噺の話

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落語者 立川志らく 『疝気の虫』 テレビ朝日 2月6日

録画を見た感想を書く。結果として、期待しただけ残念。
 このネタで思い出すのは、古今亭志ん生の昭和38(1963)年5月29日の東横落語会での音源である。ネタ出しされていた『羽織の幇間』を、円楽の『野ざらし』と幇間ネタでつく(かぶる)ので、急遽この噺に変えた。「いいようにしますから、私に任せてください。」で会場は沸く。倒れた後の高座とは思えない楽しい内容で、マクラもあの時代を彷彿とさせる。
 その後、この噺は志ん生を慕っていた談志の十八番になったが、さて、その弟子である志らくの高座はどうだったのか。 この噺において、志ん生→談志の後を志らくは継ぐことができそうなのか・・・・・・。
 まず先に、その芸よりも、「疝気」の説明の間違いを正しておきたい。「男の下(しも)の病」というのは正しいが、「脱腸のようなもの」とだけ説明していたのは、やや言葉足らず。最初に「ネットででも調べてください」と言ったままでやめたほうが、まだよかった。まぁ、「疝気」に定説はないが、男性の「腹部・腰部の痛む病」であって、睾丸炎、尿道炎、膀胱炎、腎臓結石などの総称で、その中に脱腸も含まれてはいるが、少し説明が足らなかろう。

 さて、その芸。このネタなので許される、と少しストライクゾーンを広げても、私にはボール一個は外にはずれている印象。大きなカーブがそれてはずれた、そんな印象。この人は“高速スライダー”なら楽しめるんだが。
 私が感じたプラスとマイナスの両方を書く。ネタばれの部分もあるが、これは落語会ではなくテレビなので、許していただこう。
 ◇主なプラス面
 ・夫の体から誘い出された疝気の虫に、タブーと言われた水がかけられグレムリン
  のように増殖する点
 ・お内儀さんの体に疝気の虫が移ってからのサゲまで(サゲは詳しく明かさない)
 ◆主なマイナス面
 ・蕎麦以外の麺は嫌い、という疝気の虫の説明の中で、有名なラーメン店に関する
  ややネガティブな批評がクスグリで入ったが、これは遊び過ぎ
 ・お内儀さんに「唐辛子水」を飲ませて疝気の虫を退治するのだが、その“水”
  では増殖しないのかと疑問が沸き、落ち着かなかった
  *それじゃなくとも、体の中には水分がたっぷりなので、“水で増殖”という設定そのものに無理がある
 ・蕎麦の食べ方で他の噺家の名を出すところに、照れを感じるし、これは野暮だ。

 もちろん、落語のことなので、理屈にこだわるこっちも野暮なのだが、この人の噺は結構ロジックを大事にするはずなので、私は“水”が気にかかる。
 「お茶をかけるのはタブー」と伏線をはって、間違えてお茶をかける、など工夫が必要ではなかろうか。

 このスピードが、この人の持ち味なのだろうが、にぎわい座の百席に何度か通ううちに次第にその慌しさについて行く気力が萎えてきたことを思い出した。ちょっと私には合わないのかもしれないし、年をとったせいかもしれない・・・・・・。。

 最後のインタビューでは、芝居で使ったらしい「疝気の虫」の着ぐるみで登場したが、これも若いお客さんに媚びているように思え、私は楽しめない。

 彼の独演会のチケットは最近すぐ売り切れるようだが、若いお客さんが多いのかもしれない。好みはそれぞれなので、それも結構。また、彼の古典についての解釈と演出は、ある意味では実験的なので、評価が分かれることを覚悟して演じているようにも思う。どちらかと言えば、クスグリ(ギャグ?)の内容は若者寄りの高座と言えよう。。
 いずれにしても、立川流の周囲の人や談志家元自身が言うほど、彼が談志落語の後継者という見方を、私はできない。もし彼の芸が“イリュージョン”なら、その言葉の意味をあらためて定義する必要があるだろう。。少なくとも、今風のギャグを倍速くらいのスピードで畳み掛けるのがイリュージョン、ということではないと思う。

 本寸法の古典をベースに、無理のない噺家さん独自の味付けをした噺を好む私としては、次回の桃月庵白酒『真田小僧』に期待したい。テレビ朝日HPの次回予告
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by kogotokoubei | 2011-02-06 15:57 | テレビの落語 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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