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JAL名人会 内幸町ホール 3月26日

一昨年の8月、この会で笑福亭松喬の『崇徳院』を聴くことができた。なんとかギリギリで生の高座に間に合った。昨年は松喬の弟子三喬の『まんじゅう怖い』を聴き、その感想を書いている途中で、松喬の訃報に接することになった。
2012年8月29日のブログ
2013年7月30日のブログ

 今回は、その三喬の弟子喬若が出演するようなので、何か縁を感じて期末で結構厳しい予定をやりくりし、内幸町ホールへ。

 次のような構成だった。良かった高座にをつけた。
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(開口一番 金原亭駒松『狸の札』)
笑福亭喬若  『禁酒関所』
三遊亭兼好  『近日息子』
三遊亭歌武蔵 『植木屋娘』
(仲入り)
ペペ櫻井   ギター漫談
桂 竹丸   『光秀の三日天下』
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金原亭駒松『狸の札』 (10分 *18:30~)
 初である。落語協会のサイトに入門時期が記載されていないが、他の前座さんの情報を踏まえると、2010年か2011年の入門と察する。大柄だし、清原に似ていないこともないが、薬はやっていないだろう^^
 携帯の注意で噛んでいたが、見かけによらず緊張していたか。ネタは元気はあるし、いわゆるフラを感じないこともないが、カミシモを含め、少し大雑把な印象。今後の精進に期待しよう。

笑福亭喬若『禁酒関所』 (24分)
 最近蓄膿症になって行った病院の逸話などマクラ約6分で本編へ。
 ややもすると下品になりかねないネタなのだが、そうならず、この噺の本来の可笑しみを引き出す、なかなか結構な高座だった。関所をなんとか突破しようとする酒屋の最初の「水カスティラ」、次の油、そして問題の三度目。役人の酔っ払い振りもなかなかのもの。
 1998年4月1日に三喬に入門しているので、もうじき満16年。東京なら真打昇進直後くらいの時期にあたるが、十分に東京の同世代と渡り合える器量を持っている。
 桂宮治が優勝した2012年のNHI新人演芸大賞で、私は彼の『長短』をテレビを見て高く評価した。あの時は、宮治の十八番『元犬』のパワーには負けた格好だが、あのネタをかける了見を含め、笑福亭の伝統を継承する一人として、着目した。
2012年11月4日のブログ

 お目当ての喬若のこの高座だけでも、木戸銭千円の価値は十分にあった。

三遊亭兼好『近日息子』 (28分)
 久し振りだ。マクラでは、ネットの時代になり、なぜか自分が薬屋で買い物をしたのを、他の人が知っている。兼好は「ツィッター」とは言わなかったが、そういうことだろう。自分はスマホも何か不安で使わず“パカパカ”を使っていると、これまた“ガラケー”とは言わなかったところが、なんとなくこの人らしい。私も“パカパカ”である。ドアを開けると自動的に便器の蓋が開き、用が済むと自動的に水を流し蓋が閉るトイレの話題から本編への流れは悪くなかった。
 こういう噺を聴くと、やはりこの人の実力の高さをあらためて感じる。父親から「もっと先を見ろ」「気を利かせろ」と叱られた与太郎が巻き起こす騒動がテンポよく語られる。大家の弔いを信じ切った店子一堂がくやみに行って目の前に本人を見た時の驚きふりなども、楽しい。
 そのうち人情噺も聴きたいと思うのだが、それはいつになることやら。しかし、滑稽噺での持ち味は失って欲しくないと思う、私は我がままな客だなぁ^^
 
三遊亭歌武蔵『植木屋娘』 (30分)
 JALの機内で放送されることもあって、御挨拶代りの、いつもの相撲ネタのマクラ。「只今の勝負~」から、現役時代のこと、そして鶴竜の横綱昇進という最新ニュースまで。定番のマクラについて、以前批判的なことを書いたのだが、すでに一つのネタになっている、ということかもしれない。この人しかできない、という意味では、円歌や歌之介の十八番と同様の存在になりつつあるのかもしれないなぁ。そんな気もした。
 本編は、以前にテレビで落語研究会の映像を見て感心したことがあるのだが、今回は、少しバタバタした印象。植木屋幸右衛門が娘お花と、近所の寺に世話になっている伝吉との二人の会話を塀の節穴から覗き込んで、早く伝吉がお花の手でも触らないか、と一人はしゃぐ場面は楽しいのだが、少しスピードを出し過ぎて制御が効かなかった、そんな印象だった。しかし、娘の名を本来のおみつからお花に替えてオリジナルのサゲを工夫するなど、上方落語に挑戦する姿勢、了見は高く買いたい。本日の勝負、同体で取り直し、ということろか。

ペペ櫻井 ギター漫談 (20分)
 この会は、寄席や落語会にはあまり足を運ぶことのないお客さんが毎度多いように思う。だから、結構笑いをとっていた。私が初めて聴いたのが、刑務所を慰問した際に披露したという童謡シリーズ。寄席の持ち時間ではやりにくいだろう。なかなか楽しい軽いブラックジョークが良かった。しかし、それにしても近くの席のご高齢の女性が笑っていたこと^^

桂竹丸『光秀の三日天下』 (24分 *~21:02)
 歌之介、白酒と同じ鹿児島の出身で、結構新作派として人気もあるようだが、今年の末広亭で聴いた漫談と同様、私には笑えなかった。薩摩ネタでの時代ものでは歌之介の『龍馬伝説』にかなわないということだろうか、明智光秀を題材にしたが、笑いどころが少なく、芯になるギャグも見当たらない。若干ダラダラと流れた感じだ。
 西郷隆盛ものの作品があるのかどうか知らないのだが、地元の人物を素材にして、歌之介にはない持ち味で対抗して欲しいと思う。話芸としてのツボはしっかり押さえていると思うので、もっとメリハリのある新作を聴いてみたい。


 喬若の生の高座を初めて聴けたこと、元気な兼好の高座で笑ったことを思えば、木戸銭分は十分に楽しめた。

 松喬、三喬、そして喬若と三年連続で聴けた。会場も落語には適している。ただし、都合が合ってチケットを獲得できる僥倖次第の会、でもある。

 帰宅は日付変更線の前だったが、録画しておいた「ごちそうさん」を見ながら寝酒をひっかけ、ネットで他の落語愛好家の方のブログなどを見ているうちに、上の瞼と下の瞼が仲良くなってきた。少しだけ記事を書き始めたのだが、続かなかった。
 昨日は高校野球が雨で中止だったが、喬若がマクラで「松坂大輔に似ていると言われますが、あっちが年下で松坂が私に似ているのです・・・(会場の笑い少なし)・・・アウェーですね」で笑いをとっていたが、それほど松坂には似ていないぞ。しかし、アウェーでもしっかりネタでは笑いをとっていた。自信をもって、また東上して欲しい。
Commented by ほめ・く at 2014-03-29 07:07 x
27日、何か予定があったはずと思いながら、その「何か」が思い付かず一日を終わってしまったのですが、「JAL名人会」だったのをいま気が付きました。ボケてまんな。
『禁酒関所』は大師匠松喬の十八番でしたね。あの酔っ払いぶりは天下一品でしたが、孫弟子にも受け継がれているようで嬉しいです。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-29 10:38 x
それは、「じぇじぇじぇ!」ですね。(古いなぁ)
松鶴から松喬、そして三喬につながり喬若へ、伝統の継承がしっかしできているように思います。
ぜひ内容はJALの機内でお聴きのほどを!

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by kogotokoubei | 2014-03-27 00:18 | 落語会 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛