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映画の喫煙シーンに抗議する、日本禁煙学会の不思議。

日本禁煙学会なる組織が、映画「風立ちぬ」の中での喫煙場面にいちゃもんをつけた。

 私は喫煙家である。分煙には大賛成。しかし、「禁煙」へのファッショ的な攻撃には賛成できない。たぶん、禁煙しても考えは変わらないと思う。

 下記に紹介する「愛煙家通信」が出したプレスリリースには、まったく同感である。
「愛煙家通信」サイトの該当ページ

[2013年8月16日]

プレスリリース全文公開

平成25年8月15日
喫煙文化研究会

映画「風立ちぬ」に対する日本禁煙学会のご要望についての見解

平成25年8月14日、日本禁煙学会様は現在公開中の映画「風立ちぬ」の中で、喫煙場面が「たばこ規制枠組み条約で禁止された、たばこの宣伝・広告に当たる」と指摘し、「法令を順守した映画制作をお願いする」との要望書を公表されました。

これに対し当喫煙文化研究会(すぎやまこういち代表)は以下の様に考えます。
 舞台になっている昭和10年代の喫煙率については、公式のデータがないが、
1950年のデータを引用すると、男性の84.5%が喫煙しており、当時の状況を再現するに当たっては極めて一般的な描写である。
 日本国憲法では、第21条に
1. 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
とあり、明確に表現の自由が認められています。
国際条約との優位性においては、現在「憲法優位説」が通説となっています。
 よって、表現の自由に対する「要望」は意味をなさないものです。
 自国の国民同士がいがみ合うことなく、喫煙者と非喫煙者が共生できる「分煙社会」を実現するべきと考えます。
以上



 まだ『風立ちぬ』は見ていないのだが、日本禁煙学会の要望書を取り上げたネットの内容で、この要望書が映画の演出上の重要場面のネタバレをしているのを増幅していたので、見る前に知ったことが残念でならない。

 映画における喫煙の場面で私が未だに忘れないのは、『約束』において岸惠子が吸うショートホープ(だったはず)の一服である。映画の筋書きなどは説明しないが、萩原健一が俳優として活躍するきっかけになった作品で、岸恵子が列車の通路で煙草を吸う場面は、実に印象的だった。未だに、もっとも美しい一服の映像と私は思っている。

 ほとんどの喫煙家は、煙草が健康を損なう危険性があることは承知で、ある意味自己責任で吸っている。分煙はすべきだが、有無を言わせず禁煙を強いたり、喫煙者が過半数の時代の映画の喫煙シーンにいちゃもんをつけることは、ある意味で暴力的な行動だと思っている。

 今回の要望に対する反応に対して、この学会はサイトに「見解」を掲載している。その一部を紹介したい。
「日本禁煙学会」サイトの該当ページ

9.今回の日本禁煙学会の要請を、表現の自由の侵害だと批判する向きがありますが、それはまとはずれです。「表現の自由の侵害」とは、強制権力を持った政府が市民の言論を抑圧することを指すものであり、強制権力のないNPO法人である日本禁煙学会が行う批判活動は、正当な市民的権利の行使に過ぎず、まったく表現の自由の侵害に当りません。 日本禁煙学会が、「風立ちぬ」の表現を批判することも、日本禁煙学会の「表現の自由」です。それは、このアニメの制作者の表現の自由を侵害していることにはなりません。論評や意見表明を行うことは、「対抗言論の原則」に基づいた「表現の自由」社会の現れなのです。

10.日本禁煙学会は、「風立ちぬ」の制作会社に限らず、今後映像作品を制作するすべての方々に対して、タバコ製品および喫煙シーンの露出が子どもと若者に与える影響を熟慮されるよう要望いたします。


 喫煙シーンが喫煙の動機づけになる可能性はあるかもしれないことは、否定はしない。しかし、その影響は、他のメディアにおける他の映像効果と比べ、どれほどの問題性を持つのか疑問だ。

 たとえば、アメリカではビールなどアルコール類を飲む場面のあるテレビCMの放送は禁止されている。それはアメリカでアルコール依存症が多いことが背景にある、いわゆる広告コードによる規制だ。
 しかし、映画で演出上必要な飲酒シーンをカットされることはない。もちろん過度に暴力場面が多い映画やセクシーなカットが多い映画は、視聴する年齢の制限はある。

 日本の若者は、映画よりもテレビを見る頻度の方が圧倒的に多いだろう。なぜ広告コードでアルコールのCMの規制をしないのか・・・・・・。飲料会社の広告費が減ったら広告業界もテレビ局も大変な打撃となるだろう。既得権の維持なのだ。

 それより問題は、ネット依存の方であることは間違いなかろう。若者のネット依存症への対策は果たして検討されているのだろうか。ネットのゲームなどで繰り広げられるバトルシーンの暴力性や、SNSにおける誹謗中傷などによる心理的な影響は、喫煙場面による影響の比ではなかろう。ネットから離れられないことによる心身両面の健康被害は決して小さな問題ではない。
 しかし、ネットのゲーム内容に関する“コード”って存在するの?
 SNSにおける倫理問題に対して、どこかの団体は行動しているの?
 
 ゲームソフト会社やスマホのCMって、広告業界やテレビ局にとって、今日では無視できないよねぇ。ここにも、経済の論理が優先している気がしてしょうがない。新たな時代のネット依存症による問題は、今後どんどん拡大する傾向にある。

 そして、長らく日本の産業界をリードしている業界にだって、いろいろ問題はある。自動車の排気ガス、食品添加物、そして放射能について、どれほどメディアや諸団体は批判的精神を発揮しているのか。

 日本禁煙学会の委員はお医者さんが多いようだが、排気ガス、食品添加物、そして放射能などの発癌性などについて、どのような見解をお持ちなのかお聞きしたいものだ。喫煙はそこに煙草を吸う主体的な個人がいる。排気ガス、ステルス的に存在する食品添加物、そして放射能は、個人の努力だけで防ぐのは難しい。


 さて、煙草は、酒と同じように長~い歴史をもった嗜好品であり、かつては呪術的な道具としても伝統的な文化の中に位置づけられていた。なぜに、他の危険性のある諸々に比べて、これだけファッショ的に非難されなくてはならないのか。

 「愛煙家通信」サイトにある、養老孟司の主張の一部も紹介したい。
「愛煙家通信」サイトの該当ページ

たばこは脳に溜め込んだ無秩序を清算する

 なぜ人はたばこを吸うのかというと、脳の研究者として私はこう考えている。
 仕事や勉強をするという行為は脳の中で「秩序を生み出す」行為である。秩序を生み出すにはエネルギーが必要で、エネルギーを消費するとエントロピーが増大し、無秩序が生み出される。つまり、無秩序は常に秩序と同じ量だけ生み出されるのである。人間は一日の三分の一は眠らないと生きていけないが、眠っている間に溜まった無秩序を清算してスッキリさせていると考えられる。たばこを一服するというのは睡眠と同じで、無秩序を少しだけ清算しているのだ。だから、たばこをやめれば別の方法で無秩序を解放する必要があり、そうしなければ溜め込むばかりになる。
 単に中毒というのではなく、何かメリットがなければ、こんなに多くの人々が吸い続けたりはしない。たばこは健康に悪いかもしれないが、メリットもたくさんある。だから、やめれば問題解決かといえば必ずしもそうとは言えない。
 先に日本では自殺が多いと書いたが、逆に他の先進国に比べて他殺率が低いのも特徴で、もし自殺防止運動が効果をあげて自殺率が下がると攻撃性が他者に向かい、殺人が増えるかもしれない。

融通の利かない原理主義の世界

 この世の中に一対一で「こうすればこうなる」という単純な図式で描けるものなどほとんどなく、想像もしなかったことが必ず起きる。禁煙運動が奏功し、日本人がたばこを吸わなくなれば、もしかしたら無秩序を溜め込んで、心の病になる人も増えるかもしれない。
 経済の側面から見れば、神奈川県では昨年、禁煙条例が施行されたが、零細な飲食店では分煙施設を導入できずに閉店に追い込まれるなど、莫大な経済的損失が起きているとも聞く。
 こういう融通の利かない社会というのは、まさに一神教の世界、原理主義の世界の話である。それもそのはず、禁煙キャンペーンは欧米のサルマネである。私はこういった欧米発のキャンペーンの類いには強い疑いをもっている。
 アル・ゴアの『不都合な真実』の前半は地球温暖化の話で、後半はなぜか禁煙の話だ。いったい何の関係があるのかと言えば、要するに反捕鯨、禁煙、地球温暖化の三つは同根なのだ。反捕鯨は日本を従属させ、禁煙は人類を喫煙者と非喫煙者の二つに分けて片方を葬り、地球温暖化は人類すべてにエネルギーを使うなと強要する。世論操作で何ができるか、徐々に対象を広げて実験をしているのだ。
 しかし、日本人は意外にルーズで常識的なので、お上がいかに世論操作の片棒を担いでも、適当なところで祈り合いをつけるだろう。私だって近くの人から「吸わないで」と言われれば控えるし、分煙に反対するつもりはない。喫煙者と非喫煙者が共存できる社会を作れると信じている。



 そうです。喫煙者と非喫煙者の共存を目指しましょう。酒だって過度に飲めば健康を害するのは明らか。しかし、上戸と下戸だって世の中で共存しているでしょう!
Commented by ほめ・く at 2013-08-20 11:10 x
やはり幸兵衛さんがこのテーマを採りあげましたか。
こんな事言い始めたら古典芸能は全て失格です。
第一、映画のこのシーンをみて俺もタバコを吸おうかと決心する人間なんている筈ないじゃありませんか。
もっと他にやるべき事があるでしょうに。

Commented by 佐平次 at 2013-08-20 14:15 x
厚労大臣の諮問委員会で「公共の場所における喫煙規制」について議論しているときに、途中で大きなケーキが出るのです。
これはメタボになるんじゃないか、と冷やかしたら禁煙派の学者たちが苦笑いしてましたっけ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-08-20 15:43 x
ご賛同ありがとうございます。
私が喫煙者だって、ばれてましたか?!
“取りやすいところから”と国鉄の借金を含め高額な税金を払いながら、禁煙ファッショにも苛められているのが愛煙家です。

時代劇で煙管で一服するシーンにも、この学会は「要望書」を出すのでしょうかねぇ^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-08-20 15:50 x
ケーキの糖分も怖いし、ダイエット飲料の人工甘味料も怖い。
実害がどれだけあるか別にして、分煙は必要です。共存できますよ。
しかし、先入観もあって、禁煙を主張する人を愛煙家が“煙にまく”のは難しい^^

Commented by フォーミディブル at 2013-08-20 17:36 x
こんにちは、

これ、私も変だと思いました。
アルコールのCMのほうが問題では?

実家のおばあちゃんが、タバコ屋をやっていたのに、
辞めざるを得なくなってしまったので黙っていられません。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-08-20 18:09 x
コメントありがとうございます。
残念ながら、町の煙草屋さんがどんどん減っていますよね。
養老さんが指摘するように、神奈川県の前知事の暴挙で影響を受けたお店も少なくないでしょう。
禁煙ファッショは、ある特定の嗜好を持つ人や、特定の嗜好品で生業を建てている人達へのイジメです。
喫煙者はどんどん減っているのに、肺癌になる人は減っていません。もちろん非喫煙者で肺癌になる方もたくさんいらっしゃる。
排気ガスや日常の放射能、薬品による被害、危険な食品添加物など、いくらでも他に危険なものがあります。
煙草が安全とは言いません。しかし、攻撃の対象は他にもあるでしょう、と言いたいですね。
この問題の根は深いと思います。

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by kogotokoubei | 2013-08-19 12:28 | 幸兵衛の独り言 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛