噺の話

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新宿末広亭 四月上席夜の部 春風亭一之輔真打昇進披露興行 4月6日

なんとか一之輔の末広亭の披露興行に行くことができた。都内での仕事を終えて、6時少し前に着くと、美智・美登の奇術が終わり勢朝が高座に上がるところだった。一階は予想はしていたが桟敷まで一杯で二階席へ。その二階も結構埋まっており、仲入り前にはほぼ満席になった。

 順番としては予定より遅く上がった勢朝が、「皆さん良かったですねぇ、楽屋に凄い人が来ています」と言った時、次が誰かはある程度予測できた。その誰かさん以降からご紹介。

柳家小三治『二人旅』 (13分)
 場内から盛大な拍手。本来は市馬の出番で登場。真打披露興行では定番(?)ともなったネタがかかると、なぜか安心できる。この噺にはいくつか都々逸が登場するが、その一つを紹介。「この舌で嘘をつくかと思えば憎い 噛んでやりたい時もある」。こんなことをたまにはオツな年増から言われてみたいもんだ。本来のサゲの前で下がったが、小三治に出会えたのは僥倖だった。

林家正楽 紙切り (17分)
 会場からのリクエストに答えたのが、スカイツリー、鯉の滝登り、東京タワー、選抜高校野球の優勝投手、そして夜桜。いつもの軽妙な話芸と見事な職人技の紙切り。落語協会の寄席では欠かせない重要な存在である。

春風亭正朝『普段の袴』 (17分)
 復帰後は初である。病気にもなったようなので、気のせいか少し痩せた印象。江戸っ子のテンポの良い語り口は相変わらずだったし、やはり上手い。あの事件は、この人のCD付き落語本をブログで褒めた直後でもあったので、その反動もあって、しばらくは避けてきた。そろそろ喪が明けたかもしれない。この人の名前のある落語会にも行こうか、と思わせる高座だった。

鈴々舎馬風 漫談 (7分)
 いつものネタだが、笑える。これまた芸であろう。

 ここで仲入り。喫煙所もトイレも混雑しているであろう。席に座ったまま待機。

新真打口上 (23分)
 緞帳が上がると舞台に六名。
 左から司会の市馬、木久扇、一之輔、一朝、馬風、小三治。一昨年秋の鬼丸の披露興行における円歌を含む三代会長揃い踏みとはならなかったが、小三治会長が座っているだけで、この日が“当たり”であったと言える。
 馬風の演出で、なかなか楽しい“演芸会”的な口上となった。市馬の相撲甚句、木久扇の声色、一朝の笛、それぞれ達者な余芸の後、馬風が音頭をとると見せかけて小三治会長による三本締め。結構でした。

笑組 漫才(南京玉すだれ) (6分)
 クイツキは久しぶりのこの二人。しかし、漫才ではなく縁起ものということで、二人で南京玉すだれ。ゆたかが上手で、かずおがぎこちなく操るバランスがなかなか楽しかったが、かずおが演技なのか地なのかは分からない。あれが演技なら、それも芸であろう。でも、あれは地だろうな。

林家木久扇『彦六伝(短縮版)』 (8分)
 「ここに談志さんがいたら」と声色をやったが、これがよく似ていた。談志が昭和11年生まれ、この人は翌12年生まれで、志ん朝の一年年上なのだが、お元気で何より。一之輔の師匠一朝、その師匠柳朝の師匠が八代目正蔵だから、こういう縁のある人が座を盛上げてくれのは、一之輔にとっても有り難いことだろう。

春風亭一朝『日和ちがい』 (12分)
 東京の噺家さんでこのネタを聞いたのは、鯉昇に続いて二人目。どうしても上方、それも枝雀の印象が強いのだが、江戸っ子一朝の軽快なリズムは、短時間でも落語という言葉の芸を堪能させてくれる。流石だ。

仙三郎社中 大神楽 (8分)
 近くの席の、どうも寄席は初めてかと思われる女性二人連れは仙三郎の土瓶の芸に歓声を上げて喜んでいた。これをきっかけに、こういうお客さんが寄席に来る機会が増えることを期待したい。

春風亭一之輔『雛鍔』 (31分)
 「もう十六日目で、慣れてきました」と冒頭語ったが、まったく気負いのない普段通りの一之輔の高座だった。ちょうどこの日は子供の小学校の入学式で、椅子に座って人の話を聞く苦痛を味わった、という話の後に近所の落語好きの小学生が集まった一般家庭で落語を披露した時のエピソードは以前にも聞いたことがあるが、この噺のマクラとして相応しい。
 約10分のマクラの後で本編へ。この噺は、ブログを書き始める前、2008年3月に四谷のコア石響の「ラジオデイズ落語会」で聞いて以来だと思う。あのコンクリートの地下の会場で、三三、文左衛門の会の開口一番だった。あの時は文左衛門の『文七元結』のインパクトが強くて、一之輔の高座は正直よく覚えていないのだが、達者な二ツ目という印象は残った。
 前日末広亭の五日目は『初天神』だったようだが、ませた子供や与太郎を演じるのは、やはり上手い。本来の噺の人物像をしっかり描き出すことに加え、この人なりの味付けが無理なく融合されている。たとえば、父親と子供との会話で、「返事は、はいって言うんだ」「ふん」「ふんじゃねぇ、はいだ」「ふん」「“は”と“い”だ。」「はとい」「てめぃ、親を馬鹿にしてんのか」「はい」、というやりとりは他のネタ(例えば『牛ほめ』)などでも登場するが、こういう会話にこの人ならではのセンスとリズムがある。客に羊羹を出す時の女房のドタバタも、なかなか可笑しい。
 鈴本ではかからなかったネタだったが、まったく緊張している様子もなく、いつもの一之輔の高座。もちろん、結構でした。


 後ろ幕は、三種類あった。寄贈者は最初が「日本橋女学館 同窓会一同」。師匠の奥さん(五代目片岡市蔵の娘さん)が母校を“脅して”出させた、と勢朝が言っていた^^
 二枚目は「日本大学芸術学部落語研究会」。名門落研(?)としてもうれしい昇進だろうし、高田文夫もOBとして寄付した一人に違いなかろう。(立川志らくが寄付したかどうかは、分からない。)
 三枚目が「春風亭一之輔後援会」であった。馬風が口上でさかんに、「一之輔は私と同じ千葉野田の出身」と言っていたが、野田の後援会だったかどうかは、二階席の下手側からでは確認できなかった。

 とにかく、なんとか来ることのできた一之輔の披露興行。落語協会の記者会見の際の動画落語協会サイトの該当ページと同じように、この日の口上でも小三治会長が、聞く側が少し驚くほどの高い評価を口にされていたが、その見立てに間違いはない。
 一之輔の残る三分の二の披露興行、国立演芸場もチケットはあっと言う間に売り切れていた。どうも、今回はこの一回しか披露興行は行けそうにないが、ネタは彼のブログ「いちのすけえん」「いちのすけえん」で確認し、それぞれの寄席の様子は行かれた方のブログを読むのを楽しみにしよう。急遽参上した会なので、「居残り会」はない。素面でも心地よい余韻に浸りながら帰途についた。

p.s.
本来ならこの興行に名を連ねるはずの、一朝門下総領弟子である六代目の柳朝は、入院中である。手術を受け成功したらしい。病名など詳細は分からないが、あの端正で本寸法の高座に、また会える日が近いことを祈りたい。快復の様子は、彼のブログでご確認のほどを。柳朝のブログ「総領の甚六」
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Commented by 佐平次 at 2012-04-07 11:59 x
先を越されましたなあ。
月曜日にでも、とおもってます。
国立は取れました^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-07 15:33 x
早ければいい、というものでもありませんから^^
国立、よく取れましたね。
ブログを楽しみにしております。

Commented by hajime at 2012-04-07 21:59 x
ご無沙汰しています

私は浅草で行くつもりですが、浅草は昼席
なので、休みに日しか都合がつかないのが辛いです。
浅草の昼席は混むんですよね・・・立ち見だろうなぁ~(^^)

木久蔵師とか一門っていいですね。
昇進興行にも華が咲きますね(^^)

Commented by hajime at 2012-04-07 22:19 x
連投ですいません

白鳥師のHPを覗いていたら、末広亭の芸協の芝居で、円楽党と立川流の噺家さんが出演するとの事が書いてありました。
本当なのか他の情報がありませんが、幸兵衛さんがいらっしゃった時は番組表とかに書いてありましたか?
あればお気づきになりますよね(^^)
馬鹿でした・・・

Commented by 笑組・ゆたか at 2012-04-07 23:56 x
…なんて、ボクが申し上げるのはおこがましいですね。
これは主役の台詞で、今席の主役は新真打ですからね。

うちの『脂身』のすだれに関してですが、
これ申し上げていいかどうかわかりませんが…
わざとです。
昨日は一回しか失敗しないパターンでしたが、
二回連続で失敗するパターンもありますし
二回目はボクの方が失敗するパターンもやってます。
ただ、
糸が切れる場合がございまして
この場合のみ、本当の失敗なのでございます。

つまらないネタバラシを申し訳ありませんでした。
内緒にしてくださいね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-08 07:25 x
浅草に行かれたら、ぜひ状況をお知らせください。

芸協の件、末広亭の番組表には何も書かれていません。
実は、桂平治が新宿亭砥寄席で、他流派から参加する人数を絞って(2~3名?)合同開催することを検討しているが、まだ決まっていない、と言っていました。
それが決定したのかもしれませんが、もしそうなら、まるで日本のプロ野球やJリーグの外人枠規制みたいですね^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-08 07:50 x
こうやってコメントに書かれては、内緒になりません^^
そうですか、流石の芸ですね。
ピエロの達人が熟練した技で、客をヒヤヒヤさせながら見事な演技をするような、そういう“寸止め”の技術に近いものなのでしょうね。
実際に出来る技術を持っていなければ、失敗しそうに見せる演技はできない、ということなんでしょう。芸の奥の深さを知るようなコメントでした。ありがとうございます。

正朝のブログに書かれていましたが、前日五日目、『脂身』さん(かずおさん、失礼!)が衣装を忘れて、朝呂久の着物を借りて舞台に上がったらしいですね。
これは、まさか“芸”じゃないですね^^

Commented by 創塁パパ at 2012-04-08 11:33 x
ゆたかからコメントですね(笑)
小三治も見れてなにより。
笑組は、今松の会も出ていました(笑)

Commented by 笑組・ゆたか at 2012-04-08 14:54 x
もちろん、あれは脂身の天然によるものですが
何よりあの方の凄いトコは
必要な衣装を忘れて、使う予定がなかった
すだれを持参していた偶然なのです。
…いったい何なんでしょうか。

創塁パパ様へ
今松師独演会へのお運び
ありがとうございました。
言い訳をさせてください。
あの日はネタ選びに悩み
結局、六年もやってなかった
ネタにしたもんですから…
なんか申し訳ありません。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-08 15:58 x
私にとって真打昇進披露、結構“運”がいいかもしれません。

今松独演会も良かったようですね。
あの独特の語り口、また聞きたくなります^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-08 16:05 x
衣装は忘れても小道具は忘れない、何というプロ根性~~

末広亭、あともう少しですね。
しばらくしたら、ぜひ漫才を聞きに寄席にうかがいます。

Commented by ほめ・く at 2012-04-09 10:51 x
「オツな年増から言われてみたいもんだ」なんて、本当に言われたらたら幸兵衛さん、どうします?
それにしても代演が小三冶なんてツイテますねぇ。よほど日頃の行いがいいんでしょう。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-09 11:10 x
あの都々逸のようなことを“オツな年増”から言われたら、人生が狂うかもしれませんが、まずありえません^^
日頃の行いは決して良くないのですが、もしかすると一之輔のことをブログで書いてきたことへの落語の神様からのご褒美かな、と勝手に思っています。
ほめ・くさんの披露興行へのご感想をブログで拝見できるのを楽しみにしております。

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by kogotokoubei | 2012-04-07 07:53 | 寄席・落語会 | Comments(13)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛