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古今亭志ん生『風呂敷』

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 梅雨どきに、『夢の酒』と同様に雨が演出上のアクセントになっている噺ということで、古今亭志ん生の『風呂敷』をとりあげる。好きな志ん生のネタは多いが、この噺はベストテン、いやトップ5に入る。

 ストーリーを時系列で説明するとこうだ。
(1)長屋に住む夫婦。亭主が寄り合いで帰りが遅くなると言い残して出かけた。
(2)カミさんが家でお茶を飲んでいたら近所の若い衆が訪ねてきた。雨が降ってきたので家の中へ入れて話をしているうちに、遅く帰るはずの亭主が酔っ払って帰ってきた。大のヤキモチ焼きで手が早い亭主のことを案じ、若い衆を押入れの中に隠した。カミさんは亭主に早く寝るように言うが、押入れの前にドンと座り込んで酒を飲み始め、なかなか寝ようとしない。
(3)困ったあげく、カミさんは同じ長屋に住む面倒見のいい「アニさん」(鳶頭か?)に助けてくれと頼みに行く。
(4)アニさんが風呂敷をもって夫婦の家に駆けつけ、酔った亭主に、「今、人助けをしてきた」と言い、この家の話を他所の家のように説明しながら、酔った亭主に風呂敷をかぶせ、押入れの若い衆を逃がしてやる。

 実際の噺は、カミさんがアニさんの家に行き、(1)(2)を説明することで展開する。
オリジナルは間男の噺なのだが、その後は間男ではなく近所の若い衆が訪ねてきた、という設定に変わっており、志ん生もそう演じている
 とにかく、志ん生ならではのクスグリ(ギャグ)を目一杯詰め込んだ噺である。

・アニさん(夫)が女房(妻)から風呂敷を受け取り出かける場面
妻「どこ行くのぉー?」
夫「大きな声だね。俺は屋根に上がってるんじゃないんだよ。うちの中で船を見送るような声出しちゃあいけないよ」
・・・・・・
妻「私はおまえさんの女房なんだからね」
夫「わかってるよ、女房、女房って・・・女房ってほどのもんじゃねぇんだよおめえなんて、シャツの三つ目のボタンみてぇんなもんだよ、あってもなくてもいいんだよ」

・酔った亭主がアニさんに、自分が帰ってきてからの顛末を話す場面
「・・・化けるほど夫婦になって(早く)寝ようもねぇもんだ。・・・」
「・・・油虫の背中みたいな色をして、寝ようとはなにごとか。なぜそう亭主をおびやかす。・・・」

 などなど、全編小気味のいいテンポで笑わしつづけてくれる。
 
 音源が多く、マクラも微妙に違うが、紹介したクスグリは定番だ。
 ギャグとは別の噺本来の聞かせどころは(4)。アニさんが酔った亭主に「しかたばなし」を聞かせながら、押入れの若い衆に逃げるよう細工していく場面。

 他の噺とのカップリングのCDも複数あるが、キングレコードのCDは単品での発売。
 現役で演ずる落語家が少ないのは、志ん生の印象がいまだに強すぎて腰が引けるのだろうか。今日的なクスグリで中堅や若手が挑戦することを期待したい。
古今亭志ん生_風呂敷
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by kogotokoubei | 2008-06-14 15:10 | 落語のネタ | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


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