落語者 入船亭扇辰 『三方一両損』 (6月3日深夜)
2011年 06月 04日
録画を見たところだ。本当は先週の予定だったが、何ともつまらない「朝まで生テレビ」のせいで一週間延びた。
この噺だからだろう、マクラで出身は東京ではなく新潟の長岡であることが明かされる。なぜか、うれしい。かつて住んだ街であり、連れ合いの実家があるので盆暮れには行くからだ。ただし、今の長岡は私が二十代独身時代に過ごした昭和50年代の活気は、もうなくなった。あの頃は上越新幹線、関越自動車道の建設などによる景気のよさもあって、ネオン街の、その名も殿町は不夜城だった。司馬遼太郎『峠』の主人公である河井継之助や山本五十六を輩出した街である。ノスタルジーの長岡ネタはこの位で。
先月の落語研究会(5月25日)でもこの噺をかけたようだが、まさにニンのネタ。
「江戸っ子賛歌」ともいえるネタで、金太郎と吉五郎の喧嘩当事者の威勢のいい啖呵が売りだが、扇辰は“高速啖呵”にのみ頼らず双方の大家も含む2対2の喧嘩の構図を綺麗に見せてくれる。この大家二人も魅力的だ。
吉五郎の大家(家守-やもり-)が、二人の喧嘩の仲裁に入る際、「やってるやってる、いい喧嘩だなぁ」と喧嘩を楽しむ調子から始まるところや、金太郎の大家が、金太郎が「今、喧嘩してきたんだよ」と言った途端「江戸っ子だねぇ」と受ける科白や態度、これらすべてに“江戸っ子賛歌”が現れている。
昨年12月6日、国立演芸場の桂文我の落語会の客演で桂小金治が、八代目三笑亭可楽ゆずりのこの噺を披露してくれたことを思い出す。2010年12月6日のブログ
可楽の十八番の一つで、その音源は私の携帯音楽プレーヤーのレギュラーだが、現役の噺家さんでこの噺では、扇辰も相当上位に入ると思う。越後生まれを感じさせない江戸っ子の粋とイナセ、楽しい高座だった。
さて、来週は何と百栄登場。ネタは新作で『桃太郎後日譚』である。この噺は好きだ。この番組の会場は若いお客さんが多そうなのだ、会場の爆笑ぶりが想像できる。また2週連続登場ならば、新作を二つなのか、それとも2週目は『お血脈』あたりか。そういう予想の当否も含めて楽しみだ。