噺の話

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博多に「禁酒番屋」はできるのか!?

福岡市の飲食街に閑古鳥が鳴いているらしい。西日本新聞サイトの該当記事

飲食店ガラガラ死活問題 「禁酒令」初日の天神周辺
2012年5月22日 10:12

 職員全員に1カ月間、自宅外の飲酒を禁じるという前代未聞の「不祥事対策」が始まった福岡市。酒に酔っての不祥事続発に、職員の多くは「信頼回復のためには仕方ない」と受け止める。一方、市職員行きつけの飲食店では早くも閑古鳥が鳴き、関係者からため息が漏れた。

 「禁酒令のおかげでガラガラ。6月の大口予約もキャンセルになりました」。市職員が「お得意さん」という福岡市・天神の飲食店。普段は複数の市職員グループが陣取る店内は、21日午後7時を過ぎても人影まばら。男性店長(43)は「知人の店は今週だけでキャンセルが10件くらい出ている。これでは市全体が不景気になりますよ」。閑散とした状態は午後9時ごろまで続いた。

 天神の市役所本庁舎だけで約2千人が勤務。飲み会の2次会、3次会で立ち寄る市職員が多いという屋台店主も「禁酒令は死活問題。個々人の自覚の問題なのに…」と暗い表情を見せた。

 当の市職員からは固い決意がうかがえた。高島宗一郎市長の訓示を聞いた男性係長(39)は「不祥事があっても今までは綱紀粛正の紙が来るだけ。今回は市役所がチームになって頑張らないといけない」。

 屋台の観光利用を目指し、市内約160軒を回って実態調査中の通称「屋台課長」、臼井智彦総務企画局企画課長(27)は「屋台でウーロン茶などを飲むこともできるが、勘違いされないよう1カ月は自粛する」と気を引き締めた。

 ただし、中には「禁酒令」に複雑な思いを抱く人も。シーズン真っ盛りの運動会後の打ち上げも対象となるだけに、50代の小学校女性教諭は「みんなで飲むのは年数回。意見交換の貴重な機会がなくなるのは残念。酒を伴わない意見交換の場ができれば」。中学校の男性教諭は「部活動で、競技関係者や高校の先生と信頼関係を築こうと飲んでいる先生は、ひた隠しにして飲酒するのでは」と心配した。

=2012/05/22付 西日本新聞朝刊=



 なぜこのようなことになったのかを、別な新聞記事から紹介したい。YOMIURI ONLINEの該当記事

飲酒禁止令の福岡市長「ショック療法が必要」

 相次ぐ飲酒絡みの不祥事に歯止めをかけられるのか——。

 福岡市は21日、全職員を対象に外出先での「1か月飲酒禁止令」に踏み切った。職員の間には「これだけ問題を起こしている以上、厳しい措置は仕方がない」といった受け止めが広がった。

 「意識改革のためにはショック療法が必要だ」

 21日午前、市役所で開かれた臨時幹部会議。高島宗一郎市長は約30人の幹部らを前に切々と訴えた。

 2006年8月、市職員(当時)による飲酒追突事故で幼い3人の命が奪われた。倫理研修を中心に様々な再発防止策を講じてきたが、今年に入って飲酒運転や酒に酔った末の暴力事件が続発。業を煮やした高島市長が取った手段が今回の「飲酒禁止令」だった。

 幹部会議で高島市長は、酒を飲んで不祥事を起こした職員を「一部の腐ったミカン」と厳しく断じ、「彼らのために『どうして自分たちのプライベートまで制限されるのか』と思うかもしれないが、異常事態を自分のこととして考えてほしい」と理解を求めた。

(2012年5月21日15時19分 読売新聞)



 この不祥事とは、2月に当時21歳の消防士(すでに免職で有罪)が酔って車を窃盗し酒気帯び運転をした件と、4月に小学校教頭50歳が酒気帯び運転をしたことに加え、今月18日には、保育課係長(48歳)が一緒に飲んでいた市職員男性(40歳)の顔を殴り前歯を折るけがを負わせる事件と、市港湾局職員(52歳)が、酒を飲んだ後にタクシーに乗車し運転手とのトラブルになって、交番近くで職員が運転手に暴行した事件が重なったようだ。


 福岡市の6年前の事故によって飲酒運転の懲罰が厳しくなってから私も一切飲酒運転をしなくなった。あの事故はよく覚えている。罰金も高額だが、かつて「ヒヤリ・ハット」した危ない思いをしたこともあり、自分だけではなく他人の生命を脅かす飲酒運転をやめる良いきっかけになったことは事実だ。

 しかし、この度の「一か月自宅外禁酒令」という措置は果たして妥当なのか?

 本来「個人のモラル」の問題を、家族や同僚や友人達との友好を深めるための飲食の機会を奪うことで解決するのだろうか。

 福岡市は短期的な措置のみならず、いろいろ考えているらしい。市が作成した「飲酒運転等不祥事再発防止アクションプラン」を、市のサイトからダウンロードすることができるが、プラン冒頭には次のように書かれている。
福岡市サイトの該当ページ


1.はじめに

平成18 年8月25 日。
この日,市職員(当時)が引き起こした飲酒運転事故により,3名の幼き尊い
命が奪われました。
私たちすべての市職員は,この「平成18 年8月25 日」を心に深く刻み
つけているはずです。
福岡市役所に対する市民の信頼が失墜したこの事件を境に,飲酒運転の
撲滅に向けてすべての職員が一丸となって取り組むとともに,不祥事の
再発を防止し,市民に信頼される市役所を目指して,「福岡市コンプ
ライアンス推進委員会」の設置や職員研修の強化,職員が抱える悩み
や問題について対応の充実など,さまざまな取組みを進めてきました。
しかしながら,このような取組みにもかかわらず不祥事は繰り返され,
平成24 年2月25 日には飲酒運転・窃盗事案が発生するなど福岡市役所
に対する市民の信頼は大きく損なわれています。
このような危機感から,平成24年3月12日に公募による150 名以上の
職員の参加のもと,「飲酒運転等不祥事再発防止に向けた職員検討会」
を開催し,さらに,職員検討会での意見やアイデアをもとに,検討会に
参加した職員18 名で構成したワーキンググループにおいて,取組み
プランの検討・取りまとめを行いました。



 そして、資料の最終ページには、要因別の対策などが細かに書かれた次のチャートがある。
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 この中の再発防止強化策①、②、③の部分を少し大きくしてみた。
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 この内容を見て、どうしても腑に落ちないのは何故なのだろう。

 一つは、「自分ごと化」とか、「みんなのわ」という言葉に、やや子供じみた表現という印象を持つからだと思う。考え方次第では、「当事者意識を持つ」、とか「協調性の強化」などと言うよりは、口語的で分かりやすし、市の職員と言っても幅広い職種があるから、こういった表現になったのかもしれない。しかし、私はこういった表現を見ると、お尻がもぞもぞする。あくまで、感覚の問題。

 二つ目は、どうしてもお役所仕事的な何かを感じるからだろう。「プロジェクトを組んで、いろいろ考えました」と言いたいのだろうが、「あれもこれも」の総花的な印象が強く、「こんなにたくさんのことをしないと、飲酒運転が防げないの?」という不安を強くさせる。と言うよりも、「これ全部、本当にやれるの?」という疑問が強まる。

 元テレビ局アナウンサーで三十代の若い市長の「パフォーマンス」と言う指摘も、否定することができない。側近を含め、今回の措置が職員達と十分に意思疎通のはかれた施策なのかも疑問。もし、「とにかく、抜本的な改革だ!」と言う市長の号令によって、形だけ作った「アクションプラン」なら、それは「アクション」にはつながらないだろう。

 そういう疑問が当たっていそうな実態が、記者会見の内容からもうかがえる。このアクションプランを発表した5月8日の記者会見の模様が福岡市のサイトで公開されているので、一部抜粋する。福岡市サイトの該当ページ


記者  あと、市長に確認ですけど、これは市長がアクションプラン作れと
    言ったわけではなくて、あくまでも市の職員から上がってきたと
    いうことで構いませんか。
市長  はい、そうですね、はい。結構ね、あのあたり、事件の後にメール
    とか来ましてね、私のところに。で、庁内で一応私のメールアド
    レスというのも分かるんですよ、みんな。分かるけど、基本的に
    みんな送ってこないんですよね。なのにね、あの後はメールで、
    こうしたらいいと思うとか、やっぱり許せないとか、そういうの
    を送ってきて、で、実は先日飲酒運転でお子さん亡くしたという、
    方にっていう話も実はこれはですね、職員の中からこういう被害者
    の話を直接伺って、やっぱりみんな、そのやっぱり本当に心に染み
    入ってみんながやっぱりその辺を意識した方がいいっていう、
    実はそれは職員の、私も会ったこともない職員なんですけども、
    そのメールからだったわけですよね。ですから、やはり
    多くの職員はですね、この今回飲酒運転がまだ続いているという
    ですね、この事態に関して非常にやはり憤りも覚えるし、危機感
    を感じていて、やはり立ち上がりたいという気持ちは非常に強く、
    多くの職員が思っています。
記者  この「大切な人リスト」というのは、具体的にはどういった
    イメージなんですかね。
事務局(総務企画局) まあ、やはり先ほど懲戒免職の疑似体験もあり
    ましたが、まあ実は自分がそういうことになってしまうと、
    例えば、結婚していれば奥さんだとか子どもだとか、あとまあ
    1人であれば、付き合っている方だとか、あるいは親だとかですね、
    そういった人の名前をリストを作っておくことによって、万が一
    自分がそんなことがあったら、この人たちにも迷惑をかけると
    いうことで、いつもその気持ちを持っとこうという趣旨でまあ
    「大切な人リスト」という形をとっています。
記者  それを何か机の上に張って置いたりするんですか。
事務局(総務企画局) まあ、あのう。
市長  机に置いたらばれちゃいますからね、机の上には置かないんです
    けれども。
事務局(総務企画局) 初めはそういう意見もあったんですけど、今市長
    がおっしゃったようにばれてしまうので、例えばロッカーに張っ
    ておくとかですね、その辺はいろいろ考えてもいいんじゃないか
    ということで、各局・区のほうの選択のところに入れていると
    いうことで、一律にデスクマットに入れろというわけではないです。
事務局(総務企画局) よくあるのはですね、まあお子さんの写真とか、
    それがなくても持っている方いらっしゃいますよね。やっぱり、
    その人のためにっていうことで、仕事も頑張っている方って、
    結構いらっしゃると思うんですよ。だから、そういうことで、まあ
    リストとか写真とかでもいいと思うんですよ。そういったことで、
    常にそういった意識しながら公私にわたってやっぱり責任ある行動
    をとるということを目指すべきじゃないかというご意見です。
記者  すみません、細かいところなんですけど、職員の借金・多重債務
    問題に関する対応の充実というのも書いてあるんですが、そもそも
    それはどうやって把握されるのかと。今何か例えば、そういう多重
    債務がある方とかは、課の上司とかに報告しなきゃいけないような
    義務とかというのがあるんですか。
事務局(総務企画局) これは、従来の取り組みというところに書かれて
    いるかと思うんですが、まあ、以前ですね、検討した時に、そう
    いったものが、やっぱり強化しないといけないだろうというこ
    とで、具体的にリーフレットとか、職員向けのリーフレットを
    作ったり、監督者向けにですね、まあ、そういった問題を抱えて
    いる職員に見られる多い傾向とかですね、職場に頻繁に電話がか
    かってくるとか、無断離席が多いとか、そういったポイントをこう
    いろいろ書いたようなリーフレットを作って取り組みを、まあ従来
    の取り組みということを、そこに書かせていただいているという
    ことです。
市長  強制調査とかいうわけじゃないということですね。
事務局(総務企画局)強制調査とか、そういうことでは、はい、ないです。
記者  はい、なるほど。
    他社さん、他ありますか。細かいところはあと個別に伺ってください。
    では、ボルドーの訪問団に関して、他社さん何か質問がございまし
    たら、お願いします。
市長  普通はね、帰ってきた後に、ご報告をするんですけども、一応、
    長いので事前にお伝えだけしようと思いまして。
記者  持続可能な発展というのはどういうところを見に行かれるんですか。
    施設だとか。
事務局(総務企画局) 実はボルドーでフランスの新幹線の全面的な、
    最終的な開通を目途に、大規模な再開発をされているんですが、
    そのテーマが「持続可能な発展」ということで、向こうから是非
    これは髙島市長に見ていただきたいということでご提案があって
    おりまして、その視察に関わるところで、もしかしたら福岡市が
    いろいろやっている取り組みのご紹介とかご提案とかもできるの
    ではないかなと考えております。
記者  具体的にもう行く施設とかは分かっているんですか。
事務局(総務企画局) はい、施設というか、そういうプロジェクトがあり
    まして、まだ始まったばかりですので、大変大規模なものですから、
    それのご説明とかを受ける、現地に行って受けることになっってます。
    ユーロアトランティックというプロジェクトです。



 いろいろ対策を考えてはいるのだろうが、どうもこの会見記録を見ても、しっくりこない。

 このアクションプランは、「150 名を超える職員が再発防止策のアイデアを自ら出し合い,さらにそこから選ばれた18 名のワーキング・グループで具体的な検討を進めたものを土台として取りまとめたもの」らしい。
 いわゆるブレーンストーミングで、「発散」させるだけ発散させて十分に「収束」させる前のプラン、そんな印象だ。そして、個人のプライバシーに関する、やや危険な兆候も感じる。いずれにしても、今後、福岡市の職員は、夜のみならず昼間も“窮屈”な状態で仕事をせざるを得ないのではなかろうか。


 私が福岡市職員だったなら、どうしているだろうか。

 まだ若くて転職先の見込みがあるなら、たぶん市役所を辞めそうな気がする。福岡、いや博多と言ったほうが響きがいいな。博多は酒も肴も美味しい土地で、私の知る限り、女性は言葉も仕草も艶っぽく旅人には非常に楽しい場所である。かつて出張で訪れて、あくまで酒席でのことだが嫌な思いをした経験がない。

 福岡市の職員は、仕事が終わって「さぁ、行こうか!」という楽しみが一か月間は確実に味わえないし、その後だって心から楽しい酒を外で飲めそうにないだろう。「みんなのわ」も、“ノミニケーション”ではかる土地柄のはず。

 一か月とはいえ、博多の夜の街に与えるマイナスの経済効果は小さくなかろう。そして、このような対応を取ると、自ずと「監視社会」を作ることになる。職員同士がスパイとなる、あるいはスパイではないかと不安になる。そんな心境で、正常に仕事をこなし、正常な神経を維持できるのだろうか。
 最初に紹介した新聞記事にもあるように、情報交換の場でやむなく飲んでしまったら、また「不祥事勃発」と騒がれることになるが、それは罰せられるべき悪行と言えるのか。飲めないストレス、隠れて飲むストレスがたまったり、自宅での酒量が増えたりすることで神経に異常をきたす、などというマイナス要因も検討したのだろうか。

 私には一か月自宅外での禁酒令は、「市民の信頼回復」というお題目での形式的な措置に思えてならない。総花的なアクションプランも、もし本当に対策を施したいのなら、外部の力も借りて再検討すべきだろう。


 今、博多の街に「禁酒番屋」ができたかどうかは知らない。しかし、それに近い「監視の目」はいたるところで光っているだろう。そして、禁酒法時代のアメリカの例のように、「地下」に隠れて飲ませる酒場ができても、おかしくない。

 高島市長が訪問するボルドーは、昼食時でも水代わりにワインを飲む土地だ。職員に禁酒令を出した市長が、まさか職務中やオフタイムにおいても、フランスでワインを口にすることはないのだろうと思うが、落語の「水カステラ」同様、「水葡萄」とでも言って飲むのだろうか。
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Commented by 佐平次 at 2012-05-23 09:25 x
ジョークかと思ったら本気だったって、しかもそれを支持するコメンテイターなどもいるのに驚き桃の木山椒の木。
驚きの次はじわっと恐ろしさが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-05-23 09:35 x
今回の禁酒令、凄くいやぁ~な感じですね。これって「ファッショ」じゃないでしょうか。
市の職員たちが、「個人のモラルの問題と、家族や同僚、知り合いと飲食する問題は別!」と、当たり前のことを言えない空気があるのでしょう。そういった環境の方がずっと危険です。

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by kogotokoubei | 2012-05-22 16:17 | 幸兵衛の独り言 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛