噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

「男はつらいよ」などで光った得難い名優、すまけいを偲ぶ。

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*写真は事務所「J.CLIP」のサイトより。すまけい所属事務所「J.CLIP」サイトの該当ページ

 私の好きな役者、すまけいが亡くなった。
SANSPO.COMの該当記事

2013.12.9 12:44
すまけい氏死去「男はつらいよ」などに出演

 俳優のすまけい氏(本名・須磨啓)が7日午後5時36分、肝臓がんのため東京都新宿区の病院で死去した。78歳だった。葬儀・告別式は13日午前11時から東京都新宿区上落合の最勝寺で行う。喪主は妻の洋子(ようこ)さん。

 60年代に東京・新宿の小劇場で活躍。66年に「すまけいとその仲間」を結成、「ゴドーを待ちながら」などの舞台を手掛けた。85年に井上ひさしさんが座付き作家の劇団「こまつ座」の「日本人のへそ」に出演。「父と暮せば」などの井上作品や朗読劇「天切り松 闇がたり」で活躍した。

 「男はつらいよ」シリーズや「キネマの天地」などの山田洋次監督の映画や、テレビドラマにも出演した。(共同)

山田洋次監督の話「寛容で温かくてユーモラスで、こんな大人がいてほしいと日本人なら誰もが思うような人間像をつくり出してきた、実にたぐいまれな役者でした。これからの日本でこそ大活躍してほしかったのに、悔しくてなりません」



 私は芝居は見たことがないが、映画「男はつらいよ」は全48作見ているので、昭和終盤から平成にかけて、すまけいの名演が懐かしい。

次の作品に出演している。
◇第37作 昭和61(1986)年12月封切り
「男はつらいよ 幸福の青い鳥」:芝居小屋の掃除夫役
◇第38作 昭和62(1987)年8月封切り
「男はつらいよ 知床慕情」:船長役
◇第39作 昭和62(1987)年12月封切り
「男はつらいよ 寅次郎物語」:船長役
◇第40作 昭和63(1988)年12月封切り
「男はつらいよ サラダ記念日」:病院院長役
*上映中に年号が平成に替わった。
◇第46作 平成5(1993)年12月封切り
「男はつらいよ 寅次郎の縁談」:花嫁行列の父親役
◇第47作 平成6(1994)年12月封切り
「男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様」:満男の会社の専務

 つい、懐かしさのあまり、「下町育ち」というホームページの中の「寅さん48景」から、各ポスターを含めて少しご紹介。
「下町育ち」サイトの「寅さん48景」

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 マドンナの志穂美悦子が、テレビドラマで共演した長淵剛と再び共演した映画。志穂美の最後の出演作。翌年、二人は結婚した。すでに付き合っていたのは知られていたので、やや見ながら嫉妬しないこともなかったなぁ。
 すまけいは、九州の芝居小屋の掃除夫として、最初の出演はチョイ役であった。
 
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 あの三船敏郎が獣医役。妻を亡くしてから何かと世話をかけているスナックのママ淡路恵子に惚れているのは、周囲も気づいているが、無口でシャイで頑固な獣医は、なかなか言い出せない。淡路が内地(新潟)へ行くということになり、寅の力(?)もあって、ようやく思いを伝える。離婚して戻ってきた獣医の娘の竹下景子が寅に悪い気はしていないのだが、寅は手紙を置いて立ち去る。
 スナックの客である船長役として、前作に比べてすまけいの存在感が大きくなった。

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 寅のテキ屋仲間が亡くなって一人息子秀吉が父の遺した言葉に従って柴又を訪ねてくる。秀吉と一緒に家を出た母親を探す旅に出る寅。宿で居合わせた秋吉久美子と熱を出した秀吉の看病をし、旅館の仲居からは夫婦と間違えられ、二人も夫婦のふりをするあたりが、艶っぽい場面。秀吉の母は志摩にいた。渡し船の船長役(また船長だ!)がすまけい。母親(五月みどり)と船長が寅を見送る場面が、すまと五月が所帯を持ったことを物語っていた。次第に、すまけいの出番も増え、役割も大きくなってきた作品。

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 この作品で、すまけいは、ついに(?)寅のマドンナを奪いそうな役をつとめる。小諸の女医役に三田佳子。その院長がすまけいだ。女医の姪役で短歌好きの三田寛子。小諸で二人の三田が短歌の話題をしているうちに、寅が「七五調ならいいんだろ」と啖呵売を立て板に水で語る場面が楽しい。ともに独り者の三田とすま院長が、その後一緒になりそうな余韻を残していた。

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 就職試験をことごとく落ちた満男が家を出た。寅は満男を探しに瀬戸内の島へ行く。満男が世話になっていた家は、島田正吾演ずる父と、神戸で料理屋を経営(実は、つぶれていた)する松坂慶子演ずる娘の二人暮らし。
 寅のいない時に、松坂が満男に寅にまんざらでもないような思いを伝えて・・・後はいつもの筋書き。
 すまけいは、花嫁行列で父親役として短い出演。

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 靴会社に就職した満男。その会社の専務として登場。満男がなかなか営業の仕事がうまく運ばないため、寅が、「物を売るってことは、こういうことなんだ」と商売のコツを伝授する場面が、滑稽でもありシリアスでもある。次作でこのシリーズがお開きとなったわけだ。

 この中で、あえて、すまけいの演技でもっとも好きな作品をあげるなら「知床慕情」かなぁ。三船敏郎と淡路惠子を相手に堂々の船長役でありスナックの客仲間の演技だった。

 画家の吉川孝昭さんのサイトにある「男はつらいよ 覚え書きノート」より、スナック「はまゆう」にて寅さんと談笑中の船長、すまけいさんの写真をお借りした。
「男はつらいよ 覚え書きノート」のサイト

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 つい、すまけいという俳優つながりで「男はつらいよ」を長々と語ってしまったが、私はあの映画大好きなのだ。
 Amazonで、吉村英夫著「へたな人生論より『寅さん』のひと言」にレビューも書いているので、ご興味のある方はご覧のほどを。吉村英夫著「へたな人生論より『寅さん』の人言」


 さて、寅さん以外、テレビドラマの中で私が最初にすまけいの存在感を印象づけられたのは、井上ひさし原作の『國語元年』だ。

 テレビドラマが放映された昭和60(1985)年の翌年から、こまつ座でも上演されているが、私はテレビドラマ版しか見ていない。

 明治初年に、いわゆる「標準語」(ドラマでは「全国共通はなしことば」)作成を命じられたと文部省官吏の苦闘と一家のドタバタを描いた作品。
 井上ひさしらしい、非常に良質なコメディと言ってよいのだろうが、その豪華なキャストをWikipediaからご紹介。
Wikipedia「國語元年」

---「國語元年」ドラマ版キャスト---

南郷清之輔:川谷拓三
大竹ふみ:石田えり
南郷光:ちあきなおみ
南郷重左衛門:浜村純
南郷重太郎:岡田二三
御田ちよ:島田歌穂
高橋たね:賀原夏子
広澤修一郎:大橋吾郎
江本大吉:松熊信義
裏辻芝亭公民:すまけい
築館弥平:名古屋章
若林虎三郎:佐藤慶
秋山加津:山岡久乃

 川谷とちあきなおみの夫婦も良かったし、父親役の薩摩隼人である浜村純も名演。また、車夫の名古屋章、泥棒役の佐藤慶も光っていたが、すまけい演ずる“怪しい国学者”が、このドラマに重要なアクセントをつけていた。

すまけいの役どころは、次のように紹介されている。

裏辻芝亭公民
京都の公家出身の国学者。全国統一話し言葉の作成を聞きつけて南郷家に押し掛け、居候している。お調子者で、居候の割に態度がでかく、清之輔以外の人達からは嫌われている(弥平からは思い切り怒られたことがある)。南郷家離散後、明治35年に西園寺公望邸の書生部屋で病死する。(舞台版では明治16年の大食い大会に江本太吉とともに出場し、急死した。)


 
 まさに、居候ながらお調子者でふてぶてしい役柄を見事に演じていた。

 あの、何とも言えない“ほんわか”した役者、すまけい、まだまだその演技を楽しみにしていた人だった。

 評価の高い芝居の演技は観ることはなかった。だから、アングラ芝居から観ている方と比べたら、私なんぞ役者すまけいを語る資格などないのかもしれない。しかし、その実力は「寅さん」などで、十分に推し量ることができる。好きな役者だった。

 合掌。
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Commented by 明彦 at 2013-12-10 06:43 x
二十年芝居から遠ざかって別の職業に就いていたすまさんを85年に呼び戻したのは、こまつ座でした・・・。
そして初演はすまさんのために書かれ、不自由な体になられてからも「何とかしてまたやりたい」と言われていたのは、今では多くの人が演じる二人芝居『父と暮せば』です。
斎藤とも子(最近反原発映画『朝日のあたる家』主演で健在ぶりと気概を見せました)とのCD(新潮社)を是非聴いて頂きたいと思います。
「病後のスタジオ録音」ですが、舞台版と同じスタッフに支えられ、迫力と臨場感たっぷりです。

私事ですが、十数年前『父と暮せば』の神戸公演を観て、会場からちょっと離れた飲み屋で「あれはすまけいしか出来ない」と喋りまくっていたら、
「ちょっと、すまけいすまけいって、すまけいは俺だよ」と声をかけられました。
緊張のあまりその後は何も言えませんでしたが、生涯の思い出です。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-10 09:58 x
寅さん出演も昭和60年のこまつ座以降ですから、井上ひさしとの縁は大きいのですね。

神戸の飲み屋さんでの思い出、凄いですね!

斉藤とも子、懐かしいなぁ。
NHKのブックレビューの番組をよく見たものです。
しかし、どうしてあの人と結婚したのでしょうか・・・・・・。まぁ、その後別れたけどね。

CD聴きます。

Commented by 佐平次 at 2013-12-10 10:25 x
あまりテレビドラマをみないのですが「國語元年」はたまたまつけたら始まって最後までみました。
楽しかったなあ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-10 12:05 x
あのドラマは面白かったですよね。
私の好きなテレビドラマでは、同じNHKの「天下御免」(山口崇が平賀源内役)と匹敵します。
もちろん原作、台本の良さが大事ですが、本と役者の両方が良かった傑作だったと思います。

Commented by 水カステラ at 2013-12-11 11:25 x
寅さんシリーズを全て観ている訳ではないので
迂闊には言えませんが、個人的には第二作目のミヤコ蝶々の出ていた作品が好きです。山崎努も良かったし、「とらや」のおいちゃん役はやっぱり森川信じゃなきゃなー....と思ってしまいます。
放禁用語っぽいのが寅さんの口から出てくる時代の方がやはりパワーがあり楽しかったです。
私の好きなアニージラルドがマドンナ役で出演してもらいたかった(冗談です)。

斉藤ともこ...。小生とほぼ同世代、NHK少年ドラマシリーズ懐かしい。別れたことは知りませんでした。
「天下御免」....主題歌作曲は山本直純、楽しい曲でした。このドラマ三遊亭円生が出ていたんですね.......記憶にありませんが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-11 14:00 x
大阪で母親役のミヤコ蝶々が旅館の女将だったのは、たしかに二作目の「続・男はつらいよ」です。
医者の役で山崎努も好演でした。

おいちゃんは森川信が八作目まで、九作目から十三作が松村達雄、その後松村は他の役でも登場していますね。十四作目から最後の四十八作までの最多出演が下條正巳なのですが、私も、出演数よりも印象的な演技で森川信が三人の中でベスト。実に懐かしいです。

「天下御免」で円生は泥棒長屋の隠居、北々斎の役でした。長屋の住人も名優揃い。
当時はテープが高価だったので何度も上書きして使っていたため、NHKには録画が残っていません。山口崇が個人的に所有していた第一回と最終回(後半はカット)の映像がアーカイブに収録されているのみ、というのが残念です。

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by kogotokoubei | 2013-12-09 19:34 | 幸兵衛の独り言 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛