのか、国際的な信頼を得てなおかつ維持するには何が必要なのか。現状の日本は全然ダメなのか、はたまた実は案外いい線いってるのか。漠然としてよく分かりません。

 「平和」「戦争反対」という大切な理念に対応する具体的な方策や系統立てた理論は、はたして我々に備わっているのでしょうか。たとえば「貧乏は嫌だ」に対するならば、経営学、経済学、就職セミナーのようなものが充実しているのに。日本の大学に「平和学科」なんてないのかな。もしもあるのなら、私が知らないだけのことです。残念。

 ということで、今回のネタ元はこれ↓

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」(日本国憲法前文より抜粋)

 「胴乱の幸助」で入って憲法前文で終わる。これでいいのか? うん!これで、いいのだ。



 これでいいのだ、と私も思う。
 まるで、この一週間の私のブログの題材をなぞっていただいたようで、うれしいよ^^

 談笑は、新作派として人気もあり、志の輔・志らく・談春・談笑を「立川四天王」と呼ぶ人もいる。
 この人の新作は、古典の改作が中心。
 『壺算』の改作が『薄型テレビ算』、『居酒屋』の改作で『イラサリマケー』など。
 「古典の内容が現代では通じない」から改作、という考えには必ずしも同意できない面があるが、古典の精神を元に、状況を現代に置き換えて落語を楽しむお客さんの裾野を広げようという試み自体は悪くない。各作品の受容度も高く、誰でも出来ることではない。

 たしかに、頭は良さそうだ。問題意識も同意できる。

 “ええと念のためですが。このあたり、一般論として話をしています。具体的な国家を指しての、反省でも非難でもありません”とことわっているが、憲法の前文がネタ元なら、滅茶苦茶具体的に特定国家を指している^^

 日経という媒体の特性上、非常に気を遣っているようだが、談笑のコラムには、「日本は胴乱の幸助になろう」、という明確は思いがあるわけで、まったく同感だ。

 割木屋のおやっさん幸助は、丹波篠山から裸一貫で大阪に出て、一代で割木屋(薪屋さんのこと、炭なども扱う燃料店)を築いた人物。仕事一筋だったので、「呑む打つ買う」といった遊びは一切しない。唯一の趣味が喧嘩の仲裁。だから、浄瑠璃も聞いたことがなく、稽古家から『桂川連理柵(かつらがわ れんりのしがらみ)』、通称「お半長」での姑の嫁イジメの場面が聞こえてくるのを実際の出来事と早とちりして、船で京都まで仲裁に参じたわけだ。

 おやっさん、喧嘩の仲裁のためには、当事者に小料理屋で手打ちをさせ、ご馳走までする。子どもにだって饅頭を与え、犬には生節(鰹節)をふるまう。仲裁のための金は惜しまない。しかし、無駄な金は使わない。

 日本も、見習わなければいけないのではないか、幸助さんを。

 「お・も・て・な・し」でカジノなどつくる必要がありますか?
 オリンピックの後を考えず莫大な税金を投入して新国立競技場など必要ですか?

 そんなことに血税を費やすより、世界の、地球のために使って欲しいじゃないか。

 日本が胴乱の幸助のように、世界の喧嘩の仲裁役となるのは、非常に結構なことだ。

 あらゆる戦争や紛争(喧嘩)の場に、割木屋のおやっさん(日本)が登場したら手打ちせなあかん、という町(世界)の噂(通念、共通認識)が広まることは、この国を尊敬し、信頼する世界の友人を増やすことになる。

 まさか、日本の仲裁を期待して、芝居で戦争をする国もあるまい^^

 割木(薪)にしろ、炭にしろ、再生可能エネルギー。
 脱原発で、ドイツを見習ってエコエネルギー先進国になり技術的な指導者の役割を担い、世界の紛争においては勇気ある、そして信頼され尊敬される仲裁役を目指す。
 こういう展望があり、そのために使われるのなら税金を払う甲斐もあるというものだ。

 談笑は、ここまで書いているわけではないが、日本が「胴乱の幸助」になる、という発想は大いに同感。
 このコラムの内容に、座布団三枚!
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Commented by ほめ・く at 2014-08-29 18:51 x
志らくや談笑ら、立川流の噺家はマクラで時事問題を語る時がありますが、談笑のこれは良いですねぇ。さすが早大法学部、ダテじゃない。
『動乱の幸助(幸せを助ける)』ってぇとこですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-08-29 21:44 x
なるほど、「幸助」にもそんな深い意味があったんですね!
立川流以外では、白酒、兼好あたりでしょうか、反権力的なマクラを、たまに聴けるのは。
このコラムは、たまに読むのですが、今回は談笑を見直しました。

Commented by 明彦 at 2014-08-31 09:13 x
談笑師は1度しか見たことがありませんが、ちょっと縁があるので嬉しい記事を拝読出来ました。
家元と同い年の老母は「談志は自民党でアホなことをしていたし、慎太郎と仲よしの所が気に食わん」と申しておりますが・・・。
談四楼師匠はツイッターで現政権の横暴に対し憤っていますし、志らく師は護憲を訴えるドキュメンタリー映画に出ているようですし、一門が慎太郎と思想的に近い訳ではなさそうですね。
ちなみに噺の合間に「現憲法は押し付け」とよくやる上方の若手がいます。原則として見に行かないことにしていますが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-08-31 17:09 x
お久し振りです。
お母さんのお言葉に、座布団一枚です^^

立川流の噺家さんは、言うべきことは言う、ということに関しては、両協会の噺家さん達より自立しているかもしれませんね。

露の新治は、沖縄に行っているようですね。
あの方は、凄い。

少し間が空いておりますが、上方のことも、またいろいろと書きたいと思います。

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by kogotokoubei | 2014-08-29 00:47 | 幸兵衛の独り言 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛