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第91回 朝日名人会 有楽町朝日ホール 7月18日

さん喬師匠の『百川』を堪能して帰る道すがらも、「今日は、鯉昇!」と思いながら歩いていた。

ほぼ満員の会場、最前列に堀井憲一郎さんを見かけた。
さて演者とネタ。
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(開口一番 柳家花いち 桃太郎)
三遊亭金兵衛   蝦蟇の油
瀧川鯉昇      蛇含草
金原亭馬生    唐茄子屋政談
(仲入り)
柳家喜多八    小言念仏
柳家さん喬     百川
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*「開口一番」について
14:00から約15分の『桃太郎』についてコメントは控える。花いちについてではなく、以前から主張しているのだが、この会の開口一番は今日なら金兵衛でいい。前座の開口一番は寄席では必要だが、この落語会では、はっきり言って「時間の無駄」。もし17:00には終わりたい、ということなら一人演者が減ることで、今日の例で言えば、喜多八の“16分”はもっと長くできるようになるだろう。

金兵衛(14:15-14:36)
緊張していた様子だが、口上はほぼ澱みなくこなしたので拍手はさせてもらった。しかし、この人は今後どの方向に行くのかは、ちょっと未知数。古典の雰囲気はあるので、いわゆる本寸法の道を歩みたいのだろうなぁ。とにかく頑張ってもらいたい。

鯉昇(14:37-15:05)
今の季節とネタから想像した通りの定番「扇風機」の話を含むマクラ12分で会場を一気に盛り上げて本編へ。“初鯉昇”のお客さんが多かったようだが、尚更すごい受け様である。朝日名人会で、これだけのドッカンドッカンは経験がない。私自身も以前に聞いたことのあるマクラでも十分に笑わせてもらった。私が初めて聞くギャグの中で、人間ドックで「頭の中身がないと透けて写る」というのは秀逸。本編に入ってからも鯉昇ワールドは絶好調である。とにかく、何かを「食べる」ネタになるとこの人は凄さを発揮する。餅を無理やりほうばる仕草や、食べながらの顔の表情で会話する演技などは、他を圧倒する可笑しさ。30分未満だったが、会場は目一杯沸き返って、次の馬生が気の毒な位だった。

馬生(15:06-15:46)
十一代目馬生襲名10年とのこと。そうなるか、早いもんだ。この人の丁寧な語り口は相変わらずなのだが、やはり鯉昇に喰われたという印象。田原町の親切ないい男や近所の江戸っ子の兄さん達、おかみさん達の描写が真骨頂だったが、どうしても全体としては印象が弱い。

喜多八(16:08-16:24)
結構たっぷり目の仲入りの後、いつものように気だるく登場。この噺のマクラはいつも通りなのだが、やはり受ける。今日のお客さんは“初喜多八”も多いようだ。本来はサゲがあるが、三代目金馬も師匠の小三治も含め、特定のサゲなく終わることも多い噺だが、なんと16分で仕上げたのには驚いた。なんとか17:00終演を目指すための時間配分のように察する。
ちなみに本来のサゲは、どじょう屋からどじょうを買って、おつけの実にする場面で、「・・・・・・なむあみだぶ、なむあみだぶ、鍋のすき間から酒を入れるんだよ、なむあみだぶ、苦しがっているだろ、どじょう、なむあみだぶ、なむあみだぶ、静かになったら、ふた開けてみろ、なむあみだぶ、なむあみだぶ、みんな腹出して死んでる、ざまあみやがれ、なむあびだぶ、なむあびだぶ」
ここまで演って欲しかったではないか!

さん喬(16:25-17:05)
百兵衛を、その奇妙な方言だけでなく、なんとも言えない表情で演じようという師匠の演出は見事。全編、丁寧かつ硬軟のメリハリのあるさん喬ワールドで、安心して楽しめた、と言いたいのだが、どうしても最後のほうは時計を気にしているように思えて、若干気ぜわしい印象。

最近のこの会は17:00位にはどうしても終演にしたいらしい。誰が何のためか知らないが、そうであるならば、くどくなるが前座の開口一番は省いて欲しい。二つ目の開口一番で何か問題があるのだろうか。前座の勉強する場は寄席をはじめいくらでもあるだろう。喜多八は十分に会場を沸かしたが、16分というのはないだろう。寄席じゃあるまいし。あるいは、終演を17:30、少なくと友17:15位までということで構成して欲しい。一昨年や昨年の会では当り前の時間である。
土曜の「ハレ」の日にタップリ落語を楽しむ“覚悟”で来ているのだ、中途半端な運営はしないで欲しいと思う。

鯉昇が朝日名人会に何回目の出演かは知らないが、多かったと思われる“初鯉昇”のお客さんは、今後間違いなく“気になる噺家”と認識したに違いない。鯉昇出演の落語会のチケットがますます取りにくくなりそうだが、それは仕方がないなぁ。

また、鯉昇のマクラや本編で餅を食べる仕草で気になった会場の反応が、間の悪い「拍手」。と言うか、その可笑しい演技に「笑う」場面で、前の方のお客さん中心に拍手がやたら多かった。たとえば蕎麦の食べ方や、金兵衛の演じた「蝦蟇の油」の口上などの場合は、拍手で応えるのはまだ分かる。しかし、「笑い」の場面での間の悪い過度な拍手を聞くと、「あの噺家のご親戚の方?」と聞きたくなる。

かつての名人の音源を聞くと、昔のお客さんは、今なら「拍手」かなという場面でも自然な「笑い」で反応していることが多い。途中で入れる拍手も、会場全体から自ずと沸き起こってこそ演者も乗ってくるが、部分的な拍手の大安売りは興醒めである。
私自身は、ついメモを取ることも忘れて目一杯鯉昇に笑わせてもらった。とにかく、今日は鯉昇の日だった。
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by kogotokoubei | 2009-07-18 20:31 | 落語会 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛