“大使館カジノ”摘発で考える、さまざまなこと。
2014年 03月 20日
時事ドットコムの該当記事
ガーナ大使名義の部屋で賭博=容疑で日本人10人逮捕−大使聴取も要請・警視庁
駐日ガーナ大使名義で借りられた東京・渋谷の雑居ビルの一室で、バカラ賭博を開帳したとして、警視庁保安課などは19日までに、賭博開張図利容疑で、東京都板橋区宮本町の無職山野井裕之容疑者(35)ら日本人の男女10人を現行犯逮捕した。同容疑者は容疑を否認し、残る9人は認めているという。
この部屋は2012年9月に前駐日ガーナ大使が公邸で外交官の身分証を提示した上で契約し、その後現在の大使(55)に契約が引き継がれた。入り口には現大使の名前を書いたプレートが掲示されており、大使も来たことがあったという。
同課は外務省を通じ、現大使に任意の事情聴取に応じるよう協力を要請。大使らの賭博関与についても調べる。(2014/03/19-12:58)
大使館員によって契約されている住居でのご開帳が捜査されたのは、初めてではない。2005年にコートジボワールの外交官名義のビルの一室でも賭場が開かれていた。
日本経済新聞サイトの該当記事
賭博場提供容疑を否認 逮捕の元外交官
2010/5/26 12:18
2005年10月に警視庁が摘発した東京・南麻布のバカラ賭博事件で、自分名義で借りたビルの一室を提供したとして、警視庁が賭博開帳図利ほう助容疑で逮捕した元駐日コートジボワール大使館外交官が、「賭博場として提供したわけではない」と容疑を否認していることが26日分かった。
同庁組織犯罪対策特別捜査隊によると、逮捕されたのはヨザン・チャールズ・テリー容疑者(42)。同容疑者は06年3月末に出国していたが、今月22日に再入国した際、成田空港で逮捕された。同容疑者は入国目的を「家族に会いに来た」と話しているという。
映画『アウトレイジ』を思い出す。アフリカの小国の大使がやくざに脅されて大使館の地下がカジノとして使われる、という設定だったはずだ。この映画は2010年制作、コートジボワール外交官の件の後である。
江戸時代の賭場と言えば、大名江戸下屋敷、中間部屋を連想するなぁ。大名の江戸屋敷も、治外法権地区と言ってよく、屋敷の雑用を担う中間には、どこの馬の骨か分からない者も多く、お上の目が届かないことをいいことに頻繁に賭場が開帳されていた。なかでも有名なのが本所にあった細川若狭守の下屋敷。あの『文七元結』の本所達磨横丁に住む左官の長兵衛が、身ぐるみ剥がされて細川の尻切れ半纏ひとつで長屋に帰って来たことを思い出す。
同じ細川でも本家の熊本細川藩の下屋敷は、現在の港区の高輪と白金台にあった。
その港区には大使館が多い。
森ビルの入居者を会員とするeHills Clubが運営している「HILLS CLUB」という、六本木ヒルズ・赤坂・虎ノ門周辺のタウンガイドのサイトに、港区にある大使館の一覧が掲載されている。HILLS CLUBのサイト
なんと、高輪や西麻布、六本木や白金台などに約90の大使館がある。
これは、江戸時代に大名屋敷の多くが現在の港区にあったため、明治新政府が土地を没収し、“グローバル化”のために数多くの国の公使館を立てる土地にあてがったことが始まり、と下記のように港区のサイトにも書かれている。
港区サイトの該当ページ
はじまりは江戸時代(えどじだい)に置か(おか)れた最初(さいしょ)の外国公使館(こうしかん)
現在(げんざい)、日本には約(やく)140カ国(かこく)の大使館(たいしかん)があり、その約半数が港区(みなとく)にあります。
江戸時代末期(えどじだいまっき)に日本が世界(せかい)へ国際交流(こくさいこうりゅう)の門戸を開き(ひらき)、最初(さいしょ)の外国公使館(こうしかん)がアメリカは善福寺(ぜんぷくじ)に、イギリスは東禅寺(とうぜんじ)に、フランスは済海寺(さいかいじ)に、オランダは西応寺(さいおうじ)に置か(おか)れました。
明治維新(めいじいしん)後、政府(せいふ)は旧(きゅう)大名家から没収(ぼっしゅう)していた屋敷(やしき)の跡地(あとち)を大使館用地として各国(かっこく)に提供(ていきょう)しました。このような経緯(けいい)により、大名屋敷が多くあった港区に大使館が集まっ(あつまっ)たのです。
現在多くの外国大使館が港区に置かれているのも、こうした歴史的(れきしてき)な背景(はいけい)があるからでしょう。
こういう歴史的な背景から、次のような連立方程式(?)を考えてしまうのだ。
大名屋敷→治外法権→賭場
大名屋敷→大使館
大使館→治外法権→カジノ
大使館の建物そのものを使うか、大使館の誰かの名義になっている別の場所を使おうが、実態として、それは“大使館カジノ”と言ってよいだろう。
映画『アウトレイジ』が描いた世界は、決してフィクションではない。
大使館カジノは、どちらかと言うと貧乏な小国に金銭的な援助をやくざがすることで出来上がっているように思う。
しかし大使館カジノには、左官の長兵衛のような庶民の出入りは許されない。たとえば、某大企業の御曹司など、お金持ちが客の中心のはず。
だから、貧乏な国を利用して、日本の金持ちからテラ銭を巻き上げよう、という図式なのだと思う。
東京のカジノ構想は、石原→猪瀬ラインなら進んで行っただろうが、舛添が一から見直しをすると言っている。原発への取組みは不鮮明な部分もあるが、概ね、石原、猪瀬よりはマシな知事だと思っている。
猪瀬は、海外からの旅行者を増やすためのカジノ構想、などと言っていたが、そんなお題目は到底信じることができない。カジノ構想には、大きな利権がからんでいる。スロットマシーンなどのメーカーと政治家との癒着などが指摘されているし、お台場を本拠とする某テレビ局も一攫千金を目論んでいた。
東京都カジノ構想は、ヤクザと大使館との癒着と同様、あるいは、税金を投入すると言う意味では、もっと悪質な構造の上に成り立っていた。
本気で海外からの旅行者を増やそうとするなら、カジノなど必要ない。
谷中に「澤の屋」という旅館がある。業界でも有名な、宿泊客の九割が外国人旅行者の宿だ。東洋経済オンラインの昨年10月の記事から引用する。東洋経済オンラインの該当記事
日本の下町風情が色濃く残る、東京・台東区谷中。ここに外国人観光客が集まる旅館がある。
「澤の屋旅館」が外国人観光客の取り込みを始めたのは、今から30年以上も前。これまで欧米を中心に100カ国、延べ15万人に及ぶ外国人旅行者を受け入れてきた。現在も宿泊客の9割は外国人だ。1泊5040円は、素泊まりとしてそれほど安い価格ではない。部屋も和室のみ12室、4畳半~8畳の広さだ。その旅館になぜ外国人が押し寄せるのか。
どんなサービスが、外国人旅行者に評価されているのか。それは、あくまで“手づくり”のサービス。そして、日本ならではの伝統的な四季を体感してもらう演出だ。
澤さんが宿泊客に必ず渡すものとして、手書きの地図がある。根津神社や上野公園など観光地のほかに、旅館周辺の居酒屋やラーメン屋、コンビニ、銀行ATMなどが日英表記で書き込まれている。地図は50部ずつ印刷し、追加の情報を上から張り付けてまた印刷する。
正月には門松を飾り、獅子舞を披露する。桃の節句には雛人形、端午の節句には5月人形、菖蒲湯でもてなす。宿泊客にそれらを知らせる館内掲示も、すべて手作り。日時だけを張り替え、あとは毎年同じものを使っている。
澤さんは旅館周辺での行事やイベントを報じる新聞記事を切り取って保管している。花火や朝顔市……。「昨年はこんな行事が行われたんですよ」。写真付きの切り抜きを見せれば、言葉で説明するよりも、外国人客にも伝わりやすい。澤さんのスクラップブックにはこれまでの旅館周辺の歴史がぎっしり詰まっている。
「澤の屋」は、決して洋風の洒落たホテルではない。最大の売り物は「家族経営」である。しかし、その方針は、海外のホテルから学んだとのこと。
家族経営は売り物になる
旅館は澤さんと妻、息子夫婦で切り盛りする。「大きくせずに、家族経営のままやっていこうと決めている」(澤さん)。そう考えたのは、澤さんがたまたま見たベネチアのホテルのパンフレットがきっかけだった。その表紙を飾っていたのは、ホテルを経営する家族の写真。欧米では日本とは違って、家族経営が売り物になっている。
家族経営は業容拡大には不向きだが、顔の見えるサービスができる。「いつも同じ顔ぶれだからいい」。そう言って澤の屋を再び訪れる外国人客は少なくない。今ではおよそ3割がリピーターだ。
澤さんのところには、宿泊した外国人客から手紙が届く。2011年の東日本大震災後には、澤さん、そして日本を案じる手紙やメールが多数きた。「家族はみんな無事か」「また必ず日本に来たい」。こうしたコミュニケーションが生まれるのも、顔が見える家族経営ならでは言えるかもしれない。
外国人客は、いいお客
澤の屋の帳簿は、来年4月まで多くの予約で埋まっている。外国人客は旅行の予定を立てるのが早い。ちまたで言われるように、目先の為替動向で予約がキャンセルされることはほとんどない。「旅館にとって、こんなにいい客はいない」(澤さん)。
これまで2001年の米国同時多発テロの後も、08年のリーマンショックの後も、宿泊客は減らなかった。唯一、11年の福島原発の事故後はキャンセルがあり、同年の宿泊稼働率は約75%まで減少したが、翌12年にはまた回復している。
澤さんは次のように、日本にもっと海外からの旅行者を呼び寄せるためのヒントを語る。
澤さんはほかの旅館にも、外国人客をもっと積極的に取り込もうと呼びかける。「外に目を向ければ、まだまだ拡大の余地がある」(澤さん)。
ネットによって、世界各国から直接予約が入る。そして何も特別なことは必要ない。あくまで自然体で。それだけで多くの外国人客を呼ぶことが可能であると、澤さんのこれまでの足取りが物語っている。
カジノなどなくても、自然体で日本の姿を紹介すること、四季を体感してもらうこと、そのための手作りのサービスを実践することで旅行者は増える、という実践者からの言葉だ。
最後に「澤の屋」のサイトから、写真をお借りして掲載。
「澤の家」のサイト
サイトにある従業員の皆さんの写真
客室の写真
檜の風呂の写真
私も、「澤の屋」に泊って、谷根千をぐるっと回ってみたくなった。外人さんと一緒に回るなんてのも楽しいかもしれないしね。
あれ、何の話だったっけ。
大使館カジノから、こんなことまで思いが巡ってしまった。
東京五輪招致騒ぎ以来、流行語になった「おもてなし」という言葉を使うのが嫌になった。どうも嘘っぽくてねぇ。
広辞苑から。
もて-な・す【持て成す】
1.とりなす。処置する。
2.取り扱う。たいぐうする。
3.歓待する。ごちそうする。
平家物語(11)「御前へ召されまゐらせて、御引出物をたまはって—・され給ひしありさま」
4.面倒を見る。世話をする。
源氏(若紫)「そもそも女は人に—・されておとなにもなり給ふものなれば」
5.自分の身を処する。ふるまう。
6.取り上げて問題にする。もてはやす
7.そぶりをする。見せかける
日本語は難しい。同じ言葉でも、これだけ意味合いの違いがある。
滝川クリステルの「お・も・て・な・し」には、多分に「7」の“見せかけ”を感じる。
「澤の屋」が教えてくれるのは、「3」や「4」の“歓待する”や“世話をする”の意味での、もてなしのように思う。
カジノなどでできるのは、せいぜい「1」や「2」の“処置する”“取り扱う”、あるいは「7」の“そぶり”という次元の意味でしかない。
そして、私は、もしカジノに行きたくなっても、そんな金は“持て無し”である(お粗末)。