落語睦会 ~秋の夜長のゼントルマン~ 国立演芸場 9月28日
2010年 09月 28日
構成は次の通り。
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(開口一番 入船亭遊一 『悋気の独楽』)
柳家喜多八 『船徳』
(仲入り)
瀧川鯉昇 『千早ふる』
入船亭扇遊 『文違い』
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遊一(18:30-18:48)
同じ会場で8月5日に開催された「昔若庵 若手研鑽会OB会」以来だが、その時と印象はあまり変わらない。語り口が端正で聞きやすいのではあるが、何か足らない。そもそも、「昨年の今日9月28日に結婚して、ちょうど一年!」なんてマクラで言っているようじゃ、いけませんよ噺家が・・・・・・。もし、プライバシーをマクラにするなら、後述する鯉昇くらいに自虐ネタにしなきゃねぇ。
喜多八(18:49-19:24)
この人のこの噺は初めて。珍しく“病弱ネタ”のマクラはなく、「噺には旬というものがあって、まだ大丈夫かと思っていたら急に気候も変わって・・・これまでに二三回かけたのがちょうどいい練習になって、そろそろちょうどいい出来になっているだろうと・・・」という前口上で本編へ。口上通りの結構な喜多八『船徳』だった。特に、徳が船頭として悪戦苦闘する中で“切れ”かかるところが、この人らしい味。持ち味も口調も違うが先代の馬生師匠の音源を思い出した。船の二人の客が石垣を登る前でサゲたが、違和感はない。こういう噺を聞くと、この人の持つ底力のようなものを感じる。
鯉昇(19:38-20:13)
定番のマクラなのに、そして先週も聞いたばかりなのに、なぜか笑える。映画出演のネタで、「殿様の妾にいじめられる役で、女優さんが役になりきっていじめるものですから、まるで・・・我が家にいるような心持がして・・・・・・」でドッと沸く。可愛そうだが、遊一のマクラと比べると、プライバシーをネタにするにしても月とスッポン。ちなみに、鯉昇が出演した映画は藤沢周平の原作を元にした「必死剣 鳥刺し」である。URLご参照のほどを。「キャスト」では名前が出ていないが、「人物相関図」に写真入りで登場している。似合っている!今後時代劇への出番が増えるかもしれない。映画「必死剣 鳥刺し」のHP会場には初鯉昇のお客さんも相応にいらっしゃったようで、ころげ回って笑っていた。“知ったかぶり”のマクラでネタが分かったが、なんと今日も期待した“食べ物ネタ”ではなかった・・・・・・。しかし、後半はモンゴルを舞台にした“鯉昇千早”は、何度聞いても楽しい。
扇遊(20:14-20:48)
小学校中心に学校寄席が続きストレスがたまっていたので“郭噺”を、ということで本編へ。この人では初めてでうれしかった。騙し騙される男と女の世界を巧みに描いて、笑いも適度にとれる本寸法の芸。ともかく主役である新宿遊郭のお杉が光る。この人が演じる女性の魅力、“艶”っぽくて時に“恐”ろしくて“弱”くもある、といった一人の女性が持つさまざまな様相を表現する力量は、現役の噺家の中で際立っているかもしれない。現役ではさん喬のこの噺も好きだが、決して負けてはいない。学校寄席で出来なかった鬱憤を、十分発散させたことだろう。
鯉昇は何度か聞いた十八番で大笑い、喜多八と扇遊は初めてのネタに感心、という会だった。やはり、この三人の会は安心できるとともに新鮮な驚きもあって楽しい。喜多八『船徳』と扇遊『文違い』は、今年の「マイベスト10席」の候補に入った。
この会は国立演芸場と横浜にぎわい座という趣の違う会場で楽しめるのも魅力だ。レギュラーでの三人会というのは少ないが、この会はぜひ継続して欲しい。
喜多八の“徳”、なかなか良かったですよ。
鯉昇の千早は、もう古典の枠を超えたかもしれない(笑)
扇遊の郭噺も、これまたニンでした。
明後日10月1日が命日の師匠が、天国から志ん五師匠を呼んだのかもしれませんね・・・・・・。
ご冥福をお祈りします。
喜多八の徳、良かったですね。あの噺は、イメージとして似合わないように思っていたんですが、大変失礼な思い込みでした。さすが、“追っかけ”も来るだけある!
志ん五さん、実は生では未体験のままでした。残念。