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第十三回 たから寄席  扇辰・兼好 寶憧院・本堂 6月5日

演者が魅力、加えてお寺での落語会は経験がなく、寄席やホール以外の落語会への興味もあり、場所もよくわからないままチケットを購入していた。
横浜から京浜急行で「六郷土手」駅下車。「川崎」の一つ隣なので快速で川崎まで行き、接続が良かったので横浜から15分ほどだった。会場のお寺まで徒歩で12~13分かかるが、道すがらの眺めが懐かしい。町工場、駄菓子屋さん、「ランチ470円」と表のガラス窓に貼っている食堂、などなど。お寺の住所が「大田区西六郷・・・」、どこかで聞いたなぁ?
そう、あの「西六郷少年少女合唱団」の故郷か・・・・・・・。「ボクらの町は川っぷち~」の曲が脳裏をよぎる。
ちょっとだけ感慨にひたりながら会場であるお寺の本堂に着いた。お堂の前に「たから寄席」の幟が何本もあってすぐ分かった。

落語会の会場は本堂に毛氈を引いた席と後ろの縁台のような席を含め60席あるかどうかだが、ほぼ満席気分。
開演時間の午後2時少し前に主催者の住職(といってもまだお若い、たぶん落語好きの四十歳代)から挨拶があり、今日で十三回目ということがわかった。「ほう、なかなかやるじゃない、このお寺!」という感触でいたら、このイベントのプロデューサーと称する“オフィスせいしょう亭”の方が挨拶されて落語会開始。
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立川こはる 『湯屋番』
入船亭扇辰 『麻のれん』
三遊亭兼好 『天災』
(仲入り)
三遊亭兼好 『一眼国』
入船亭扇辰 『片棒』
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こはる(14:00-14:19)
開口一番は始まらなければ分からないので、少し得した気分。熱演のあまりこはるの首筋に浮かんだ血管が分かるほど近い席で、女流落語家には難しかろうネタを楽しませてもらった。「白波五人男」の弁天小僧の口上なども交えた高座、もう二つ目を超えて真打と言ってもよい力が急速についてきた。後の先輩二人からはそれぞれのマクラで、「色気を感じない」「同じ楽屋でも気を使わない」など目一杯いじられていたが、それも実力を認めている証左であろう。二つ目試験、がんばれ!

扇辰『麻のれん』(14:20-14:50)
結果として、扇辰の二席はブログを書き始める以前にすでに聞いていた噺だったが、久しぶりだったことに加え、お寺のお堂、かぶりつきの環境で新鮮に楽しめた。ともかく本堂を沸かせた(?)のは按摩の杢一が枝豆を食べるシーン。これはこの噺お約束で、扇辰が、またいい味を出していた。

兼好『天災』(14:51-15:15)
この噺でこれだけ笑えたのは、間違いなく八五郎のキャラクターづくりとオリジナルのクスグリが秀逸だからだろう。往来で水をかけられる小僧、家の屋根から落ちて当たった瓦などへの八五郎の仕返しの内容が楽しい。詳しくは書かないが、「なるほど、こうするか」と思える演出に感心した。この人、こういうネタは、まずはずさないなぁ。

兼好『一眼国』(15:30-15:48)
マクラで昔のお祭り、夜店のいろんな食べ物や香具師の話があり、見世物小屋のネタになった時は、てっきり大師匠六代目円生も得意にしていた「蝦蟇の油だ!」と思ったが、こっちのネタだった。そうか、師匠好楽はこのネタを得意にしていた彦六の正蔵に最初弟子入りしていた・・・・・・。そして、彦六と六代目は犬猿の仲だった。六代目が健在な時は、とてもこのネタは出来なかったのではないかなぁ。さて、一席目は“本堂”に笑いの渦を巻き起こした、とはいえ25分、二席目はもう少し長講かと思っただけに、やや拍子抜けした。しかし、これは本人の問題ではなく、全体の構成による制限なのだろう。ともかく、兼好のあの表情や語りのメリハリ、繊細な演出による高座を、手を伸ばせば届く距離で味わえる落語会に来れることは、そう多くはないだけに、短い噺とはいえ二席、堪能した。

扇辰『片棒』(15:49-16:14)
以前にも聞いたのと同じで、息子を“金”と“銀”の二人で構成した短縮版。番頭でサゲるので、この噺の題名の種明かしには、残念ながらたどり着かない。たしかに、時間的な都合もあるのだろうが、このネタでこういった構成には、あまり賛成できない。しかし、金、銀の二人、特に銀が父親である赤螺屋吝兵衛の葬式をシミュレーションをする時の江戸の香りたっぷりの芸は、十分に楽しめた。だからこそ、もったいない。25分なら、息子三人登場で、本来のサゲまで演じることができるはず。今後は、ぜひ本来の三人の息子バージョンでお願いしたい。


お寺での落語会は初めて、かつ噺家の首に浮かぶ血管がわかる近さでの高座も初めてである。扇辰、兼好ともにこういう環境には相当慣れているような印象。こはるも、なかなかの落ち着きぶり。
昔の寄席はきっとこうだったのだろう、と思えるいい感じの会だった。少し地の利は悪いが、「三丁目の夕日」をちょっとだけ彷彿とさせる街並を眺める楽しみもある。
寄席ともホールとも違う、他のお客さんの息遣いが分かる空間で、ライブ感たっぷりの落語会。こういう会にもできるだけ足を運ぼう、と思いながら駅への道をじっくり歩いた。
Commented by 創塁パパ at 2010-06-06 19:29 x
おつかれさまです。
お寺の、落語会。昔練馬に住んでいた時、すぐそばのお寺で
無料の落語会があり、何度か行きました。その会は好楽一門の会で
まだ、好二郎さんの時に初めて彼の落語を聴きました。
お寺の場合、どうしても、時間の制限があり、あまり長く
は出来ないですよね。でも、その時からいい落語家さんになると期待しておりました。扇辰さんもいい噺家さんですよね。
先日、浅草の余一会で「悋気の独楽」を聴きましたが良かったですね。こういう、実力派の会は、なかなかいいですね。
追伸:先日花緑の「野ざらし」を聴きました。良かったです。
ではまた。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-06-06 22:35 x
お立ち寄りありがとうございます。
そうですか、結構お寺の落語会ってあちこちであるんですね。
本来は檀家さんとの交流の一環なのでしょうし、江戸時代ならお寺は「ご開帳」の際に人を集めるため様々な興行があった歴史があるので、不思議はないですけどね。
5日の落語会、お土産にキャラメルをもらいましたよ。手作りの会、心がなごみます。
扇辰、兼好、この二人を至近距離で楽しめたのですから、少々足がしびれても我慢できました。
浅草の余一会、贅沢な内容だったようですね。市馬ファンの創塁パパ さんにはたまらない会だったことでしょう。

Commented by tull at 2010-06-11 20:43 x
たから寄席席亭(46歳)でございます。
此の度はお運び頂きありがとうございます。また過分な評価まで頂き、頭の下がる思いであります。
兼好さんは、二つ目時代よりおこし頂き、当寄席で真打ち披露もなさいました。今後の化け方が非常に気になります♫
次回は、真夏の8月7日(土)14:00です。若しご都合がつけばお運び下さい。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-06-12 09:59 x
お立ち寄りありがとうございます。
落語会について書く時は、「ヨイショ!」はしません。
演者よし、お客さんよし、会場よし、の楽しい会でした。
兼好は、現在元気な柳派に比べ凋落傾向にある三遊派の、希望の星だと思います。
八月は、まだ未定ですが、都合と演者と相談しながら、またうかがいます。
会の運営はいろいろとご苦労もあるとお察ししますが、今後も「たから寄席」が盛況であることをお祈りいたします。

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by kogotokoubei | 2010-06-05 19:54 | 落語会 | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛