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新宿末広亭 10月中席 昼の部 10月16日

 本来なら日曜は午前中テニスで、その後は長々と昼食、というか飲み会になるのだが、今日は事情によりテニスは休み。今月は仕事の関係で落語会に行ける回数が少ないこともあり、“禁断症状”から末広亭へ。芸術協会強化シリーズ(?)の一環でもある。芸協まつりとどちらにしようかとも思ったが、寄席を選んだ。

 12時5分前に到着。開口一番(夢七?)の途中。

 開口一番の後で下座の桟敷に落ち着いた。さて、出演順と所要時間、感想は次の通り。

瀧川鯉八 新作少々(10分)
昨日のNHK新人演芸大賞の話は、まったく出なかった。私の予想では「注」にしておいたが、どんな高座だったのかは22日の放送を録画して後から見るつもり。疲れもあるのだろうか、中途半端な新作小噺を二つ三つで高座を降りた。やはり、まだまだ賞を取れるような芸ではない。しかし、何とも言えない雰囲気だけはある。長い目で見たい人だ。

D51 『コント』 (11分)
初である。何とも言えない懐かしいコント。後でネットで調べると四国出身の兄弟らしい。お婆さん役で先に登場し、田舎芝居の殺陣を披露したお兄さんの方は、当初は役者志望だったようだ。なるほど、コントにしても、そういう舞台への思いが伝わる。縁あって朝丘雪路の付き人を務めたことがある人のようだ。朝丘が津川雅彦と結婚して津川の付き人となったのはいいが、津川の所有する畑の農作業が多くなり、せっかく四国から上京してまで畑仕事は厭だ、ということでコントの世界に入り、弟が三人目の相棒らしい。ご興味のある方は、次のサイトをご覧のほどを。リアルライブのサイトの桂歌蔵の該当コラム
私は客席と一体になった、こういうコントは好きだなぁ。

三遊亭遊喜『看板のピン』 (13分)
1月8日の末広亭初席以来。二年前に真打になった小遊三のお弟子さん。やけに髭の剃り跡の濃さが目立つなぁ。一所懸命なのは分かるが、何とも余裕のない高座。師匠流の噺家を目指すなら、もっと笑いが取れるだけのメリハリが欲しいところだ。精進してもらおう。

春風亭昇乃進『大安売り』 (12分)
初である。柳昇に入門し、その後小柳枝門下の人。5年前に真打になっている。う~ん、何とも言えない。実際の年齢よりは若く見えるし、芸も若く見える。

北見伸・スティファニー 『奇術』 (12分)
初である。前半と後半で二人が分担する奇術。後半のスティファニーのキャラクターが、数年前テレビを賑わせた“にしおかすみこ”、に似ている。客が選んだカードやダイスの目を当てた時の笑い声が、なんとも言えない不気味さだ。技術は高いのだろうと思う。しかし、この人は平気でマイクから離れた場所で小さな声で話すので、後の方の席では聞き取りにくかろう。寄席でワイヤレスマイクを見たことはないが、このままならこの人には必要かもしれないなぁ。あるいは、スタンドマイクに常に近づいて話すほうがいいだろう。もったいない。

三遊亭遊吉『芋俵』 (14分)
今日、最初の落語らしい落語。三遊亭とん馬と、順番のみ少し違う交互出演というには、後で調べたら、ほとんど遊三への入門も真打昇進も同期なのだった。この人の高座は、結構好きだ。何とも言えない古きよき江戸の雰囲気がある。

三遊亭円馬『ん廻し』 (14分)
この人も初めて。上方版でのほぼフルバージョンは雀々で聞いたことはあるが、東京落語の『寄合酒』で、本来の“ん廻し”まで短時間で演じてくれた高座は初めて。大きな名跡を継いだだけのことはある、と思わせた。独演会に行きたい気にさせる高座。

Wモアモア『漫才』 (14分)
いいんだなぁ、この人達の漫才。まず、いつものように団体さんが来られているので、その名前を紹介して会場を暖める。好き放題言う一人と礼儀正しい相方、という絶妙の漫才。落語協会が若手や中堅の漫才で元気な人が多いが、芸術協会はナイツの他はベテランが充実している、そんな印象。

春風亭小柳枝『粗忽長屋』 (17分)
 本来は仲入りの後の出番なのだが、同じ新宿で開催されている芸協まつりの関係だろう、少し浅い時間での登場。
 マクラの途中で、足の不自由な男性と、それを介護する奥さんらしきお二人が最前列の席にゆっくり歩いてきたので、少しネタを休んで、「大丈夫ですか」と声をかけ、「寄席のいいところは、こうやって途中で休めるんです。映画や舞台では、こうはいかない」と会場をなごませる。途中まで話した先代小柳枝の逸話に関するマクラのことを忘れ、「どこまでやりましたっけ?」と笑って客席に質問するあたりも、実にいい感じだ。実は八代目小柳枝に関するマクラも実に貴重かつ楽しい内容だった。そして、本編もこのネタの本質的なお可笑しさを巧妙な八と熊の会話で引き出す内容で、この人の実力と、器の大きさを再認識させてくれた。

古今亭寿輔『死神-序-』 (13分)
代演でこういう人に出会えるのが、寄席の楽しみなのだ。ブログを書く前に末広亭で聞いて以来だから久しぶりだが、寿輔ワールドは健在だった。まず、高座に上がる際「待ってました!」の声がかかり、さっそく突っかかる。「私はプログラムにも出ていないのに、待ってましたは、ないでしょう。じゃぁ、これで帰ろうかな。」とか、「出るはずの人が死んじゃったンで」とか、らしいマクラから、なんと『死神』が始まった時には、「15分じゃ無理だろう!?」と思っていたが、やはり患者を一人救ったところでサゲ、「この後は池袋でやりますから」と高座を下りた。池袋では主任なのだ。それも、今日は初日。ちょうど末広亭の代演があったのを、これ幸いと練習したわけだ。それにしても、途中までなのだが、この『死神』は良かった。後日何とか通しで聞きたいものだ。ちなみに、あくまでこの高座の呪文は「アジャラカ モロッコ アルジェリア コンブ トンコツ クリキントン テケレッツのパ」であった。きっと、池袋では変わっていたのではなかろうか^^

林家今丸『紙切り』 (14分)
正楽と比べては可哀想なのだが、技術も話術も格段と落ちる。

桂米丸『漫談』 (24分)
仲入り前は、芸協の重鎮の登場。しかし、ちょっと長かったなぁ。いろいろと雑談的なマクラの後、ネタは「また、ジョーズかな?」と思っていたら、「昨日は、今日の芸協まつりのことで天気を心配して雨のことを考えてネタを用意していたので、それをやります」とのことで、雨の日電車の中での光景という話だったが、あれだけ引っ張って仲入りを遅らせるほどの内容ではなかった。まぁ、元気な姿を拝見できたことで、良しとしよう。

ぴろき『ウクレレ漫談』 (10分)
食いつきは、今や芸協になくてはならない色物の一人が登場。10分であれだけ客席を沸かせるのは、大変なものだ。

桂伸乃介『高砂や』 (12分)
十代目文治門下のベテラン。高座そのものは、それほど派手さはない。しかし、ディキシーバンド『にゅうらいおんず』のメンバーで、趣味がピアノ、ギター、三味線というプロフィールが物語る多彩さは、大喜利で十分証明された。

三遊亭とん馬『雑俳』 (12分)
初である。“とんば”であり、馬は“ま”とは読まない、とマクラで説明あり。同期の遊吉とは芸風が対照的な、現代風のスピーディさが売りのような印象。ネタのせいもあるが、なかなかリズミカルな高座は心地よい。この人も、後で大喜利に登場した。

鏡味健二郎 太神楽 (7分)
洋服での大神楽は初めて見た。芸協のサイトによると、色物での香盤は玉川スミ師匠の次。昭和10年生まれの76歳。背筋もシャンとした礼儀正しい芸に、ある意味で感動した。長生きしていただき、後輩にいつまでも元気な芸を見せ続けて欲しいと祈りたい。

三遊亭遊三『火焔太鼓』 (19分)
貫禄の芸、と言って良いだろう。後に大喜利で『二人羽織』が控えているので短縮版になっていたが、道具屋のお内儀さんが光っていた。志ん朝と同じ昭和13年生まれなので、73歳。もしかすると、このネタは志ん生から稽古をつけてもらったのかなぁ。協会が違うけど師匠の四代目圓馬から依頼されていたら、ありえるかもしれない。

大喜利 『二人羽織』 (29分)
まず、とん馬が出て遊三を呼び出し、「何も芸がないなぁ」と遊三を貶すとことがプロローグ。とん馬が高座を下りてから、伸乃介が登場し、「とん馬を見返してやりましょう」ということで、二人羽織が始まる。伸乃介が遊三の後ろに隠れて、三味線を弾いたり、お茶を飲んだり、煎餅を食べたり、という仕草の可笑しさと、二人の呼吸の合った演技が主役の芸。伸乃介の三味線「勧進帳」には感心した。末広亭のプログラムによると、遊三が師匠四代目圓馬から継承した余興のようだが、初めて見た。こういう寄席ならではの芸は、ぜひ今後も伝承され続けることを期待したい。

 
 終演は16:40頃になっており、夜の部のお客さんと入れ違いで外へ。
 今日は、何と言っても寿輔だなぁ。死神役は、見た目(?)からも“ニン”だし、マクラからスッと入った本編を聞いた時、背中がゾクっとした。池袋で通しで聞いた方がいたら、ぜひその出来栄えをお知らせいただきたものだ。

 もちろん、新たな発見のあった芸協の中堅どころの高座にも出会えたし、当代円馬の本寸法の高座、滑稽噺における小柳枝の貫禄のある高座、もちろんトリの遊三の『火焔太鼓』と二人羽織なども結構だった。やはり、寄席はいいや。
Commented by hajime at 2011-10-17 17:24 x
コントD51さんはお婆さんが相方の鞄を叩くタイミングにいつも関心させられて仕舞います。
小柳枝師はこの師匠程生で見なければいけない師匠だと思います。
寿輔師は代演だと妙に頑張って演じますね。そこが嬉しいです。(^^)
芸協の芝居は当たり外れが大きい分、当たった時の充実感は忘れられなくなります。(^^)

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-10-17 18:17 x
流石、浅草を縄張り(?)とするhajimeさんだけあって、お詳しいですね^^
今年は、できるだけ、今まで馴染みのない芸協の方々の寄席を見たいと思っていますが、この目論見は正解だったように思います。結構、凄い顔ぶれが揃っていますね。色物もいいし、もっと行きたくなりました。
そのうち、浅草でお会いできるのを楽しみにしています!

Commented by 創塁パパ at 2011-10-18 10:09 x
相変わらず、ほとんど出張です。
小柳枝、寿輔、楽しそうですね。
たまには、芸協ものぞかないとね(笑)

Commented by 佐平次 at 2011-10-18 10:29 x
池袋に行くつもりなのですが、ちょっと風邪をひいたので自重してます。
遊三の二人羽織は昔観たけれど面白かったなあ。

Commented by ほめ・く at 2011-10-18 11:07 x
芸協の「当りの日」を引かれたようですね。
寿輔はちょっと癖のある人で、たいぶ以前ですが末広亭で、野次を飛ばしたお客と口論していました。
円馬は芸協の時代を担う存在になりそうですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-10-18 11:38 x
芸協が好きになりつつあります。
小柳枝、鯉昇、円馬など本格派に加えて、桃太郎や寿輔といった個性派が程よく揃っているし、中堅の噺家さんもなかなかの人がいます。そして色物だって、あなどれません。
友の会会員として、末広亭での芸協は今後も楽しみ!

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-10-18 11:39 x
旅行で頑張られすぎたのでは?
無理なさらないでくださいね。寄席は逃げませんから^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-10-18 11:45 x
確かに“当たり”だったと思います。
円馬は、出番前に楽屋と高座の境にある引き戸の窓から少しだけ顔を出していたのですが、その引き締まった真剣な表情が、印象的でした。
寿輔は、かつては末広亭出演数がダントツだったはずですが、最近は減っていたので、非常にラッキーでした。
『死神』は、マイベスト十席候補に入れようかと迷うほど良かったのですが、やはり「序」では無理ですね^^

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by kogotokoubei | 2011-10-17 06:00 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(8)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛