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新春寄席 志ん輔・扇遊・市馬 前進座劇場 2月7日

吉祥寺に着き、贔屓の店でラーメンを食べた後、いつも立ち寄る街の古本屋さんで落語と江戸関連コーナーをのぞき、今回は時間もなく何も買わずに会場へ。吉祥寺は、古い建物のままのお店が残っていて道中も飽きないのが、うれしい。

 この顔ぶれでも当日券が少し残っていたようだが、開演時間にはほぼ満席になっていた。
さて、本日の演目。先に言っておくと、今日は本当に徳した気分だった。
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(開口一番 入船亭遊一 元犬)
柳亭市馬    七段目
入船亭扇遊   天狗裁き
(仲入り)
柳家小菊    粋曲
古今亭志ん輔 文七元結 
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遊一(14:00-14:14)
初めてだと思うが、結構しっかりした噺をする。師匠がいいから、今後に期待したい。

市馬(14:15-13:39)
結果として最後まで全員に「待ってました」の声をかけるお客さんがいたが、その洗礼のトップバッター。「親戚が来ておりまして~」とお決まりの返礼。笑っているが、今日の番組構成からすると市馬師自身はテレもあるだろう。最近お決まりとも言える学校寄席のマクラから、前進座→歌舞伎座とつないで『七段目』へ。マクラの後半で落語の真打披露での先代の正蔵師匠のマネが笑えた。会場を考えるとネタの選択良し、である。また、この人のこの噺が合わないはずがない。加えて歌舞伎好きのお客さんも多い会場である、普段の寄席や落語会よりも笑いが多いはずだ。十八番の芸と笑いであっという間の25分、という感じで扇遊師につなぐ。

扇遊(14:40-15:10)
またまたの「待ってました~」に、市馬師の鸚鵡返しで「親戚が・・・・・・」で場内の温度をキープし、「この会場へは十年ぶりで、十年前は志ん朝師匠と一緒だった」という回顧談。その後、時事ネタを少しふってから三平襲名→寄席→寝るお客さん→病院の待合室の小噺、とつないで本編へ。最初に登場する女房のお崎さんが実に良いのだ。偶然、今年の初落語会だったにぎわい座での『厩火事』と同じ名前だったが、この人の女の描き方は、さん喬師が「静」の女を描く名人とするなら、「動」というか、少し気が強い江戸のおカミさんを演じさせた時、なとも言えない味がある。こちらもあっという間の30分で仲入りに。

小菊(15:25-15:43)
12月「三三冬噺」以来の小菊姉さんである。寄席の雰囲気をしっかり味わわせてくれる。
「笹の小船に松葉の船頭、乗せたお客は梅の花」、なんざぁいいじゃありませんか。

志ん輔(15:44-16:42)
「待ってました」の声に、「みんなに声かけてるン。この次はないですよ。これで終わりだから」という応酬に、決して嫌味はなかったし、声をかけたお客さんも憎めない。会場の雰囲気は非常にいい。マクラは定席寄席の近くには必ず居酒屋がある、という話から。ホルモンにはホッピー、ホッピーの正しい呑み方なんてない、という話は笑えた。そして、呑む・打つ・買う、どれかには手を染めるもので、という伏線から本編に入った時、一瞬驚いた。まさかこの噺をこの時期に聞けるとは思わなかったからだ。この人の文七の特徴は、あえて言えば「泣きの長兵衛」と「場面展開の妙」いうことになるだろう。ほぼ師匠志ん朝版を踏まえながら、スピーディーな場面展開や長兵衛の顔の表情を含む感情表現、独特のクスグリなどで、味わい深い作品となっている。

 三人の顔ぶれから考え、ある程度は期待をしていたが、その期待を上回るうれしい落語会だった。決して市馬の25分、扇遊の30分が短く感じない。そしてトリでの長講もまったくダレない。扇遊と志ん輔は昭和47年入門、昭和60年真打昇進の同期である。かつては二人会をよく開いた仲である。扇遊のマクラから考え、二人の間では「志ん朝トリビュート」的な思いがあったのかもしれない。だからこその志ん輔のトリで、このネタなのだろう。
 ある特定の地域や会場の落語会の出来というのは、演者はもちろん、場所・主催者・常連さんを含む客筋など、さまざまな要素に左右されると思うのだが、この会場の落語会は何度来ても、1時間半かけてでも、また来たいと思わせる。もちろん、それは土曜の昼間ということも重要なのだが。
 
 渋谷では志の輔inパルコが6,000円で一ヶ月分のチケットが発売後あっと言う間に完売である。また談春や喬太郎の都心での独演会のチケット入手は僥倖に頼るしかなさそうだ。そういったプラチナチケットをオークションで買うつもりはない。買う人がいるから、落語ファンではないのに商売として購入して売る人間もいるのだ。
 仕事帰りの寄席や若手噺家の少人数の会、また人気者でもチケットの入手しやすい多摩川越えでの落語会、そして今日のような、ちょっと足を延ばせばなんとか行ける休日の落語会など、幅広い選択肢で今後も無理のない程度に楽しみたい。そうすれば、いつかは今日のようなご褒美にあずかれるはずだ。
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by kogotokoubei | 2009-02-07 18:47 | 落語会 | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛