噺の話

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まだ聴いたことのないネタが、なんと多いことか。上方落語の奥は深い。

8日の豪雪の中で、“決死隊”の前で独演会を開き、来場の方を9月21日の独演会に招待するにとどまらず、私のように交通事情のため行けなかった人まで、9月の会に振り替えてくれるという、なんとも偉い、上方落語家の露の新治。
 ただし、下記のメールアドレスの、「露の新治東京事務局」に9月の会への振替え希望であることを連絡することが必要。2月8日のチケットさえあればOKとはお思いにならないように!
tsuyuno_shinji@yahoo.co.jp

 ご本人のサイトにある「日記」(「へらへら日記」)の記事で当日のこともよく分かるし、人柄やお客さんへの気配りも感じ取れるので、せっかくだから全文をご紹介しよう。
露の新治のサイト

「13年ぶりの大雪に、第3回 まいどおおきに露の新治です」(2014/2/9)

 第3回東京独演会「まいどおおきに新治です」は、大雪のため、一時は中止も考えましたが、中止を周知徹底することもできず、とりあえずはやると決め、カラオケボックスに集合、打ち合わせ、稽古をしました。「兵庫舟」、「七段目」ともに、はめものがいろいろ入ります。会場に着くと、周辺は凍りついた世界で、とても何かやれる雰囲気ではなかったのですが、なんとすでにお客様が開場を待ってはります。やるとかやらんとか迷っていた気持ちもふっ飛び、バタバタと準備。お客様はなんと80人ほどに。「この人ら、ちゃんと帰れるんやろか?」。落語の決死隊のような熱い方々のお気持ちに感激。なんと「当日券が2枚」出ました。あの吹雪の中、当日券ですよ。もちろん前売り料金で入って戴きました。
 開口一番は、私の「兵庫舟」。まくら無しで入ってしまい、サゲがわかるかどうか心配しましたが、なんとかやれました。以下「あくびの稽古」・笑助、「七段目」・新治、(お中入り)、「演歌」・岡大介、「柳田格之進」・新治。終演21:35。片付けて、打ち上げもせず立川に着いたら、午前1時。大変な一日になりました。
 しかし、東京の落語ファンと生野高校の同期の熱い支えにより「ほんまに、やってよかった」と思える落語会がやれました。「つばなれしたら、各自が一席やって、帰っていただこう」とか考えてましたが、お客様の「聞いてやろう」という熱い気持ちに腰が座り、前回より長くやる始末。私の落語を聞くために、あの大雪、吹雪を乗り越えて会場まで来てくださるお気持ち。落語家として本当にありがたい経験をしました。何べんもしたくはないですが、いい経験になりました。嬉しかったので、お礼の気持ちを形にしたいと「決死隊の皆様を、次回の寄席にご笑待」することにしました。やむを得ず来られなかった方には、「返金か次回ご笑待」を選んで戴きます。
 あの状況でやれてよかった、いい経験をさせて戴いたと感激した翌日、夜来の雪も止み、日本晴れ。お日差しが雪に映えてまばゆいばかり。そうなると「なんで一日、ずれてくれへんかってん」と、今度は悔しさが。まだまだ修行ができてません。願生ります!


 「ご笑待」という文字に、ご本人のうれしさが込められているように思う。“決死隊”80人もいらっしゃったんだ。凄い!

 ということで、露の新治へのお礼の意味(?)も込めて、彼の師匠の本について書きたい。

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*朝日カルチャーブックスの一冊として、昭和57(1982)年、大阪書籍より発行

 新治の師匠は二代目露の五郎兵衛である。最近、この人の『上方落語夜話』を読んだのだが、非常に良い本だった。『蛸芝居』について書いた時、初代桂文治について書かれた文章を紹介した。
2014年2月1日のブログ

 本書は、朝日カルチャーセンターで二時間づつ五回に渡って話した内容を元に、神戸のタウン誌『センター』に連載した記事、そして神戸新聞や京都民報、『上方芸能』に書いた内容などを補って整理した内容なのだが、上方落語を知る上で、非常に有益だった。

 第一章から第四章までは、自分の体験談も交え上方落語の歴史を説明しているが、第五章は趣が変わって「落語の楽しさ」となっている。

 この章の最後に「前座ばなし」「中ネタ」(中トリ級のネタ)「切ネタ」(トリ級のネタ)について、列記されているので、一部抜粋して紹介したい。
 著者いわく、「思いつくままに、ざっと書き出してみましょう」とのこと。この「ざっと」が決して少なくない。

 まず「前座ばなし」から。

前座ばなし
 東の旅 百人坊主 運付く酒 法会 鳥屋坊主 常太夫儀太夫 軽業 
 軽業講釈 京名所 煮売屋 瘤弁慶 明石船 走り餅 鯉津栄之助 
 小倉船 兵庫舟 これこれ博突 播州名所 七度狐 尼買 牛駆け 
 地獄八景 深山がくれ 宮巡り 牛の玉子 高宮川 矢橋船 桑名船 
 化け寺 宿屋敵 紀州飛脚 宿屋町 絵根問 歌根問 口合根問 
 商売根問 浮世根問 池田の猪買い


 掲載されていたネタ38席を全て並べてみた。
 前座噺に『東の旅』は有名だし、根問ものが多いのも知っていた。しかし、これだけ他に知らない噺が並ぶとは思わなかったなぁ。
 
 続けましょう。

中ネタ
 腕喰い 秋無い夢 無事の親 壷算 寄合酒 黒玉つぶし 鷺取り 
 延陽伯 子ほめ 蛇含草 しびんの花活 牛ほめ 貧乏花見 風の神送り 
 春雨茶屋 八五郎坊主 高倉狐 饅頭こわい 鉄砲勇助 餅屋問答 
 無精の代参 元犬 花色木綿 浮世床 道具屋 お玉牛 首の仕替
 犬の目 動物園 嫁々違い 天狗さし 向う附け 首屋 権助提灯 
 山号寺号 軒付け 宿替え オゴロモチ盗人 棒屋 鼻の上桂馬 蔵丁稚 
 疝気の虫 いかけ屋 茶漬幽霊 のぞき医者 写真の仇討 仏師屋盗人 
 首提灯 二十四孝 じがじが チリトテチン 高砂や 鼻捻じ 蛸坊主 
 豊竹屋 金玉茶屋 理屈按摩 さかさま蚊帳 日和違い 稲荷車 
 あくびの稽古 阿弥陀池 大和関所 初天神 稽古屋 三十石 愛宕山
 崇徳院 七段目 蛸芝居 菜刀息子 ごうち盗人 近日息子 酒の粕
 はったい棒打 三人癖 仁王 御太刀のツバ キライキライ坊主


 実は、これでも掲載されている224席のネタの三分の一ほどなのである。
 なんと知らない噺が多いことか。
 また、『子ほめ』『道具屋』『牛ほめ』『道具屋』などが、東京落語とは内容が少し違うとはいえ、前座ばなしではないということも意外だった。またもや、知らないネタが、多いこと。

切ネタ
 口合按摩 足上り 手切れ丁稚 代脈 胴乱の幸助 鬼の面 夢八 
 抜け雀 住吉駕 居候講釈 蜆売り 鹿政談 人形買い 鍬潟 
 親子茶屋 按摩炬燵 貝野村 不思議の御縁 船弁慶 寝床 網船 
 佐々木政談 吉野狐 猿後家 宇治の柴船 二番煎じ へっつい幽霊 
 後家馬子 禁酒関所 おすわどん ステレンキョ 子猫 片袖 
 慾のくまたか 次の御用日 質屋蔵 三方一両損 虱茶屋 応挙の幽霊 
 菊江仏壇 植木屋娘 堀川 市助酒 冬の遊び ざこ八 箒屋娘 後家殺し
 肝つぶし 土橋万歳 鬼あざみ清吉 百年目 煙草の火 子別れ 
 大丸屋騒動 雁風呂 三人兄弟 立ち切れ 千両みかん らくだ

 
 59席、すべて並べた。しっかり『大丸屋騒動』が入っているのが、なぜかうれしい。
 
 これらのネタが現在も高座によくかけられているのかどうかは、勉強不足で分からない。
 
 それにしても、知らないネタの多いこと。この本の発行は昭和57年である。三十年ほど前ではあるが、落語の長い歴史から考えれば、ついこの前のことだ。

 未体験のネタ、まだ上方では聴けるネタなのなら、ぜひ聴いてみたい。『じがじが』『キライキライ坊主』なんて、いったいどんな噺なのだろう^^

 『冬の遊び』は、『小沢昭一がめぐる 寄席の世界』の中で、米朝がスケールの大きい噺として紹介していることを、だいぶ前に書いた。残念ながら、まだ聴く機会がない。
2008年10月4日のブログ

 8日の新治の三席、『柳田格之進』を「切ネタ」とするならば、前座ばなしの『兵庫舟』、中ネタ『七段目』、そして切ネタの『柳田格之進』という三つを並べたことになる。流石である。

 新治の師匠露の五郎兵衛が「ざっと」思いつくまま並べた321席、なんと半分以上は聴いたことがないのだ。

 上方落語、まだまだ奥が深い。もっと聴かなきゃなぁ。
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Commented by 佐平次 at 2014-02-11 11:19 x
新治はん、タダ働きになっちゃいますね。
江戸っ子だなあ^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-02-11 15:25 x
そうなんですよね。
“決死隊”と我々行けなかった人、そして当日券などでどれほど席が埋まっていたか不明ですが、9月の会は、ほとんど持ち出しになるでしょう。
粋(すい)な、浪花っ子です!
ますます応援したくなりますなぁ。

Commented by 露の新治東京事務局 at 2014-02-12 12:11 x
記事をありがとうございます。
新治師匠はとても喜んでいらっしゃいました。
「今日来てくださったお客様たちは何事にも代えがたい。本当にありがたい!」と。
「天災という落語があって良かった」とも(^^)

ところで、振替には事務局へ連絡が必要な旨を記載いただけないでしょうか。
「2/8のチケットがあれば行ってもいいんだ!」と思われる方がいないとも限りませんので…。

また「チケットが振替券になる」ことも伏せていただけると助かります。

お手数おかけしますが、ご対応いただければ幸いです。
よろしくお願いします。

Commented by 露の新治東京事務局 at 2014-02-12 15:09 x
早速のご対応ありがとうございます。
お手数おかけしました。

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by kogotokoubei | 2014-02-11 07:12 | 上方落語 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛