「NHK 新人演芸大賞 -落語部門-」 NHK総合 11月24日
2008年 11月 24日
登場順は次の通り。
-----------------------------------
(1)笑福亭喬若 『青菜』
(2)三遊亭王楽 『鼓ヶ滝』
(3)桂まん我 『野ざらし』
(4)立川志らら 『壺算』
(5)古今亭菊六 『やかん』
-----------------------------------
ご存知の通り大賞は王楽。
ライブでご覧になった落語ファンのいくつかのブログでも、いろいろ選考結果への疑問が投げかけられていたが、私も素朴な感想として違和感がある。もちろん、「評価」そのものが個人の好みに頼るわけだし、加えて複数の審査員で合意をとるなどという場合は、声の大きな人、いわゆる「偉い人」の影響力が強くなるだろう。あるいは、何らかの政治的な配慮が働かないとも言えないだろう。
個人的な順位と100点満点の点数を記します。
100人落語ファンがいれば、100通りの順位があっていいでしょう。
1位 菊六 85点
2位 まん我 82点
3位 志らら 75点
4位 喬若 73点
5位 王楽 72点
菊六とまん我が決選投票の結果菊六、という印象である。
まず、80点以上が、菊六とまん我の二人。
70点から80点までに他の三人、という感じだ。
参考になるかどうか、昨年のこのイベントについて、あえて私が採点をするなら、春風亭一之輔 『鈴ヶ森』と桂よね吉 『芝居道楽(七段目)』が 85点で同点、他の三人は80点以下という評価になる。ただし、古今亭菊六 『権助提灯』 はほぼ80点という感じで、出来は悪くなかった。「この人はなかなか古典落語の空気があって、いいなぁ。」という印象を持った記憶がある。
王楽のネタ選びを寸評で評価した審査員がいたが、それを言うなら上方の噺家では非常に珍しい『野ざらし』を選び、違和感を感じさせなかったまん我のチャレンジ精神のほうが評価されるべきだろう。
喬若は、やはりトップバッターというのが緊張を強いたと思う。この人は初めて聞いたが、上方にしてはおとなしい落語だが、基本がしっかりできているように思え、先が楽しみだ。
志ららは、「暴れてやる」という思いが強すぎたのか、ちょっと自分でスピードをコントロール仕切れていなかったように感じた。二つ目で当たり前だが、まだこのネタをこなし切れていないと思うし、ネタに助けられている面とネタに負けている面が五分五分という感じだった。
王楽は何度かライブで聞いているが、今回の出来そのものは悪くない。しかし、とてもこの五人の中で1番、とは思えない。
菊六の『やかん』は、間違いなく真打レベルの内容であり、川中島の決戦の講釈語りの場面も堀井憲一郎さんの寸評の通りで澱みなく、全体として゛古典落語の居心地よい場゛をつくってくれたように思う。もしかしたら、少しくらい噛んだほうが、審査員達のウケは良かったのでは、と思うほどの出来だった。(この皮肉が審査員に届くかどうか?)菊六という噺家の醸し出す懐かしい落語の世界があったようにも思う。
私のつける順位も、もしまん我が得意の上方落語で勝負していれば、どうなったかはわからない。
他のバラエティ番組やものまね番組では、ほとんど意味のない点数で審査結果が明らかにされるが、それは別として、このイベントも、そろそろ審査結果について、もう少し説明責任を感じてもらう必要があるかもしれない。
来年の王楽の真打昇進という話と、彼のガッツポーズに妙に寂しいものを感じた。他にも若手を対象としたコンテストはあるが、やはりもっとも重要視されているイベントである。無記名でいいので、審査員の採点結果の合計位は明らかにしてはどうだろうか。番組冒頭に3つの基準、という話もあった。それぞれの項目別に採点しているなら、項目別合計点と総合計点を公表するのが親切かもしれない。もし、そういったデジタル的な集計などなく「話し合い」で決めた、というなら、誰が誰を推したか、ということだけでも明確にして欲しい。ライブでは、そういう選評もあったのだろうか。どなたか教えていただけるとうれしい限り。菊六の悔しい表情がやけに印象深かった。