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新宿末広亭 四月下席 昼席(楽日) 4月30日

末広亭の友の会の四月末までのチケットを、ぎりぎり使うことができた。土曜の夜と日曜は落語会に行かないというのが自分に科したルールなので、もちろん昼席。これまでの鬱屈した気持ちを、寄席は落語会とは別な空気で紛らせてくれるだろう、という思いもあった。
 出かける前に落語協会のHPで確認すると結構代演が多い。主任の川柳師匠の代演でしん平、木久扇に雲助など。白酒、扇遊、市馬は予定通り出演らしい。これは、なかなかの顔ぶれと期待して新宿三丁目の駅から向かうと、11時半には結構並んでいた。結果として二階席も開放の大盛況。皆さん、笑いに飢えているんだ、私と同様!
震災後数日休んだが、すぐに営業を再開した唯一の寄席。賛否両論あるかもしれないが、落語会ではない、寄席なのだから、それはそれで一本筋を通したように思う。震災後初めて行った末広亭、いつもなら他の店で買って持ち込むのだが、あえて弁当もお茶や他の飲み物も末広亭の売店で買った。自分なりの感謝の気持だった。
 寄席が初めてと察するお客さんに囲まれた桟敷に座り、いつも通りに10分前の開口一番から幕を開けた。まずは、すべての演者とネタを書いておく。
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(開口一番 三遊亭歌る美 『初天神』)
川柳つくし   『少子化対策』
ひびきわたる   漫 談
桃月庵白酒   『つる』
三遊亭吉窓   『大安売り』
林家正楽     紙切り
三遊亭若円歌   漫 談
松旭斉美智・美登 奇 術
入船亭扇遊   『人形買い』
柳亭市馬    『親子酒』
五街道雲助   『子ほめ』
三増れ紋     曲ごま
三遊亭歌之介  『龍馬伝』
(仲入り)
ロケット団    漫 才
春風亭柳朝   『宗論』
桂南喬     『短命』
桂文生      漫 談
翁家和楽社中   大神楽
林家しん平   『お血脈』
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それぞれ、手短に感想を書く。
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歌る美(所要時間9分)(カルビ、と読むらしい・・・)
落語協会HPで調べたら、歌る多の弟子の入門四年目の前座さんらしい。とにかく、頑張ってください、と言うしかないなぁ。
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つくし(9分)
なぜ、主任の川柳が楽日なのに休演なのか、という疑問に答えをくれた。川柳は今日は以前から予定されていた、“なかの小劇場”での昼夜二回の「傘寿を祝う落語会」らしい。つくしは、「夜の会は空席が多くて、みなさんぜひ!」と師匠の会の営業。「もうこれで役目を果たしました」とは言いながら、しっかりこの人ならではの新作。話題になったことがあるので、この噺のことは知っていたが、ある意味で女流噺家の一つの方向性を示すような優れた新作だと思う。通常なら今年真打になるはずだった・・・・・・。なぜ、今年、落語協会も芸術協会も真打昇進がないのか、という謎は置いておいて、十分にその力はある。
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ひびきわたる(11分)
紫文の代演だったが、私にはうれしかった。どうも紫文は・・・・・・。
こういう時期なのだ、後からの演者も取り上げる「AC広告」ネタを含め、なかなか楽しい漫談。“煙管”の芸は、少しくどかったが、それもこの人の持ち味なのだろう。結構、会場を沸かせて白酒につないだ。
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白酒(11分)
私の周囲にいらっしゃった寄席ビギナーらしき人たちは、白酒が出てきた時は、それほど反応しなかった。「早い出番だから、そんなに上手い人じゃないんだろう」という思いだったはず。この人のこの噺だ、はずすはずがない。私の席の周囲のみならず、会場全体が、あの芸に沸いた。この噺、何度聞いても、笑える。
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吉窓(16分)
受けてはいた。しかし、私には、なぜこの人が落語協会の常任理事(なんら権力はないにしても)なのか、という疑問を感じながらの高座。
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正楽(12分)
本来は二楽だが、うれしい代演。昨日の今日、「ロイヤルウェディング」のリクエストに、弱ったふりをしながら、見事に切るあたりがプロなのだろう。
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若円歌(18分)
実は初めてである。新作で結構頑張っているベテランということは聞いていたが、なるほど、こういう人か、とその存在感は分かった。師匠円歌に入門して、途中で“色物”に転向(?)し、24年後の真打昇進という、珍しいキャリアの人だが、なるほど“漫談は”上手い。ギャグの中には、八代目正蔵の逸話のパクリなどもあったが、高校野球優勝チームや歴代横綱など、その記憶力で会場をひきつける高座のパワーは、なかなか好ましい。次の演者が来ないのでつないでつないで18分。こういう芸達者が寄席には必要だと思う。
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松旭斉美智・美登(12分)
本来は木久扇の出番。だから雲助になるはずだが、奇術の美女(?)コンビの登場。若円歌がつないで雲助を待っていたが、間に合わないと分かり順番を替えたようだ。この後、私は雲助がいつい出るか、結構ソワソワ待つことになった。しかし、それも寄席なのだ。お二人の奇術もなかなか結構でした。特に、会場を巻き込んでの美智さんの巧みな話術を交えた芸には、拍手である。
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扇遊(15分)
“旬”な噺をしっかりと!こういう芸に出会えると、寄席に来る楽しみが増える。小僧の定吉が背中に荷を背負ってする仕方噺が、なんとも楽しい。この人は寄席も落語会も、まったくはずれがない。かと言ってその芸にマンネリを感じない。マクラなども含め、実は結構程よい隠されたブラックさもあって、気が抜けないことがあるのだ。
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市馬(13分)
酔っ払いが古い唄を歌うシーンを挟んだが、それほど嫌ではなかった。寄席でこの噺、となると、どうしても私は歌武蔵を思い出す。息子が酔って家に帰って来た時にあの巨体を高座にぶつける迫力は、他の噺家には真似ができない。市馬も、それなりの表現。なかなか楽しませてくれたが、やはり、奇麗事な高座、という印象は拭えない。しかし、寄席でのこの高座に文句は言えないなぁ。
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雲助(11分)
ようやく登場である、結果として、扇遊、市馬、そして雲助と続いた。この顔ぶれだけの落語会でも結構動員力はあるよ!木久扇の代演というオマケに加え、寄席でしか聞けない(であろう)「子ほめ」に、初めて出会えた。
ずいぶん前になるが、長井好弘さんの『新宿末広亭のネタ帳』という本を紹介した。2009年7月16日のブログこのネタは、雲助が寄席でかける一番好きなネタなのだが、落語会で聞くことは、まずありえないだろう。代演で、高座順も替わった中で、ほぼ10分で演じたこの結構なネタだけでも、今日末広亭に来た甲斐があった。
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れ紋(13分)
いつもの元気な芸。桟敷にいた十二歳の男の子を舞台に引き上げてのエンディングもなかなかの演出ではあった。紋之助の代演。やはり、先輩には勝てない。当り前だが。これも寄席なのだ。
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歌之介(14分)
初めての寄席、初めての歌之介、というお客さんが多かったようなので、会場が沸かないはずがない。ここまでくれば、マンネリではなく立派な芸、であろう。何度聞いても笑えるネタ、というのはそう多くはない。
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ロケット団(10分)
今の寄席における漫才で、笑組とロケット団が双璧だろうと思っている。程よいブラックさ、リズム、そして若さが楽しい。
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柳朝(13分)
鉄平の代演。三人の子供のお父さんは、次第に貫禄のようなものがついてきたように思う。いつもの丁寧な高座は、夜席の主任である師匠一朝譲りだろう。この若手が今後どう化けるのか、それが楽しみだ。
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南喬(16分)
寄席にはこういう人が欠かせない。お客さんの受けも良かったし、このベテランは、これからますます聞きたくなる気がしてきた。
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文生(14分)
南喬と比べて、この人のいつもの漫談は、正直言っていただけない。今さら、あの名人の女将さんの悪口を言って何が楽しいのか・・・・・・。これも、寄席なのだが。
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和楽社中(8分)
非常にレベルの高い本寸法の大神楽。染之介・染太郎の後継は、はっきりした、という感じ。あとは話芸だな。メモを読み返して、あれがたった8分、と驚く。芸の中身の濃さ、ということだろう。こういった寄席の色物を、今後もぜひ残し続けて欲しいと思う。
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しん平(28分)
私とほぼ同世代だが、以前は尖ったところが、嫌味になっていた。しかし、ずいぶん丸くなり幅が広がったような印象。それは、あの映画を完成させたことも影響しているのかもしれない。とは言うものの、歌之介は定番ネタで笑わせるが、この人のマクラや本編には、いい意味でのドキドキ感がある。入門も年齢も歌之介より先輩だが、真打昇進は彼より遅れをとった。これから、もしかするととんでもない噺家になるのかもしれない。そんな可能性を感じさせる高座で締めてくれた。今後、この人は、もう少し聞いてみようと思わせる高座。


 代演の雲助がいつ登場するのか、という妙なスリルを味わいながら、寄席ならではの暖かい会場の空気と、それぞれの芸を楽しむことができた4時間半だった。やはり、来て良かった。
 こういった笑いへの“飢え”は、今回の震災、原発への不安を肌で感じていない西日本の人には、分かれと言っても無理があるのだろう。しかし、ようやくある程度通常に電車も動き、当座は停電の不安もなくなってきた。これまでの鬱屈した毎日から、少しでも笑いを求めてやって来た多くのお客さんで、二階席をも開けさせ満席。客席の不思議な一体感は、無言でも“笑って笑って日本の復興だ!”といった思いを共有していたからなのだろう。
Commented by hajime at 2011-05-01 07:57 x
おはよう御座います。
私も寄席(浅草や鈴本)によく行きます。
仕事の関係で落語会には余り行けないので
何時でも行ける寄席中心に成ります。
正直、「ん~」と思うような日もありますが、一つでも寄席ならではの噺等を聴けた日には、「来て良かったな」と思います。

この間も浅草で川柳師を見ましたが、
誕生日も過ぎて益々元気で、100歳迄高座を努めて、人間国宝になる!
と仰ってました。(^^)

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-05-01 09:24 x
お立寄りありがとうございます。
もちろん、代演ではなくて、川柳師匠でも行きましたよ^^
寄席のもつ独特な空気、やはりいいですね。
この日は、完全なハズレはほとんどなかった、珍しい日でした。
今年は落語会の数を減らしてでも寄席に行こうか、と思ったほどです。

Commented by mico at 2011-05-01 20:47 x
わー、なんか寄席の楽しさがすっごく伝わってきました!会場全体の雰囲気まで味わえた気分です。
最近全然寄席には行けてないので、読んでるこちらもうれしくなりました。ありがとうございます。

6月上夜の鈴本はなんとか行きたいなぁ。

Commented by 創塁パパ at 2011-05-02 10:04 x
30日、行かれましたか(笑)
私は家庭のイベント関連でブログ
更新もままなりません(笑)
雲助の「子ほめ」いいですよね。
そして他のメンバーも豪華!!!
寄席ならではです。
市馬はもう少し可愛がってあげて
くださいね(笑)
でも、期待してくれてのことです
ものね(笑)

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-05-02 10:22 x
やっぱり。寄席っていいですよね!

6月上夜、ということは主任が馬石、ほう、やはり三三もいる!
おまけ(?)に百栄もいますね。なるほど。
そういえば、鈴本は足が遠のいているなぁ。
どうしても帰りのことを考えると末広亭になってしまう。
それぞれ、“縄張り”はあるからね!
ご報告を期待しています^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-05-02 10:27 x
そうなんです。結局行きました^^
雲助が、なんともうれしそうに「子ほめ」を演じてました。ホントに好きなんですね、このネタが。
市馬は、悪くなかったですよ。ただ、ブログでも書いたように、この噺はどうしても歌武蔵と比べてしまうのです!
やっぱり、寄席はいいです。

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by kogotokoubei | 2011-04-30 19:06 | 落語会 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛