噺の話

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山田洋次作、『頓馬の使者』について。

今月16日が、五代目柳家小さんの十三回忌であったため、新宿末広亭をはじめ、数多くの追善興行的な落語会があったが、明日30日の落語研究会も、そんな色合いが濃い番組になっている。
 
 “BS TBS”のサイトから引用。BS TBSサイトの「落語研究会」のページ

会 名:第551回落語研究会 
日 時:5月30日(金)18時開場 18時30分開演
会 場:三宅坂 国立劇場 小劇場   
番 組:「狸の鯉」台所鬼〆
    「道灌」 柳家喬之助
    「笠碁」 柳亭市馬
    「短命」 柳家權太樓
    「山田洋次作頓馬の使者」柳家さん喬


 小さんの孫弟子(花緑、さん喬の弟子)が二人、弟子が三人出演。
 
 私は行かないのだが、居残り会でお会いする落語愛好家の先輩達の何名かは隼町へ行かれるはず。

 トリのさん喬の噺は、山田洋次が小さんのために作った新作の一つ、『頓馬の使者』だ。

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 山田洋次の落語作品集『真二つ』には『頓馬の使者』も収録されている。単行本で大和書房から昭和51年に発行され、平成6年発行の新潮文庫版には、落語の他に著者と小さんとの対談なども収録されている。

 このブログでも小さん十三回忌特別シリーズ(?)を実施し、この本から対談部分を一部紹介した。2014年5月13日のブログ

 さて、この噺は決して易しくないなぁ。

 同じ山田洋次作で芸術祭奨励賞を受賞した『真二つ』のような劇的な要素が少なく、ほとんど八五郎と熊五郎との会話中心のネタ。それも、基本的には明るいネタとは言えない。だからこそ、噺家の力量が問われるネタとも言える。

 山田洋次新作落語第一作の『真二つ』のことを書く前に、流れのままに(?)、第二作のこの噺のことを書こうと思う。

 実際に落語研究会に行かれる方で、あえて筋書を知らずに聴きたい方は、これから先はネタバレ注意です。会の後でご覧のほどを。 ただし、原作のサゲは書きません。

----------------ここからネタバレ注意----------------

◇登場人物
 ご隠居、八五郎、熊五郎
 (『粗忽の使者』のように、侍は登場しませんよ)

◇あらすじ
(1)女房のおきくに首ったけの八五郎だが、出来心で女郎買いをしたことが露見し、
   おきくに家を追い出される。
(2)そのおきくが八五郎のいない間に、はやりの病(やまい)でぽっくり亡くなった。
   仲の良い熊五郎が八の居場所を知っているので報せに行くことになるのだが、
   ご隠居から、引き止められる。
(3)ご隠居が言うには、気が弱く、可愛がっていた猫が死んでも三日三晩寝込んだ
   八五郎に、いきなり惚れた女房が亡くなったことを知らせたら、気が狂うかその場
   でポックリいってしまうかもしれない。だから、充分に足慣らしをして遠回し
   に伝えろ、とのこと。
(4)八五郎に会った熊さん、できるだけ遠回しに伝えようとするが、ついうっかりバレ
   そうなことを口走る。結局、本当のことは言い切れない熊さんだが、八っあんは
   察して長屋へ一緒に戻る。
(5)隠居からおきくさんが亡くなったことを告げられた八っあん、おきくさんの遺体
   と対面。そして、サゲの一言・・・は内緒。

 とにかく八五郎と熊五郎との会話が中心。
 原作には、このような部分がある。八五郎のおきくさんへの惚れようが深いので、熊五郎がなんとかその気持ちを変えようと苦労する場面。

熊五郎 お前はおきくさんにちいと眼がくらみすぎる、あんな女なんてもなァその辺に掃いて捨てるほどいるんだ、ちっとも惜しかねえって・・・・・・判ってるよ、大きなお世話だってんだろ、そりゃ判ってるよ、でもな八公、お前を追ん出しといてそいで知らぬ顔の半兵衛てのは余りにひどすぎると思わないかい、俺ァ友達としてだな、あえて言うがあんな女にゃ手前の方から三下り半つきつけてやった方がいいんだぜ
八五郎 熊・・・・・・お前は何でそうおきくの悪口ばかり言うんだ・・・・・・お前、それを言いにわざわざここまでやって来たのかい
熊五郎 おう、そうとも、こういう言い難(にく)いことはな、友達の俺だから言えるんだぜ、他の奴にゃなかなか言えるもんじゃねえ、俺ァお前の眼をさましにやって来たんだ、たとえお前にうらまれたって、仕方がねえと思ってるよ、それがお前のためだと思うからこそ俺ァこういう嫌な役目を引き受けて、言いいたかねえ仏の悪口まで数々並べてるんじゃねえか」
八五郎 おい熊・・・・・・今何て言った・・・・・・仏と言ったな


 
 こういった二人の会話が、この噺の大きな聴かせどころになるだろう。

 熊五郎が隠居の忠告に従い、八五郎が女房の訃報で衝撃を受けないようにしようとするが、つい言ってはいけない言葉が出る。それを八五郎が問いただすと熊五郎が誤魔化そうとする、といった調子で続く二人の会話。

 作者と演者は、この噺について、こんな会話をしている。

小さん 第二弾で、『頓馬の使者』、これもよかった。このほうがむずかしいや、ちょいとね。
山田  あまり上手くいってないんですよ。上手くいってないから、むずかしいんじゃないですか。
小さん そんなことはない。そうねェ、心理描写がむずかしいン。筋立っているもんなら・・・・・・ね、『真二つ』みたいに順序よく筋立っているとねェ、演出は楽なんだ。だけど会話だけの噺がむずかしいン、うん。でもおもしろさからいったら、会話だけのほうが絶対おもしろいよね。



 たしかに、地噺の良さはあるとしても、落語の本来の魅力は会話だろうう。

 この噺、少し調べてみると小燕枝や喬太郎も演るようだ。

 さん喬の高座、八五郎と熊五郎との会話と心理描写、そして、サゲに込められた男の性(さが)(?)が最後に表現できれば、きっと楽しめるに違いない。

 実際にどうだったのかを、後日先輩達にお聴きするのが楽しみだ。

 ご興味のある方は、私の能書きなどより、小さんの高座を、ぜひ。マクラもいいんだよね。


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Commented by 佐平次 at 2014-05-29 10:20 x
明後日読みますね^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-05-29 10:25 x
すいません、つい書いてしまいました。
さん喬をお聴きになってからご確認ください。

Commented by 佐平次 at 2014-05-31 11:17 x
聴いてきました。
私は原作に問題ありと思いました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-05-31 11:35 x
噺自体が難しいですよね。
さん喬には合わないように思いました。
作者としても、小さんならばこそ、という思いではないでしょうか。
『真二つ』は後世に残して欲しい良い作品であると思います。

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by kogotokoubei | 2014-05-29 00:47 | 落語のネタ | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛