人気ブログランキング | 話題のタグを見る

落語睦会 ~鯨のゼントルマン~ 国立演芸場 12月17日

横浜にぎわい座での開催には、昨年の九月に行っているが、国立演芸場の会は、なんと2010年9月以来となる。
2012年9月6日のブログ
2010年9月28日のブログ

 そんなにご無沙汰だったとは思わなかったが、それだけ間が空いたからこそ、この三人が揃う会が懐かしくなりチケットを入手したのかもしれない。
 昨年のにぎわい座は、やや期待はずれだったが、果たして今回はどうだろう、喜多八は元気なのだろうか、などの思いと、終演後の忘年居残り会も楽しみ(いや、こっちが主役か?!)に隼町へ。

 開演時では八分程度の入りだったように思うが、最終的には満席に近かった。

 次のような構成。
-----------------------------------
(開口一番 柳家ろべい『千早ふる・改作』)
瀧川鯉昇  『持参金』
(仲入り)
入船亭扇遊 『干物箱』
柳家喜多八 『うどん屋』
-----------------------------------

柳家ろべい『千早ふる・改作』 (21分 *18:30~)
 鯉昇か、あるいは他の誰かの楽屋入りが遅れたのだろうか、無駄に長いマクラで引っ張って、千早ふるの改作。
 理由の如何にかかわらず、小三治のお供をした盛岡でのわんこ蕎麦のことやら、自分の出身大学などを含む長すぎるマクラには閉口した。ニュートリノやカミオカンデなどを素材にした改作の中身も、あまり感心できなかった。会場には結構笑ってくれるお客さんや初落語と思しきお客さんも多かったようで、予想以上に笑いをとっていたが、私は半分寝そうになっていた。

瀧川鯉昇『持参金』 (41分 *マクラ18分)
 なんとマクラが18分・・・・・・。小三治でも最近はマクラが短いのに。富士山への登山、世界遺産のことや東京オリンピック、子供時代の海水浴などからようやく本編へ。
 上方の型に近いが、そこはこの人なので、改作されている。東京の古典の標準では不精な男の友人からの借金は五円だが、鯉昇の場合は現代に合わせているのだろう十万円。
 その不精男に甚兵衛さんが嫁の世話をしようとするが、相手の女性の主な特徴は次の通り。
 (1)年は男より五つ上 (2)器量は、悪い(イタミがきている) (3)背がスラっと、低い
 (4)色がクッキリと、黒い (5)おでこが出ていて、眉は上野の銅像の犬に似たドングリまなこ
 (6)普通の人は鼻の穴が地べたを向いているが、この女は景色の方を向いている

 といった具合。この女の“ちょっとした傷”が、八か月になる子供がお腹にいること。
 煙草を吸うのでヤニが眉にこびりついて黒くなっているから、雑踏でもすぐ見つかるという。この真っ直ぐつながった眉を手でサッと横切って現す仕草は、なんともこの人らしくて可笑しい。普通に歩いていても四股を踏んでいるようだ、など、鯉昇らしい形容も印象的ではあるが、なにせ長~いマクラとあまり変わらない時間でのネタなので、やや物足りない。実は、『味噌蔵』か『二番煎じ』、もしかして『芝浜』、かと期待していたので、肩すかし、という印象。マクラで風邪気味であると言っていたが、それにしても二人続いた長いマクラも含め、前半には不満を感じながら一階の喫煙室へ向かった。

入船亭扇遊『干物箱』 (32分)
 喜多八が、マクラで開演前に楽屋にいろんな人が来ていた中で、扇遊を訪ねたのは“まともな人”、鯉昇に会いに来たのは不動産屋っぽい人、などと言っていたが、「待ってました!」の声は、まともな人ご一行かと察する。
 連絡事項、として、ろべいも中途半端な言い方で紹介していたが、喜多八が本を出すことを案内。12月29日という暮れも押し迫った時の発行でタイトルは『喜多八膝栗毛 パート1』とのこと。
 会のタイトルがなぜ“鯨”かを説明したり、かつての川越での落語会と打上げでの逸話(鯉昇の奥さんとの出会を暴露)などの短いマクラから本編へ。
 前半のダル~い空気を一新してくれた高座と言って良いだろう。若旦那が吉原の馴染みの花魁に会いたいばかりに、自分の声色が上手い貸本屋の善公を身代わりにして家に帰らせるのだが、この善公が良かった。
 無事に若旦那の父親を自慢の声色で騙して二階の部屋に入った後、つい若旦那は今頃俥で吉原に向かっているなぁ、と思い一人芝居を始め、つい声が大きくなってしまい、階下の父親から「起きているなら聞くが、今日の無尽はどうなった」やら「貰った干物はどこにやった」などと問い詰められ四苦八苦する様が可笑しい。花魁から若旦那宛ての手紙に自分の悪口を発見して大きな声で「おれだって客じゃねぇか」など言ってしまって父親が二階へ。そしてサゲまで。少し声が上ずっていたのは、ご贔屓を前に気合が入り過ぎたせいかもしれないが、テンポの良い本寸法の高座、今年のマイベスト十席候補としたい。
 聴き終わって、たまたま隣同士の席になったI女史が「誰に教わったのかしらねぇ?」とおっしゃっていたが、たしかに扇橋でもなさそうだし、志ん朝でもないように思う。ちょっとした謎が残ったが、いずれにしてもハズレのない扇遊の“当たり!”と言って良い高座だった。

柳家喜多八『うどん屋』 (41分 *~21:04)
 楽屋の様子などを含め、この会は“ゆる~い”“大人の会”であって、無理に笑わせようとする会とは違う、と言ってから本のことへ。師匠小三治に“帯”の言葉を頼みに行った際の鈴本の楽屋での逸話を披露。
 いったんネタに入ったかのように、「ちょっとお前さん、起きておくれよ」と『芝浜』の冒頭を演るフリをして、「こういう噺はやりません」で会場は大爆笑。
 実際に演じたのは柳家伝統の冬のネタだが、酔っぱらいが、少し酔って(?)呂律が回らなさ過ぎ、の印象。終演後の居残り会でリーダーSさんが、「あれは師匠の型をいかに壊そうかというアンチテーゼだ!」とのご指摘があったが、なるほどそう思わないでもない。小さんから小三治に伝わってき型を、少しづつでも自分なりにい変えていこうとする、そんな意図を感じた。しかし、私は、酔っていながらも口跡のはっきりした高座が好きだなぁ。


 終演後は、待望の“忘年居残り会”である。地下鉄で新富町に向かい、東銀座の例のお店へ。駅から何度か道を間違えた先導役のYさんは、後から“落ち着けば一人前”なんだけどねぇ、と『粗忽の釘』の八のごとくにいじられてしまうのだった。新メンバーOさんも含む五人の忘年居残り会は、馬刺しやマテ貝に舌鼓を打ちながら落語談義に花が咲き、美少年の二合徳利が、さて何本空いたのやら。Yさんんが友人達の前で披露する落語のネタを何にするかで盛り上がっているうちに、あっと言う間に時は過ぎてお開き。帰宅の電車が渋谷通過時点で、すでに日付変更線を越えており、乗り継ぎの終電で一時過ぎての帰還となったのであった。

 喜多八の本は、東京音協の編集で発行は“まむかいブックスギャラリー”という会社のようだ。ご興味のある方は下記ご参照のほどを。
「まむかいブックスギャラリー」サイトの該当ページ

 「どこかで聴いているなぁ?」と思って後で調べたら、2011年1月の横浜にぎわい座での睦会でも扇遊の『干物箱』を聴いていた。しかし、その日は鯉昇の『二番煎じ』が圧巻だったので印象が薄くなったようだ。2011年1月12日のブログ

 なかなか、三人とも凄い、という日には巡り合わないようだが、それは贅沢な望みなのかもしれない。“ゆる~い”“大人の会”、一席でも見事な高座に出会えれば僥倖、と思うべきなのだろう。こちらも、もう少し“ゆる~い”気持ちで、この会には臨んだ方が良さそうである。
Commented by 彗風月 at 2013-12-18 15:12 x
昨日も有難うございました。喜多八師の顔色が良く、体調が戻っているように見えて安心しました。干物箱は、もともとそれほど面白い噺ではないと思っているのですが、昨夜は目からウロコの感がありました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-18 15:53 x
こちらこそ、ありがとうございます。
扇遊の『干物箱』は良かったですね。
喜多八は元気そうで安心しましたが、『うどん屋』は師匠とまだまだ差があります。
鯉昇は、体調万全の時に、あらためて聴いてみたいと思います。あの人の実力は、あんなもんじゃない。
次回も楽しみにしています。

Commented by 佐平次 at 2013-12-18 20:46 x
飲みすぎ、、でした。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-18 21:05 x
私もです^^
ついつい、落語の話を肴にいっちゃうんですよね。
でも、楽しかったですね!

Commented by 創塁パパ at 2013-12-23 10:36 x
八五郎は、本日落語がんばります(笑)

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-23 12:46 x
あの噺には八五郎は登場しないはずですが・・・頑張ってください。

名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2013-12-18 01:30 | 落語会 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛