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よこはま寄席 さん喬・喬太郎 親子会 関内ホール・大ホール 1月31日

この会場は2009年6月の喬太郎と談春の二人会2009年6月17日のブログ以来で、ずいぶん久しぶりだ。同じ主催者(民音)だった。一階(850)と二階(250)で1,100席というキャパなので、さすがのこの二人の親子会とはいえ、平日でもあって当日券もあった。
 1階席の後方だったが、開演時点ではところどころに空席があった。 ほぼ9割の埋まり具合だろうか。

 開演前に、スタッフ(ホールの人か主催者か分からないが)が、携帯電話のイラストにxを書いたボードを持って携帯をオフにするように注意していたのは良い試みかと思う。結果として携帯は鳴らなかった。しかし、途中に来場されたお客さんを、開口一番以外の主役二人の高座中でも座席に誘導するのは、勘弁して欲しいものだ。

 開演前に「終演予定20:30」とのアナウンス。これは入口の案内板にも書かれていた。この主催者の落語会は、いつもこの時間割りのようだ。

 結局さん喬、喬太郎は一席づつで、次のような構成だった。
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(開口一番 柳家さん坊 『子ほめ』)
柳家喬太郎 『うどん屋』
(仲入り)
翁家和楽社中 大神楽
柳家さん喬 『文七元結』
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柳家さん坊『子ほめ』 (18:30-18:45)
 初である。一昨年9月にさん喬に入門、昨年2月から前座、と協会HPのプロフィールにある。第一印象は悪くない。“滑舌”もほどほど良く、丁寧に大きな声で演じていた。受けのよいお客さんが多く、その笑いにも助けられたが、なかなかの好印象。

柳家喬太郎『うどん屋』 (18:46-19:26)*マクラ20分+本編20分
 結論めいたことを言うと、本編は“古典回帰”喬太郎の意気込みを十分に感じる高座だったので、もっとマクラを縮めて、マクラ10分+本編30分、少なくともマクラ15分+本編25分位で聞きたかった。
 マクラで無駄に多いトンコツラーメン屋のことから、定番の立ち食い蕎麦屋ネタで、コロッケ蕎麦やウィンナ天(ぷら)蕎麦のことを、体を座布団に寝そべる熱演(?)で会場を爆笑させていたので、このネタは推測できた。マクラ途中で、「これでも古典をやろうとしているんです」といった一言で、他の数名のお客さんと同様に私も拍手してしまった。
 本編は、ほぼ大師匠小さんから伝わる本寸法。余計なイレゴトもなかったが、工夫された演出としては、本来は酔っ払いの科白をうどん屋に言わせて、「その科白は、オレが言いたかった」として笑わせる部分か。「うちのかかぁは何飲んでも、何食べても、当たらない」の科白は、通常うどん屋に言わせない。昨年の2月に白酒の会(県民ホール寄席2011年2月23日のブログ)のゲストとして演じたこの噺の高座も良かったが、それ以上に、本寸法。
 酔っ払いが七輪の火に両手をかざして温める無言の場面や、仕立て屋太兵衛の娘ミー坊の婚礼を振り返って思いにふける“間”、水を一気に飲むシーン、そして、サゲ直前の、風邪を引いた客(女性)が、うどんを旨そうに食べる場面、それぞれに喬太郎の“古典への意気込み”のような、“気合い”のようなものを感じた。水を飲む場面では、見ているこっちが、ノドが鳴った。
 自分なりの解釈による微妙な味つけなども含め、間違いなく今年の喬太郎は違う、そう確信できる高座。それゆえに、落語への馴染みの薄いお客さんが多いことへの配慮なのか、得意のマクラで笑わせるのに時間を要し、「仕立ての太兵衛、知ってるか」のリフレインが一度の短縮版になったのが残念。加えて最後のうどんを食べる場面で、来場者が前方の席に誘導されようとしていたのは、何とも主催者(あるいはホール)の落ち度としか言いようがない。たった一席の喬太郎の、それも聴かせどころ見せどころだよ!
 
翁家和楽社中 大神楽 (19:41-19:59)
 主催者の企画意図(普段寄席などに馴染みのないお客様への配慮か?)は分からないでもないが、この会に大神楽は必要だったのだろうか。和助の芸には感心するし今後に期待もするが、この約20分を使ってでも落語をもう一席聞きたかった、というのが本音。

柳家さん喬『文七元結』 (20:00-20:43)
 さん喬がこのネタなら、20:30には終らない、というのは当然なのだが、それにしても時間を考えての短縮版で、楽しさも半減。
 例えば、佐野槌の女将は、長兵衛に、「いくらあったら仕事に戻れるんだい?」という質問を挟まず、いきなり「五十両貸すよ」となる。また、文七が店に戻って、持ち帰った五十両のいきさつを主に問われると、例の番頭を交えた可笑しな問答はなく、すぐにお久が預けられた「佐野槌」の名が判明する。また、吾妻橋で長兵衛が五十両を文七に渡すかどうか逡巡する重要な場面も、あまりにもあっさりし過ぎなのも、持ち時間の影響だろう。
 せっかくの熱演ではあったが、この人の『文七』なら1時間かかってもおかしくないし、あの“くどさ”“くさ”こそが、さん喬でもある。消化不良の高座は本人の責任とは言えないが、残念。

 さん喬と喬太郎の親子会は、以前に前進座で何度か経験しているが、もちろん二席づつである。比べては可哀想なのかもしれないが、木戸銭はほぼ同じなので、あえて小言。
 まず、全体で二時間という所用時間にこだわらず、少なくとも一人二席、落語を聴かせて欲しい。あるいは、色物を省いてでも「親子会」の名にふさわしい時間を、落語に注いで欲しい。
 一席づつの今回の高座でさえ、初めて『うどん屋』や『文七元結』を聞く人には、「本当は、もっと凄いよ」「実は、もっと泣けるよ」と言い添えたくなるような短縮版なのが、本当に勿体なく思う。

 「しかし、喬太郎の『うどん屋』だけでも良しとするか」、などと終演後に落語ブログ仲間のYさんと焼き鳥でビールとハイボールを飲みながらジャズの話題なども肴に盛り上がっていたら、案の定、帰宅は日付変更線を超える直前であった。
Commented by hajime at 2012-02-01 15:36 x
「うどん屋」と言う噺は柳家のお家芸ですね。
五代目小さん師の余りにも凄い高座を見ているので、それ以来誰を聴いても物足りなく感じて仕舞います。
最近、私も喬太郎師のこの演目を聴く機会がありました。
その時は時間の関係か、枕は短めですぐ鍋焼きうどんの説明に入り、噺に入りました。
確か、「仕立ての太兵衛」のくだりはニ回繰り返し、三回目にうどん屋が言うパターンでした。
「今日は本寸法にヤッてるな」と感じました。
今年からの喬太郎師は違ってくると言うのは賛成ですね。
私もそう思います。楽しみですね。
それから、寄席のトリで、さん喬師は数多くの古典を演じてくれますが、CDなどと比べると、くどく無く本寸法で江戸前なんですね。これが(^^)
それも、面白いですね。
失礼しました・・・(^^)

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-02-01 16:44 x
喬太郎の「うどん屋」、昨年に続き二度目でしたが、昨年よりも一層“本寸法”度アップ、でした^^
「水」「おひや」の二人の会話も余り崩さず、なかでも一杯目の水を飲むシーンが秀逸でした。
hajimeさんご指摘の通り、今年は、“古典”の喬太郎に期待大です!
さん喬は、あの“くささ”と“くどさ”が命(?)なので、やはり時間を気にして刈り込みすぎないで欲しいと思います。すでに終演時間を過ぎてサゲに向かう終盤が、非常にもったいない淡白さでした。昨年末に末広亭で楽しかった『棒鱈』などの滑稽ネタと人情噺の二席を期待したんですがねぇ。
まぁ、落語会も寄席同様にアタリ、ハズレがつきもの。決してハズレではなかったのですが、アタリとは言えない、そんな会でした。

Commented by 佐平次 at 2012-02-01 22:56 x
今度聴く喬太郎が楽しみです。
過度の期待はしないで^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-02-02 08:50 x
おっしゃる通りですね。
期待が大きすぎると、その反動も大きいので、ほどほどに楽しみにしましょう。
それにしても、あの体を座布団の上でのけぞらせるのだけは、勘弁して欲しいものです^^

Commented by ほめ・く at 2012-02-02 21:17 x
二人会で一人1席ずつは勘弁して欲しいですね。もし演るなら前座も色物も抜きで長講2席、これならまだ許せます。
一つ前の記事の辰じんへの評価、同感です。このまま進めば有望な若手に育つのは確実だと思います。喬太郎も早く弟子を取るべきでしょう。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-02-02 21:33 x
おっしゃる通りです。3,600円の木戸銭には合わないです^^
ある程度予想はしていたのですが・・・・・・。しかし、喬太郎の“古典”への意気込みは感じました。
昼夜二回の会で、昼は『錦の袈裟』だったようです。
辰じん、いいですよね。ほめ・くさんにご賛同いただき、私の落語を見る目もまんざらではないと自信がもてます。

Commented by 創塁パパ at 2012-02-03 17:26 x
相変わらず、ブログ書けてません(苦笑)今年は「古典」の喬太郎に期待ですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-02-03 18:05 x
週末の楽しみにしています^^
喬太郎シリーズ、今月も楽しみですね!

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by kogotokoubei | 2012-02-01 11:14 | 落語会 | Trackback | Comments(8)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛