噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

談春は、なぜ『妾馬』と『粗忽の使者』を組み合わせるのか・・・・・・。

 立川談春を聴かなくなって久しい。ほぼ二年前、2011年11月に新文芸坐での「看板と若手たち」と題した会での『庖丁』以来、聴いていない。
2011年11月3日のブログ

 一つの理由は、以前にも書いたが、3.11の直前に開催された成城ホールでの会における落胆がある。
2011年4月20日のブログ

 旧暦に興味のないような言い分や、披露した二席の組合せに、好感を持つことができなかった。

 さて、チケットぴあや、以前に落語会のアンケートに答えたことなどで、落語の案内メールが毎日多数送られてくる。もう来年3月、4月の会のチケットが販売されている。そんな先のことは、まだ分からないよぉ、と思いながら眺めている。
 その中で、来年1月開催の談春の会(よみうりホール)の案内もあり、主催のサンライズプロモーションのサイトを確認してたところ、ネタ出しされていた。『妾馬』と『粗忽の使者』である。
「サンライズプロモーション」サイトの該当ページ
 
 ここで、「はてな?」と思いネットでググってみたら、今年の一月に「ル テアトル銀座」での会と同じ二席だ。

 また、検索結果では、2010年5月の八王子、11月の浜松、2012年11月の千葉など、この二席の組合せが多い。

 「デリバリー談春」と題した全国各地での独演会の開催では、もちろん他のネタも披露しているようだが、『妾馬』と『粗忽の使者』の組合せに、私は違和感がある。

 同じ侍ものネタで、『妾馬』には赤井御門守の家来である田中三太夫が八五郎と頓珍漢な掛け合いを披露するし、『粗忽の使者』で物忘れの激しい地武太治部右衛門の相手をするのも田中三太夫だ。

 先日書いたが、“ツク”ネタへの感性が鋭い古今亭志ん輔ならば、間違いなく組み合わせない二席だろう。志ん輔の表現を借りるならば、侍言葉や登場人物など、この二席はツク“匂い”がプンプンする。
2013年11月13日のブログ

 なぜ、談春は、正月の大ホールの独演会で、二年連続でこの二席を選んだのか・・・・・・。

 そして、彼はこの二席を“ツク”ネタとして認識していないのか。そもそも、そんなことは論外なのか。

 堀井憲一郎著『青い空、白い雲、しゅーっという落語』に収録されたインタビューの中で、談春は次のようなことを言っている。堀井憲一郎著『青い空、白い雲、しゅーっという落語』
 人物描写とかね、情景描写とか性格付けとかそんな大きなところじゃないン。
強いて言えばね、聞いてて気持いいかどうかなんです。気持よくしてあげるポイント。
それは筋に関係ない。ここをこう押さえるとうまく聞こえるとこがあって、それは音とか流れなの。

 “筋に関係ない”という言葉に、“ツク”ネタを二席並べることを意に介しない彼の思いが現われているかもしれない。

 もし、談春が、ネタが“ツク”なんてことは寄席の世界の自主規制で、寄席に縁のない立川流には無関係、と思っているのなら、それは大間違いである。

 1000人を超える会場には、「また田中三太夫!?」「えっ、二席とも侍のネタ!?」と思う落語ファンも少なくないだろう。それこそ“聞いてて気持いい”とは言えない組合せではないだろうか。もちろん、そう思わないお客さんもいるだろうが、私なら決して“気持よく”聴いていることはできないだろう。
 
 志の輔ファンは「パルコで年が明ける」という方が多いらしいが、談春ファンは「『妾馬』と『粗忽の使者』で年が明ける」わけでもあるまい。

 ブログを書く直前2008年3月に麻生市民館で聴いた『紺屋高尾』と『文七元結』の二席や、2009年2月に同じ会場で聴いたマクラなしの『三軒長屋』(もう一席は長いマクラの後に短縮版『寝床』)は、いまだに忘れられない見事な高座だった。

 来年は一度は聴こう、と思っていたのだが、ちょっとその気が萎えた。

 間違いなく彼は上手い。それは疑いのないところなのだが、旧暦に対する無神経さやネタ選びへの気配りのなさが、どうしても私にとってマイナス要因になるのだ。

 ちなみに、2006年10月に開催された「談春七夜」のネタは次の通り。
  第一夜「粗忽の使者」「芝浜」
  第二夜「錦の袈裟」「除夜の雪」「夢金」
  第三夜「首提灯」「妾馬」
  第四夜「おしっくら」「たちきり」
  第五夜「桑名舟」「居残り佐平次」
  昼祭 「紙入れ」「木乃伊とり」
  第六夜「乳房榎~重信殺し」「棒鱈」
  第七夜「小猿七之助」「包丁」

 この中に“ツク”と思われる組合せは、私はないと思う。

 他にも持ちネタはたくさんある。二席とも「七夜」でも演じた十八番なのは分かるが、客が三太夫に会うのは一席で十分ではなかろうか。侍ネタの片方は廓のネタでも長屋のネタでも妾ものでも、あるいは得意の講釈ベースのネタでも良いだろう。

 「デリバリー談春」は、どこもチケット完売のようだが、さて来年、こんな思いのままで談春を聴きに行けるのかどうか。行くにはチケット入手の“ツキ”に恵まれなければならないが、ネタが“ツク”のは、勘弁願いたいものだ。
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Commented by at 2013-11-29 22:19 x
談春のこの組み合わせ多いですよね。
一席目に「粗忽の使者」、仲入り後に「妾馬」やるんですけど、「妾馬」の最後、「八五郎が士分にとりたてられまして、地武太治部右衛門と改名し…」ってサゲルんですよ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-11-30 07:39 x
貴重な情報ありがとうございます。
八五郎が治部右衛門に改名ですか・・・・・・。
相当、無理がありますね。
二席をつないだつもりなのでしょうが、八五郎は、あれほど物忘れをする人物ではないですから。
私には感心できないアイデアです。

Commented by ほめ・く at 2013-11-30 10:35 x
立川流の噺家は独演会が主体です。9割を敵に回しても1割の熱狂的ファンさえ掴んでおけば良いわけで、談春もそう割り切っているのでしょう。来たくないヤツは来るなと。
師匠もそうでしたからね。

Commented by mama at 2013-11-30 20:44 x
何度か通った談春でしたが、もういいやと思うようになったのは、傲慢さを感じてしまうからかな。ネタの組み合わせにしても、自分はこういうつもりですが、お客様はどう思いますか?という姿勢が(口に出なくても)伝わってくるのなら良いのだと思うんです。研究したりもがいたりする道筋もまた受けとめたいですから。でも、いつも「満席だ」「完売だ」ということを自分で自慢しているこの人は、噺と観客にもっと謙虚にならないと、もう成長しないように思います。自分はこんなことを考えてるんだ、こんなふうにできるんだという全てをさらけ出さないと気が済まない気質は、聴いている方が疲れますし。(悪口ではなくて、つくづく勿体ないと思うんです。)
シネマ落語「昭和の名人 六」、ご覧になりました?こういう噺が聴きたいんだよなあ、って思いました。「~七」は志ん朝の独演会スタイルだそうですよ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-01 16:08 x
ご指摘の通りなのでしょうね。
客に迎合することはないのでしょう。

私が、あえて一門の噺家に言わせてもらうなら、師匠は落語のみならず芸能全般についての非常に優れた“目利き”だった、ということ。
良いものは良い、と評価していました。
それが自らの芸にも生かされていたと思います。
そのように真摯に他人や他流派の芸に学ぶ姿勢が欠けているのであれば、今後の一層の成長は難しいと思います。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-12-01 16:17 x
お久し振りです。
私も、談春から受ける傲慢さが、彼を聴かなくなった理由の一つだと言えますねぇ。
本当に“もったいない”と思います。
今は“上手い”かもしれないですが、“凄い”までには達していない。
その域に成長するために、もっと謙虚な姿勢が欲しいと、勝手ながら思います。
「シネマ落語」は見たことがないんですよ。
顔ぶれを見ると、まさに昭和の名人たちですね。
平成の名人、と言われるのは果たして誰なのでしょうね。

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by kogotokoubei | 2013-11-29 07:46 | 落語のネタ | Comments(6)

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