さん喬の芸術選奨受賞、菊之丞は新人賞・・・・・・おめでとう!
2013年 03月 13日
落語協会サイトの該当ページ
平成24年度芸術選奨
文化庁は、平成24年度(第63回)芸術選奨を発表いたしました。
文部科学大臣賞 大衆芸能部門で柳家さん喬が受賞いたしました。
文部科学大臣新人賞 大衆芸能部門で古今亭菊之丞が受賞いたしました。
贈呈式は、3月18日(月)如水会館にて行われます。
文化庁サイトのトップページから、受賞理由などを含む報道資料のPDFを読むことができる。
文化庁サイト・トップページ
さん喬の受賞理由。
まろやかな風味を感じさせる高座ぶりは、時に一転、涙を誘う迫真の演技となり、また飄々たる味わいの滑稽味を醸し出す。豊潤な芸の香りを、柳家さん喬氏は国立演芸場での国立名人会における「花見の仇討」や日本橋劇場での自身の独演会を舞台に「たちきり」「井戸の茶碗」などで遺憾なく発揮した。五代目柳家小
さん一門の高弟として弟子や後進たちの育成にも余念なく、芸の実りに加えての華と言えよう。落語界の明日を背負って立つ存在の一人として、その独演会の成果を高く評価したい。
「まろやかな風味」って、さん喬にふさわしい形容詞かなぁ。声の質は、たしかに“まろやか”かもしれないが、落語そのものの特長は、私は「くどさ」と「くささ」だと思う。これ、褒め言葉だよ^^
菊之丞の受賞理由。
「第7回古今亭菊之丞独演会」(平成24年10月)における二席の口演のうち、「芝浜」では、酒飲みの魚屋亭主の心境の変化が丁寧に語られ、その女房の表現では、従来も評価の高い女性の描写に一層磨きが掛かった。もう一席の「百川」では、江戸っ子を気負う魚河岸の若い衆と地方出身の奉公人との対照が、江戸弁と
地方なまりの使い分けを通じて活写された。氏の近年の進境の著しさを如実に示すものであった。その他、「景清」「たちきり」などの口演でも、古典落語の格調をいたずらに崩すことなく、基本に忠実に演じ、更なる発展の基礎を築いたことを賞したい。
こちらは、あまり小言を言う(重箱の隅をつつく^^)ネタがない。
去年、権太楼が受賞したので、順番でさん喬、ということか。審査員も“バランス感覚”を働かせたかな。
しかし、去年の権太楼の受賞にからんで、少し嫌な思い出がある。
発表後の3月16日に開催された新宿亭砥寄席に、権太楼が、市馬や平治(現、文治)と一緒に出演し、冒頭に、本来は、ある本の出版に関連しての対談のはずが、芸術選奨のことなどを含めた話題になった。その内容について、私は次のような小言を書いた。芸術選奨と芸術祭との違い、過去に芸術選奨を受賞した落語家の名なども書いているので、ご興味のある方はご参考のほどを。
2012年3月17日のブログ
幕が開き、パイプ椅子が並んでいたのを見て対談と分かったが、市馬が出てこない。司会役の瀧口氏の話では、まだ会場に着いていない、とのこと。理由はともかく、このへんから、この会は少しギクシャクし始めていた。
話題は、やはり権太楼の芸術選奨文部科学大臣賞受賞から。しかし、この賞は芸術祭賞と紛らわしくて、過去の落語家の受賞者という質問では、芸術祭賞の文楽、志ん生の名が混在してしまう。芸術選奨は、その人の一連の活動や作品が対象だが、芸術祭は、賞の評価対象として参加することを意思表示した特定の公演や作品の評価で決まる。
あらためて、落語協会で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した噺家を確認するが、協会HPの本件のニュースにあるように、六代目三遊亭圓生、八代目林家正蔵、古今亭志ん朝、柳家小三治。権太楼で五人目。二つの賞の違いや受賞者のことを、落語評論家の瀧口氏が説明できないのが、やや不思議であり不満であった。
対談開始10分後に市馬が登場。権太楼のリクエストで「達者でな」を唄う。このあたりから、私はこのプロローグを早く切り上げてもらい、肝腎な落語に時間を割いて欲しくなっていた。
それでも対談で印象に残ったことはある。権太楼が最初の師匠つばめ門下の“ほたる”時代、元旦は、まずつばめ師匠の家に行き、一緒に目白の小さんの家に行って、その後に全員で黒門町の文楽の家に挨拶に行った、という思い出話。
企画の背景にある瀧口氏の本(『落語の達人』)は、この五代目柳家つばめのことを権太楼に、三代目三遊亭右女助について桂平治に、そして橘家文蔵のことを柳亭市馬に取材し、この“馴染みのない”三人の「落語の達人」のことを本に書いたため、取材したこの“馴染みのある”三人の会を亭砥寄席と合同で企画した、ということらしい。しかし、著作を紹介したこともあるが、つばめに関して言えば“馴染みのない”噺家でもないし、“忘れさられようと”しているわけでもないと思うけどね。
この会は他にも平治が権太楼のトリネタ(『一人酒盛り』)を明かしてしまったり、会場運営においても不満があったなぁ。
嫌な思い出を拡散することもないとは思うが、私が落語ブログ仲間を誘ってご一緒した会だったので、芸術選奨という言葉に、あの会のことが連想されてしまう。本当は、嫌なことから忘れたいものだが、まだまだ修行不足・・・・・・。
さん喬で好きなネタを一席だけ、と聞かれたら、『棒鱈』と答える。ご本人も、実は人情噺より滑稽噺が好き、と長井好弘さんの質問に答えている。2009年7月16日のブログ
菊之丞で同じ質問なら、『幇間腹』かなぁ。喬太郎のこのネタは、どちらかと言うと聴きたくない(見たくない)ネタになるが、菊之丞は結構。女性の上手さは定評があるが、幇間モノにこそ、この人の持ち味がもっとも発揮されるように思う。
芸術選奨の審査の方は、二人の人情噺を主に評価しているが、私は滑稽噺にこそ、この二人の良さがあると、あくまで個人的に思っている。
さん喬は、大衆芸能部門で谷村新司と一緒に受賞。何か、不思議な感じもするが、歌だって大衆芸能だよね。そう言えば、去年は権太楼ともう一人の受賞者が由紀さおりだったなぁ。
ともかく、お目出度いことだ。お二人には素直に「おめでとう!」と言いましょう。